はぐれ者達の英雄譚

ゆるらりら

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第一部 一章 転移編

邪神四天王と装備購入。

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グロティアルは私が動かないと見て、羽で急加速をして、こっちとの距離を一気に詰めてきた。反応的に私が光剣ルミナールスパーダ__めんどいからルミナスで良い__を手にした事は知らないみたいだから、準備にぴったり。そして、私が【魔法剣・海裂剣ティアーザ・シー】の準備を完了したと同時にグロティアルの体に届く位置に達した。これを避けられたら今度こそ死ぬ。だから一発勝負。
「【魔法剣・海裂剣ティアーザ・シー】!くらえ!」
剣が勝手に使い方を教えてくれる…!
奴は、私が剣を使ったのが相当驚いた様で、一瞬だけ隙が出来た。その隙を逃さず、海さえ割る程の激しい津波の一撃を加える。今度は私が上から見下ろす番となった。痛みは無いけど、衝撃が強いから、少しふらふらはしてるけど。
「グロティアル、観念した?魔法は可能性しか無いんだよ。私のイメージ次第で何でも出来る」
「それ……なら、何故悪事に使おうと考えない…」
「勇者だから……では無いよ。少なくとも、ね。私にも分からないから。」
「へ、へぇ……。理由が分かったら教えて欲しいもんだぜ…。おい、梨花。トドメを…刺してくれ、カッコ悪すぎるからな……。自然治癒も間に……合わねぇ……」
「分かっ__」
分かった、と言おうとした私の目の前に、片眼鏡モノクルを掛けた、綺麗な銀色の長髪を持つ中性的な男が現れた。白いローブの様な服を来ていて、黒い天使の羽が付いている。
「ロティア、勝手な行動な止して貰いましょうか」
「あ……?レーシャか…」
レーシャと呼ばれた男はグロティアルの言葉を無視してこっちに向き直った。
「初めまして。私は邪神側近、堕天使のレイシャロットです。以後、お見知り置きを。」
「……!」
ダメだ…もう、これ以上の行動を起こしたら次こそ、私は気絶する…。つまり、対処出来ない。諦めて死ぬしか無いのか……。
「さて、ロティア。貴方と言う男は……。まあ良いでしょう」
「へいへい…。説教なら……後で聞くって…」
何で襲いかかって来ないんだろう。魔族なら人間を襲って当たり前なのに……。
「貴女今、何故襲わないのか、と。そう考えましたね?」
「何でそんな事……!?」
「顔に書いてあるのですよ。…まあ、次会った時は容赦しませんので。それでは。」
そう言って、レイシャロットは去って行った。私としては拍子抜けだったけど安堵の一言だ。
「…あ、奏斗達大丈夫かな?見に行きたいけど……動けそうにないな……。」
ホッとしたら急に眠気が……襲撃も無いだろうし寝ちゃお…。



あの人間、見た事がある。遠い昔では無い、少し前に感じる記憶……。大事な人、決して忘れてはいけない人なのは分かっている。なのに、俺は思い出せない。俺、グロティアルはそんな葛藤に駆られながら、大親友のレイシャロットにぶら下げられている。
…今回は、こいつに助けられたな。こいつが来てくれなかったら自然治癒が間に合わなかった。いくら吸血鬼の治癒能力があるとは言っても、そんなすぐには治らない。
「どうしたのですか?こちらをずっと見て。気持ちが悪いので止めて下さい」
「うるせー。見たら駄目か」
「気が散るので迷惑です。止めて下さい」
何だと…!?しかも2回言われた……!まさかそこまで言われるとはな。結構傷付いたんだが……。そう言えば、いつの間にか妖力反応を探して位置を知らせてくれる妖術具だったらしい片眼鏡モノクルも外してる。今までの何処にそんな隙があったのか……。上空で回復妖術を使って、しかも俺を担いでいるんだから、重い筈だしな。……てか、こいつの何処にそんな力があるんだ?邪神城腕相撲大会で最下位だった筈だが……。
「なあ、レーシャ。俺達親友だよな?そんな酷い事言わないでくれよ~」
「親友何て言われた覚えが有りませんね。」
むぅ、諦めるしか無いか……。親友だと思ってたのに……!
「……………ロティア。何故先程、あんな辛そうな表情をしていたのですか?あの娘に魔術を掛けられた痕は残っていませんし」
「お前こそ、俺の事見てるじゃねーかよ」
「今の発言は撤回させて頂きます」
「俺は忘れねーかんな」
「………」
やっぱり、こいつはずっと俺の大親友だ。後、今度の休暇にでも、あの娘……梨花を監視しておかないとな。邪神様にとって大きな脅威になるかも知れない。
「それと……多分、は魔術じゃ無いぜ。桁違いの強さだった」
「貴方もそう考えていましたか。私達が使う、妖術とも全く違いますし。……それと、重いのですが。そろそろ翼も回復したんじゃないですか?身体強化妖術を使っているとは言え、そろそろ限界です」
「知らねーな。俺、一応まだ完治してないし」
「……落としますよ?」
「すまんすまん」
研究しがいがありそうだ。



