白衣を脱がさないで

七々虹海

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実は思い出してた

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 目が覚めて白い天井を見て何があったか考えてた時。実は翠・フォースターという名前を思い出した。
 翠・フォースター、つまりみーちゃんこと翠先生のフルネームだ。記憶の中のみーちゃんと、同僚の翠先生の名前が同じ。同姓同名。しかもこんな名前で同じ年なんてなかなか存在しないだろ。
 あの綺麗なグリーンの瞳さえ確認すればはっきりする。

 そう思い、入ってきたみーちゃんの前髪をどかして瞳を確認し、久しぶりの再会を装った。今までなんでみーちゃんを忘れていたのか。忘れて『もさ男』なんていうとんでもないアダ名で呼んでいた事を悔やんだ。
 何やってんだよ俺。しかもみーちゃんには言えないような、隠しておきたいセフレが何人かいるなんていう事実をみーちゃんも知ってるみたいだし。
 それどころか本人に「恋人いらないけど、セフレならなってやってもいいよ」なんて超がつくほど上から目線でセフレならなってやってもいいよ発言はしてるし、穴があったら入りたい、いっその事再会からやり直したい。
 
 そんなわけで辻褄合うか分からないけど、再会からやり直してみた。
 みーちゃん、みーちゃん。小児喘息もちで体が弱いから学校休みがちで、俺の事頼りにしてくれてたみーちゃん。俺よりちっちゃくて、可愛いネコっ毛に綺麗なグリーンの瞳。初めて会った時、初めて見る瞳の色に「目にビー玉入っちゃったの?」って、尋ねたらしい。幼い頃の俺の発言、正に小さな子供って感じだ。

 隣の家に可愛い弟が出来た気分で毎日通った。天気が良くてみーちゃんの体調が良さそうな日は外で遊んだ。一緒に原っぱで転がったり虫捕まえたり、ちょっとした探検の真似事したり。俺に着いてきてくれるみーちゃんが可愛かった。
 低気圧が近づくと、具合が悪くなりがちなのも勉強して、外には誘わずみーちゃんの家で遊んだ。みーちゃんの家は広くて、家のなかに、ミニカーのレースが出来るコースがあったり、俺の家にはない見た事ない楽器があったりして魅力的だった。
 ベッドに横になってる時は絵本を読んであげる時もあった。
 いつもニコニコして、読んでる俺を見上げるみーちゃんが可愛くて、図書館に新しい本借りに行ったりしたなぁ。

 そんな可愛くてちっちゃかったみーちゃんが、再会して俺に真剣に付き合ってほしいって!俺はもちろん男ありだからオッケー、みーちゃんならそりゃもうオッケーなんだけど!守ってあげたかったみーちゃんが、こんなに…190㎝近くもある長身になってて、俺の事簡単にひょいって持ち上げたから、恥ずかしいんだか照れ臭いんだか、脳内だから率直に言うと、こんな大男俺抱けませんしネコしかやった事ないんで、頼れる俺じゃなくてみーちゃんに甘える俺になるけど、それってみーちゃんが記憶の中で想ってくれてた俺と全く正反対だろうけど、いいんですか?!って状態。
 でも、久しぶりのみーちゃんの手を手離すのは惜しくて、ここまでぶっちゃけるのは恥ずかしくて、抱っこしてくれたままのみーちゃんの胸で顔を隠しながら幸せを噛み締めていたんだ。

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