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12. ルキア辺境伯領での始まり
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辺境伯の屋敷の一室に案内され、私は背の高い屈強な男達に見下ろされて不安でいた。
側に案内をしていたアルベルトがいるのがせめてもの救いだ。
燃えるような赤髪の鋭い目つきの男が前に出た。
「私は辺境伯を務めるエリオット・ルキア。本人確認をしたい。フードを取って頂きたい。」
言われた通りにして男を見上げると目が合う。鋭く意志の強そうな目だ。客人として連れて来られたがこの場の雰囲気といい恐ろしい。
「確かに黒目だ。松明の炎で目の色を誤魔化すとはな。流石は、アルベルトだ。」
「名誉な旅でございました。」
隣に控えるアルベルトが胸に手を当て礼をとった。
「失礼しました。守り人様!」
ルキア辺境伯は呼びかけると膝を折った。
周りの者達も膝を折り一同か最上の礼を取った。
「ようこそお越しくださいました。ご英断を心より感謝致します。」
「私には特別な魔法が使える訳では無いですよ。ご存知ですか?それなのに?」
「存じております。この地に滞在されると加護が働く。それだけで飢饉の状況は改善して行く事でしょう。我ら辺境伯連盟は戦争集結にも繋がり感謝しております。貴方との約束は我ら一同、名誉と命にかけて守ると誓います。」
そう言うと目が優しく微笑んだ。
*****
カラン、カラン。ドアの開く音と共に明るい声が響く。アリサの声だ。
「いらっしゃいませ~!」
ここは街にオープンしたばかりの灯り専門店。居間をイメージした店内に吊り下げ型と卓上型の灯りが幾つも飾られている。一緒に飾られている花瓶や置物などの小物も全て売り物だ。
「定員さん、これを欲しいんだけど。」
結婚が決まったと言う若いカップルが天井の灯りを指刺した。
「ありがとうございます!店長来て下さい。力仕事ですよ。」
「はいよ。任せてくれ。」
奥から出てきたのはジョン。隣国で一緒だった男だ。
「重いから俺が運びますよ。」
外から帰って来たはがりのダニエルが止めに入った。
「僕がやりますからご老体達は座ってて下さいよ。」
「何だと?!俺はまだ若いぞ!」
ダニエルは、隣国で川から私を引き上げてくれた男だった。
いずれもルキア辺境伯の腹心の部下だ。
今は灯り専門店の店長に店員。そしてアリサ改めリリーの専属護衛だ。
見知らぬ護衛よりも苦境を一緒に乗り越えた者が信頼できるだろうというルキア辺境伯の気遣いだった。
「もう、ちょっと!お客様がお待ちですよ。」
「はいはい!只今取り外しますから!」
この国にやって来て1ヶ月。
髪を赤茶色に染めていつもチャームポイントの帽子とメガネをかけて生活している。
黒目だけは変装出来ないので薄い色付きのメガネをかけて誤魔化している。
気休め程度だけどね。
「ありがとうございました。定期的に小物は入れ替えするので、また覗きに来て下さいね!」
灯りは、食品や雑貨屋のように毎日、売れる訳では無い。冷やかしにインテリアを覗きにくる人相手に会話を楽しむのが主な仕事だ。今の私には丁度良い感じだ。
「リリー、上がっていいよ。後は俺達がいるから。」
「はーい。ではお先です!」
私は2階へ上がり台所に立ち自分の為の食事に取りかかる。
自室は3階にあり、ジョンは2階、ダニエルは1階に自室がある。
夜になると護衛の交代で別の者が宿直で泊まる事がほとんどなので事務所的な部屋だ。
店の外にも勿論、護衛が潜んでいるらしい。
私の部屋は空がよく見える。鳥や雲、星をボンヤリと眺めるのが好きだ。
ここは城に住んでいた時よりも自由だけれど時々、どうしようもない感情が押し寄せる。
もう帰れない元の世界への思いは断ち切れない。
「ああっ~ダメダメ!」
考え過ぎるとパンクしてしまうから、この先は考えない。
きっと死ぬまで護衛が離れる事が無い窮屈な生活だろう。
ならせめて私の幸せの為に探してみようか?
特別な護衛騎士を。
私を一人の女として見てくれる人。
きっとみつかるわ。
だって私の推しは筋肉質な腕なのだから!