「……か………り…さん……梨花さん!」
「ん……?ふわぁ……。どーしたの?」
私が目を開けると奏斗が目の前に居たので多少は吃驚びっくりしながら欠伸をする。ついでにもう朝だった。どんだけ寝てたんだろう。
「ふぅ……心配したんですからね?全然起きませんし……」
「あはは……ホッとしたら眠くなっちゃって……」
「はあ……まだ安全が保証された訳では無いんですかね?」
そっかな?って思ったけどもっと説教されそうだから保留っと。
「そう言えばカイトさんはどうしたの?かなり重症だったけど……」
「命に別状は有りませんが早く診療所に連れていきます」
「そっか。手伝うよ?カイトさん重そうだし」
「ありがとうございます!」
と言う事でテントに移動。安らかに眠っているカイトさんに魔法を掛けて連れてく事にした。
「奏斗、ちょっと待ってて。【重力操作グラビィティコントロール・ゼロ】」
前使った時と同じ様にカイトさんの体は浮き上がった。奏斗も、こう言う職業だと割り切ってくれたみたい。
「あ、これだと浮き過ぎて目立つかな?」
「ですね……どうしましょうか」
「それなら……」
ちょっと重力を無くす感じで……。
「【重力操作グラビィティコントロール・サード】」
すると、丁度いい位に軽くなった。およそ1キロ位かな?そんなカイトさんを二人がかりでで診療所__病院だと思う__に運ぶ。軽いんだけど、大きいからね。魔族との戦闘を終えた後、と言う事も有ってか、診療所は混み合っていた。私達は優先度が低いから、後ろに並ぶ人が居たら譲っている。やっと私達の番が来た時にはすっかり昼時だった。
「そちらの方のお名前を教えて下さい」
「えっと……偽名しか知らないんですけど…」
カイトさんは今も昏睡しているし、聞く事も出来ない。
「せめて、偽名がカイトって名前なのは知ってます」
「カイト……ああ、了解しました。黒霧くろぎり海翔かいと様ですね」
「偽名だけで分かるんですか?」
素直に驚いたから、うっかり聞いちゃったけど大丈夫だよね?事情とか知らないし……。
「この方は良くこの診療所を訪れているんですよ。魔力切れでね」
「………え?」
「この昏睡状態も魔力切れから起こるものでしょうね」
「…つまり、大怪我を負った事によって、人間の治癒機能が働いて、魔力切れを起こしてしまった…と言う事ですか?」
ヤバい、何言ってるか分からない。何の話してるの?この世界の人間強すぎない?治癒機能最強じゃん。
「そう言う訳なのですが……黒霧様、また無理をしましたね……魔力不足体質なのに…」
「そうでしたか…なら、今日の鑑定は中々辛かった筈……」
「やはり、無理をしていたのですか……分かりました、1日だけ入院する手続きはしておきますので、もう帰っても大丈夫ですよ。黒霧様はソファに放り投げといて下さい」
「了解しました!」
奏斗……何か恨みでも有ったのかな…?清々しい顔でカイトさんを放り投げてる……。しかもバウントする絶妙な角度で……。
「それより!梨花さんは装備を新調しなければいけませんよ!少し破れているんですから……」
「あ、忘れてた」
幸い、こっちには溢れんばかりの財宝があるんだから何でも買える。結構良いの買うぞー!
「武具屋はこっちです」
「ありがとー」
いざ、武具屋に入ってみると、重々しい雰囲気で、自然と緊張する。大きい鎧とか、大剣とか。ウインドウショッピングのつもりで見ちゃうな…。武器とか。
「おう、嬢ちゃん。どんな武具をお探しで?」
「魔法と__いや、魔術と剣に対応したのが欲しいの」
「はあ……。そんなの有ったか……?」
「最悪の場合、魔術師用と、剣士用の重複装備でも構わないので」
「重複可能なのは……この辺しか無いな…」
有ったのは思いっ切りゴスロリ風のトップス。どうやら、これが魔術師用で、近くに有った黒のショートパンツが剣士用らしい。それと、魔力強化のための金の刺繍が入った白いローブも薦められた。料金は気にしないで買えるから便利。アイツ倒して良かった~!最後に、速さを上げる茶色い革靴も買った。……でも何か足りない気が……。
「梨花さん、これで武具の新調は完了しましたか?」
「う~ん……?何か足りない気がするんだよね……」
「では……あ、ずっと気になっていたのですが、足に着けてる布って何ですか?見た事無いのですが…」
あ、靴下だ、忘れてたのって。でも見た事無いって事はこの世界に存在しないのかな?
「奏斗、靴下って無いの?」
「クツシタ?そんな言葉、聞いた事無いですね……」
やっぱりか……。しょうが無いし、靴下はこのニーソでいっか。……因みに、がっつり校則違反だからポケットに入ってた奴だけど。
「それより、折角買ったんですし、着ないんですか?」
「そう言えば忘れてた!じゃあ着てくるね!」
「行ってらっしゃーい」



