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2.宰相からのプレゼント

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この1週間、異世界召喚に巻き込まれて人生最大に荒れていた。
旦那と別れたその時でさえこんなに荒れてはいない。
慣れないお酒を呑み酔っぱらって気がつけば朝と言う堕落した毎日。

私だってねぇ、こんな生活したく無いよ。
だけど、、愚痴る友も知り合いもいないもん。だから余り呑めない酒を飲んで現実逃避したっていいじゃない?

食器を下げにきた侍女を相手にからんで、更に戻ってこない仲間を心配して様子を見に来た侍女にも絡みドス黒い気持ちをぶつけている。

「あんた達の国が間違って呼んだんだからね!直ぐに帰してよ!」

「申し訳ありません。どうかお鎮まりを。」

私の罵声に侍女は怯えて涙ぐんでいる。ああ、最低な奴になってるのはわかってる。でも、、でもね止まらない。八つ当たりしないとおかしくなりそうだから。

「無理ならここから、、城から出して。自由を頂戴よ!」

「安全上、城でお過ごしいただきます。申し訳ありません。」

加えてナオちゃんと待遇の大差が気持ちを追い込んでくる。
召喚された翌日に王様とナオちゃんと3人で食事をしたけれど、2人は上座。私は長ーいテーブルの反対の端っこの下座。
ナオちゃんは髪を高く結い上げ、豪華なドレス姿にキラキラと宝石で飾られていた。
私はと言えば、胸元にリボンの飾りがついたシンプルなドレスとサイドアップにした髪にもリボンを結んだだけだった。

目の当たりにするととても悲しくみじめだった。ナオちゃんは悪くないけど、、もう彼女にも会いたくないよ。

毎日、毎晩、この繰り返しで心まで荒れた生活になっている。


「もう朝なの?頭、、痛っ。」

人を馬鹿にした罰だと身体が警告しているわ。
少しの反省を込めてベッドサイドに置かれたワイングラスを居間のテーブルへ持って行くと丁度、ノックの音がした。

「エリコ様、リリアでございます。」

部屋付き侍女ね。まだネグリジェ姿で髪も爆発している。だけどすっかりこの1週間でだらし無い姿を見せるのに慣れたから隠そうとも思わない。

「入って頂戴。」

「失礼します。おはようございます。本日は宰相閣下からのプレゼントをお持ち致しました。」

「突然ね。何をくれたの?」

「はい。ご用意致します。」

リリアがドアの外へ向かって声をかけるとホストばりの美男子が2名入ってきた。
思わず胸の辺りを隠し髪をなぜつけた。

「ちょっと!やめてよー私まだネグリジェなんだから!」

年甲斐にも無くカッーとしてしまった。
リリアは私の言葉を全く無視して続けた。

「宰相閣下からのメッセージを読み上げます。
エリコ カワムラ殿。お酒に溺れる程に一人寝が辛いご様子。お慰めのプレゼントでございます。お納めください。」

「えっ!?何て?」

耳を疑って一気にシラフになった。狼狽える私にお構いなく自己紹介が始まった。

「ルイにカークでございます。経験は豊富なのでご満足頂けるかと思います。今からお試しされますか?」

イヤイヤイヤ!私、そんなんじゃ無いから。

「あ、あのね、、大丈夫だから帰って。」

「お気に召さないという事でしょうか?ならば別の者を呼びます。」

「ちょっと!違うの。私には必要ないから。お願い帰って。」

声を縛り出し伝えるとルイが跪き私の手を取った。

「そうおっしゃらずお酒よりも人肌で私が慰めて差し上げます。」

そう言うと手の甲に口づけを落とした。

「 あっ、、えっ!えっ!」

こんなシチュエーション初めてで狼狽えて言葉が見つからない。

カークも側により反対の手を繋ぎ寝室へ引っ張って行こうとする。

「や、やめなさい!わかった。わかったから私が悪かった。もうやけ酒をして八つ当たりしないから。お願い。帰って!」

カークは引っ張る手を離し胸に手を当ててニッコリと礼を取った。

「では、またの機会に。個人的には異世界人の身体に興味があります。いつでもお呼び下さいませ。」

ルイも立ち上がると手の甲へ口づけをしてニッコリと見つめた。

「その時は是非に私も御一緒に。」

「!!!」

慌てて手を引っ込め彼らを睨みドアを指差した。

「皆んな出てって!」

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