(終わり)
側に案内をしていたアルベルトがいるのがせめてもの救いだ。
燃えるような赤髪の鋭い目つきの男が前に出た。
「私は辺境伯を務めるエリオット・ルキア。本人確認をしたい。フードを取って頂きたい。」
言われた通りにして男を見上げると目が合う。鋭く意志の強そうな目だ。客人として連れて来られたがこの場の雰囲気といい恐ろしい。
「確かに黒目だ。松明の炎で目の色を誤魔化すとはな。流石は、アルベルトだ。」
「名誉な旅でございました。」
隣に控えるアルベルトが胸に手を当て礼をとった。
「失礼しました。守り人様!」
ルキア辺境伯は呼びかけると膝を折った。
周りの者達も膝を折り一同か最上の礼を取った。
「ようこそお越しくださいました。ご英断を心より感謝致します。」
「私には特別な魔法が使える訳では無いですよ。ご存知ですか?それなのに?」
「存じております。この地に滞在されると加護が働く。それだけで飢饉の状況は改善して行く事でしょう。我ら辺境伯連盟は戦争集結にも繋がり感謝しております。貴方との約束は我ら一同、名誉と命にかけて守ると誓います。」
そう言うと目が優しく微笑んだ。
*****
カラン、カラン。ドアの開く音と共に明るい声が響く。アリサの声だ。
「いらっしゃいませ~!」
ここは街にオープンしたばかりの灯り専門店。居間をイメージした店内に吊り下げ型と卓上型の灯りが幾つも飾られている。一緒に飾られている花瓶や置物などの小物も全て売り物だ。
「定員さん、これを欲しいんだけど。」
結婚が決まったと言う若いカップルが天井の灯りを指刺した。
「ありがとうございます!店長来て下さい。力仕事ですよ。」
「はいよ。任せてくれ。」
奥から出てきたのはジョン。隣国で一緒だった男だ。
「重いから俺が運びますよ。」
外から帰って来たはがりのダニエルが止めに入った。
「僕がやりますからご老体達は座ってて下さいよ。」
「何だと?!俺はまだ若いぞ!」
ダニエルは、隣国で川から私を引き上げてくれた男だった。
いずれもルキア辺境伯の腹心の部下だ。
今は灯り専門店の店長に店員。そしてアリサ改めリリーの専属護衛だ。
見知らぬ護衛よりも苦境を一緒に乗り越えた者が信頼できるだろうというルキア辺境伯の気遣いだった。
「もう、ちょっと!お客様がお待ちですよ。」
「はいはい!只今取り外しますから!」
この国にやって来て1ヶ月。
髪を赤茶色に染めていつもチャームポイントの帽子とメガネをかけて生活している。
黒目だけは変装出来ないので薄い色付きのメガネをかけて誤魔化している。
気休め程度だけどね。
「ありがとうございました。定期的に小物は入れ替えするので、また覗きに来て下さいね!」
灯りは、食品や雑貨屋のように毎日、売れる訳では無い。冷やかしにインテリアを覗きにくる人相手に会話を楽しむのが主な仕事だ。今の私には丁度良い感じだ。
「リリー、上がっていいよ。後は俺達がいるから。」
「はーい。ではお先です!」
私は2階へ上がり台所に立ち自分の為の食事に取りかかる。
自室は3階にあり、ジョンは2階、ダニエルは1階に自室がある。
夜になると護衛の交代で別の者が宿直で泊まる事がほとんどなので事務所的な部屋だ。
店の外にも勿論、護衛が潜んでいるらしい。
私の部屋は空がよく見える。鳥や雲、星をボンヤリと眺めるのが好きだ。
ここは城に住んでいた時よりも自由だけれど時々、どうしようもない感情が押し寄せる。
もう帰れない元の世界への思いは断ち切れない。
「ああっ~ダメダメ!」
考え過ぎるとパンクしてしまうから、この先は考えない。
きっと死ぬまで護衛が離れる事が無い窮屈な生活だろう。
ならせめて私の幸せの為に探してみようか?
特別な護衛騎士を。
私を一人の女として見てくれる人。
きっとみつかるわ。
だって私の推しは筋肉質な腕なのだから!
(終わり)
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