天然天使にご用心♡

七々虹海

文字の大きさ
上 下
34 / 35

しおりを挟む
 やぁっっっと、着いた。
 ラビエル先輩に置いてかれた花畑からこの塔まで、少しの仮眠をとっただけで歩き続けて丸2日!喉の渇きは木を登って、正体不明の果物を砕いて中の汁を啜った。おまけに、危ない生き物はいないとか言った癖に、獰猛な小動物に追いかけられた。あいつが木を上れなくて助かったよ。今考えると、俺はここにはいらない不純物、天使じゃないから追いかけられたのかもしれないね。

 遥か遠くに見えてたあの塔の前には誰か立っていた。色素の薄い、髪色も白に近い、翼の生えた…天使だ。天使以外いるわけないのに、疲れてるせいか驚いてしまった。

「お待ちしてました。大平涼様ですね。天使長様がお待ちです。中へ入って、正面の扉にお入りください」

 天使長。ルヒエルくんを閉じ込めてる天使。攻撃でもされるんだろうか。なにか試される?なんのために呼ばれたのかさっぱり分からないけど、ここまで来たらなるようになれ。
 ノックをして重い扉を開けた。

「よく来たね。人間の子。私はここの天使長ルシエル。ルヒエルを作った者だよ」

 中には先ほどの天使同様色素の薄い、銀髪の髪は腰より下まである、白い服に白いマントの天使が待っていた。マントには金で刺繍もしてある。良いものを着ているせいではなく、この天使の放つオーラ?みたいなので圧倒されそうになった。

「作った?」

「あの子はね、ここに現れた時は、天界でも姿が見えない、しかし意識はある、心は綺麗な生き物だった。あの子の声が聞こえてね。私が姿を与え天使にしたんだ。いわば私の子供だよ。その子供の羽を無惨に切り取って死なせてしまうのは惜しい。これが親心というものか…と気づいたよ。運よく死ななかったにしても、あの子を託すのにふさわしい者かどうか見て判断したくて呼んだんだ。怒ったかい?」

「いえ。それでルヒエルくんを返してもらえるんなら。歩いてここまで来た事だって、小動物に追いかけられた事だって、何ともありません」

「天界に来る事も怖くなかったかい?」

「ルヒエルくんが危ないって聞いたから。怖いとか考えなかった」

「そうか。確かに綺麗な空気を纏ってるね。あの子が気に入るわけだ」

 天使長様は対面してから初めて目を細めて微笑んだ。こちらの心まで穏やかになるような落ち着いた笑顔だった。

「人間の子よ。私の大事な子供をよろしく頼む」

 天使長さまの声を聞いて、世界は真っ白になった。


しおりを挟む

処理中です...