白衣を脱がさないで

七々虹海

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付き合うって難しい

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 美容院に着いたら早々にみーちゃんが呼ばれた。 
「今日も忙しかったんでしょ。手早くやるから、どんな感じ?」
 いつも担当してくれる芹沢さんは張り切っててきぱき訊いてくれる。
「何そんなに張り切ってんの?」
「だってあなた、匠くんが友達連れてくるなんて初めてなんだから、そりゃぁ張り切るでしょう。それだけ大事な友達なんでしょ?」
「あぁ。久々に再開した俺の幼馴染みだからよろしく。とりあえずさっぱりした感じで…芹沢さんに任せときゃ問題ないよね?」

「もう!この子ったら嬉しいこと言うんだから!任せて!」
 芹沢さんは俺より少し年上の、確か30歳ちょいのお兄さんなんだけど、嬉しかったりテンションあがると少しおネエみたいな喋り方になる。
 接客業って業種柄、キャラを作ってるのか、はたまたそっちが素なんだか、長い付き合いのはずなんだけど、ちょっと読めない。

 距離感を掴むのが上手い人で、あまり立ち入って訊いてほしくない事は適当に会話を終わらせてくれるから、その辺の事もあって、任せられるお兄さんだと思ってる。
 初めての美容院行って、また「お仕事何してらっしゃるんですか?」の話から始まるのは最高に面倒だ。

 みーちゃんがシャンプーに連れていかれ、考える時間ができた俺は、みーちゃんとの事を考えてた。

 しっかり者で、みーちゃんの面倒を見てた俺の事を好きになってくれたんだとしたら、みーちゃんは甘えたいタイプなんだろうか。
 デカイみーちゃんを甘やかすのも良いけれど、お尻でしかイケなくなってから、シてる最中はグズグズになってIQ1の何言ってるか分からず甘え出す俺なんか見たら、いくらみーちゃんでもドン引きするんじゃないだろうか。

 髪を切って瞳を出したみーちゃんは最高にイケメンになるはずだから、俺と釣り合わないんじゃないだろうか…まで考えだした。
 案外一人で考えだすとネガティブな方向にいってしまう。

 そもそもみーちゃんと比べてしまうと男として劣ってる気になってしまうからかもしれない。肩幅もなく細い腰、ネコとして見てるお兄さんたちには喜ばれてた自分の特徴が、男としては…みーちゃんからしたらどうなんだろう。 
 不安だ。恋人ってたち位置の人間が出来るのは初めてだから、不安ばかりが募る。
 みーちゃんは俺の何を気に入って付き合おうって言ってくれてるんだろう。
 昔の俺を想像してだったら、今は真逆のような気もする。
 昔の俺の理想を抱いたままの付き合っての言葉だったら、すぐに嫌われる自信がある。
 
 あ~~~、付き合うってハードル高いなぁ。
 こんなに相手のことゴチャゴチャと考えちゃうんだ。昨日までの俺どこいった?気持ちよければ良かったはずじゃん。恋人いたらそれが通用しないんだよ。
 あっ、セフレのお兄さんたちともお別れしなきゃね。





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