白衣を脱がさないで

七々虹海

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おかしな翠

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 最近翠がおかしい。

 もうすぐ外来の診療時間が終わる。
 いつもなら、翠のドタドタ走る音、婦長の怒る声、「匠せんせ~い!」って久々に会う恋人に会えたみたいな嬉しそうな翠の声が聞こえてくる時間。(実際には一緒に住んでるから朝ぶり、数時間ぶりの再会なんだけどね)

 今日も、、、来ないなぁ……。

 そう、最近来ないんです。。。あの騒がしい音が聞こえないと淋しいし、物足りなく感じる…。

 まぁ、昼食は一緒に食べるの分かってるから、俺からお迎えに行けばいいんだ。隣の診察室にGO!GO! 

「翠先生、お昼食べに行きましょう?」
「あ~、たくちゃ…匠先生、俺やることあるんで、昼食べられるか分からないから、1人で行ってきて下さい」

「えっ、なんか忙しいなら俺手伝おうか?」
「1人で大丈夫なんで、ほんとにどうぞ…」
「うん、分かった……」
 
 まただ、最近ずっとこんな感じ。
                           
 病院の宿直室ではもちろん、家でもエッチしてないんだよ。俺に飽きちゃったのかな?距離置かれてる感じ。

 ちょうど食堂にいた一つ年上の保坂先生を
捕まえて聞いてもらった。保坂先生はこの病院でたまに開かれる、同世代での飲み会のメンバーの一人だ。いつも明るくてプラス思考な保坂先生は今の俺の悩みを聞いてもらうのにうってつけな存在だと思った。

「っていう具合なんですよ。保坂先生、どう思います?」

 騒がしい食堂、向かいのテーブルには口をあんぐりしたまま固まってる保坂先生。先生の時だけ止まってしまったかのようだ。
「先生。保坂先生、起きてますか?どうしました?」

 目の前で手の平を振ってみせる。おーい、おーい。

「あっ、あぁ。起きてるよ。いやぁ有り得ない事聞いて思わず固まってたよ」
「何が有り得ないんですか?」

「翠先生の匠先生大好きはさ、端から見てても駄々漏れで胃もたれおこす程じゃぁないか。あれがそうそう変わるとか、匠先生に飽きるとか。う~ん。ないと思うんだよな~」

 腕組みしながらうんうん唸って考えてくれてるらしい保坂先生。確かに先月の飲み会でも最終的に「お前ら帰ってからイチャつけ!」って、からかい半分の、半分本気で言われてから帰ったんだった。

「でも実際かまってくれてないんですよ?」
「匠先生はさ、いっつも翠先生がぐいぐい積極的にきてくれから、自分からは愛情表現したことないんじゃない?」

 そう言われ考えてみると、確かに。自分からしなくても「たくちゃん好き」「たくちゃん可愛い」って毎日のようにきてくれるから、安心しきってて、自分から言う必要性全く感じてなかったっていうか…。

「そうかもしれません……よし、俺!自分から愛情表現してみます!」
「あぁ、がんばれよ」

 立ち上がって気合い入れた俺に、ニコニコと笑いかけてくれる保坂先生。優しい!保坂先生に相談して良かったな。俺も応援してあげなきゃ!

「保坂先生も頑張ってください!悠仁先生、今日も仮眠室にいると思いますよ!では!お先失礼しますね!」

 はっ…?匠先生?俺が悠仁先生いいなって…憧れ以上の気持ち抱いてるの見抜いてたのか?侮れない…。飲み会で見抜かれたのか…。まだ恋愛対象の好きとかではないんだけどな。

 まぁいいか。追いかけて否定するほどでもない。頑張って、好きとか伝えておいで。

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