着替え終わった私は、1人で悶絶していた。何故って?何せ格好が……。
「う………太腿フェチの奴が居たら鼻血出す奴じゃん……」
ショートパンツと、ニーソのお陰で、丁度太腿が少し出ている状況になっている。ゴスロリ風の黒を基調とした服に、白いローブの相性は驚く程に有っていて、黒を際立たせている。結構可愛い。
「あ、梨花さん。どうでし___」
あ、固まった。そんなに似合って無いかな?これ。ちょっとショックかも。
「似合って無かった?」
「い、いいえいいえ!とっても似合っています!固まっちゃった位ですし……」
「ふぅ、良かった~……」
似合って無かったら私の精神が終わるとこだった。じゃあ、後は武器買うだけかな?剣はあるけど、杖みたいなのも買った方が良いよね。魔法使えるんだし…。
「ねえ、次は武器を買いたいんだけど……」
「剣があるじゃねえか。その白いの」
「あ、ほんとですね!気付かなかったですけど…何時から持ってたんですか?」
「ほら、あの時。グロティアル__カイトさんを傷付けた奴と戦った時に貰った。ルミナスだよ」
まあ、ほんとは光剣ルミナール・スパーダだけど……。良いよね?私のだし…。ヤバい、あの声の人に怒られそう。でも言うのめんどくさいからね?いちいち、ルミナール・スパーダって言うの。てかそれより確かめとかないと。
「杖ってある?剣はあるから杖が欲しいんだけど。」
「剣があるから要らないんじゃねえか?」
「一応魔術も使えるから持っときたいの」
「まあ、稼ぎになるし、そう言う事なら…」
てな訳で武器コーナーに行った。剣と杖では全く違う場所に置いて有って、私は迷わず杖の方に。置いてある杖は、水晶が埋め込まれていたり、リボンが付いていたりと、趣旨がバラバラに別れている。
「梨花さん、こんなのどうです?」
奏斗が提示してきたのはピンク色の柄に、赤いリボンの付いためちゃ可愛い系の杖。
「うーん……何か違うな…」
キョロキョロと辺りを見回すと、青い水晶が付いた、地味めの杖が目に入った。何となく手に持ってみると大きさは両手杖なのに、軽くて意外だった。興味深々で見ていると、店主に声を掛けられた。
「嬢ちゃん、それに興味があるのか?」
「うん、両手杖なのに軽くて驚いた」
「あー……。それ使いにくいって定評が有って…それでも良いか?」
「取り敢えず使ってみるよ」
カタッと杖を持ってみると、本当に軽くて、片手でも持てる位だった。軽い魔法にしないとマズイからあんな感じでいっか。
「【水泡バブル】」
ちょっと床が濡れただけで壊れずに済んだ。とても軽くて、ルミナスと2本同時に持っても問題無かった。
「これにする」
「ま、毎度あり……」
代金を支払って、店から出る。しれっと奏斗も男用の防具に着替えてるけどノーコメントで。さあ、ギルドに行かなきゃ!
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