上 下
1 / 9
第一章 繋がった扉

1.張り切りすぎて開いた扉

しおりを挟む
「あーあ、何でこんな事になったんだろう?」

さっき入った扉が振り返ると消えているなんて。
そんな事ってありえる?

この部屋の壁に手を当てて隠しスイッチがあるかもと探しているけれど探しても探しても見つからない。
さっきから嫌な汗とため息ばかりだ。

「バカだなぁ、何で勝手に部屋に入ってしまったのか、、ハァー。」

ここは神社の全く使われていない西棟。廊下の突き当たりの部屋の中だ。

私は春から大学に通い始めたので高齢の親戚夫婦が住んでいる古い神社で下宿を始めた。
体力的に身体を動かすのが辛くなった老夫婦に代わり広い敷地の掃除や雑用を担う事になった。

「菜緒ちゃん、西側の建物はかなり長い間、使って無いから暇な時にササっと履くだけで良いよ。」

そうは言われていたものの廊下に積もった埃を取ると次は拭き掃除をせずにいられなかった。
特に廊下の突き当たりのドアは蜘蛛の巣はあるし、ところどころペタペタと黄ばんだ紙がぶら下がっている。見過ご訳にはいかないわ。

「うわー、一体、どれだけ掃除をしてないのよ。」

扉に付いている物を取り払い雑巾ですすけた木の扉を磨くと綺麗な細工が現れた。木の木目や貝殻の光沢で出来た細工だ。

「なんて綺麗なの。」

なのにこの汚さ。もっと見たいと力を込めて磨くとその時スーと扉が開いたのだ。

「あっ!開いちゃった、、、何?この部屋!」

部屋の手前半分が木造作りであっち側が石作りだった。壁も床も同じ。天井は部屋の中心から壁に向かって放射状に白い布が伸びていて布自体がほんのり明るく輝いている。
雰囲気があまりにも違ったのでキョロキョロしながら中に入ってしまった。

大きな背丈程の石像が二体。それぞれ金色の細工が美しい時計を持っていて違う時計をさしている。
壁には美しい太陽と月の絵が飾られ、飾り棚には細工の箱や壺が置かれていた。

「いけない!勝手に入っちゃ。」

ハッと慌てて戻ろうと振り返ると入って来た扉がこつ然と消えていた。

「えっ?えっ~!」

そして今の状況に至る。
開いた扉が消えるなんてありえない!
何でこんな非現実な事が起こっているの?

「うーん、仕方がないな。観念してあの扉を開けるか。」

実はこの部屋にはドアノブの付いた木の扉が一つあった。丁度、私の入った扉の真向かいにある。
勿論、私が入った引き戸の扉では無い。
そんな得体の知れない扉を開けてもっと酷い事になる恐怖もあるけれど、、そうは言ってられない状況よね。

「開けるしかないわね。」

声に出して自分を勇気づける。
ドアノブに手をかけてゆっくりと回すと
回った!

ゆっくりと力を入れて扉を押した。
しおりを挟む

処理中です...