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ハ○撮り?
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その日は珍しく、「注文してたものが届くから先に帰っててくれる?」って翠に言われて先に帰ることになった。
仕事終わり時間が一緒なら、大抵翠の車で帰る俺たち。
どこか寄るところがあったって、一緒に寄るか、用事がすぐなら片方は車で待ってればいい。先に帰っててくれる?は珍しいパターンだった。
まぁ子供じゃないんだから、1人で公共交通機関だって難なく使える。ただ、物足りない。うん、その言葉が一番合ってるな。翠が隣にいなくて物足りない。
翠を思い出すまでの俺って、正直遊んでた。
誰かしら相手してくれる人探して、エッチすればその時は優しくされて…、それで十分じゃん、て。思い出したら自分がすごく嫌な奴に思える。
そんな俺だったのに、無償の愛をくれた翠だったから…。無償の愛とか思ったら恥ずかしい。やめやめ、こんな事考えるのは終わり。
何受け取りに行ったんだろうなぁ。今時ネットで頼んでそのまま家に届くパターンが多いだろうに、わざわざお店。
なにかサプライズ?記念日でもなんでもないし。こんな事なかなかないから気になってしょうがない。
いつの間にか、頭の中は翠でいっぱいだったんだ。自分から変わろうとしなくても、大事な人が出来ると人って変われるんだな。うわっ、また恥ずかしい考えしてた。
こんな事ずっと考えてたらもう家。
無心で風呂を洗ったり、ササッと夕飯の用意。簡単にチャーハンとスープでいいや。
無心。無心。そのうち翠は帰ってくるさ。念仏みたいに唱えて帰りを待つ。
する事なくなって、ボーーーっとテレビの前のソファに座り、観てもいないテレビ番組を見てたら翠が帰ってきた。
「ただいま~」
「お帰り。なんか別々だったから変な感じだったよ」
「あれっ?別々に帰ることもあるよね?」
「同じ時間に終わったらほとんど一緒でしょ」
「そうだね。たくちゃん俺がいなくて寂しかったの?」
「………そうかもね。結局翠の事考えてたし」
満足気な顔。いつもは僕が手綱を握ってるというか優位な感じなのに。
「たくちゃん見てこれ」
うんうん。手に持ってる紙袋は気づいてたけど、こっちから聞くのもなんだかなぁと思ってさ。
「なにそれ?」
紙袋に入った箱。それって、電気屋さんの袋だね。中を覗きこむと…。
「ビデオカメラ?」
「じゃーん。そうだよ。これ電気屋さんに頼んでおいたビデオカメラ」
「どうしたの急に?写真撮るの好きなのは前からだけど…」
そう、翠は小児科病棟の子供たちの写真を撮って、共有スペースに貼るのが好きだ。時間が有り余ってるわけじゃないのに、よくやるな~と思って見てた。翠と信頼関係がある子供たちは、みんな良い顔をして写ってる。たまに俺が診察をしてる場面を撮ってたりもするから、自分の知らない自分が病棟に飾ってあっておかしな気分になる。
退院が決まった子には仲良い子との写真を撮ってプレゼントしてるし。ほんと、忙しいはずなのにね。
負担じゃなくて、子供たちの笑顔が好きなんだって。
俺の写真も病院での匠先生って姿だけじゃなく、何気ない日常のヒトコマだったり、共通の休みに出掛けた日に外出先での姿だったり。
後から見せられると俺って翠を見る時こんな甘い顔してるんだって思い知らされる。
恥ずかしい、ひたすらに恥ずかしいけど悪い気はしない。
「これね、新人研修の時に俺がお世話になった教授がそろそろ定年されるって聞いて。会いには行けないからビデオレターでも送ろうかなって思って」
「ビデオ通話じゃダメなの?」
「小児科の子供たちも撮って、ちゃんと俺小児科医してますよーってとこも見せたくってさ」
「そっか。きっと喜んでくれるよ」
「だからさ、わざわざ店舗行って店員さんにレクチャーしてもらったわけ。で、分かってると思うけど、俺が一番撮りたいのはたくちゃんだから、最初はたくちゃんで練習させてよ」
「えぇっ?そんな流れ?!いつ撮りたいの?」
「今」
突飛なところがある翠だけど、まさかの展開だ。
仕事終わり時間が一緒なら、大抵翠の車で帰る俺たち。
どこか寄るところがあったって、一緒に寄るか、用事がすぐなら片方は車で待ってればいい。先に帰っててくれる?は珍しいパターンだった。
まぁ子供じゃないんだから、1人で公共交通機関だって難なく使える。ただ、物足りない。うん、その言葉が一番合ってるな。翠が隣にいなくて物足りない。
翠を思い出すまでの俺って、正直遊んでた。
誰かしら相手してくれる人探して、エッチすればその時は優しくされて…、それで十分じゃん、て。思い出したら自分がすごく嫌な奴に思える。
そんな俺だったのに、無償の愛をくれた翠だったから…。無償の愛とか思ったら恥ずかしい。やめやめ、こんな事考えるのは終わり。
何受け取りに行ったんだろうなぁ。今時ネットで頼んでそのまま家に届くパターンが多いだろうに、わざわざお店。
なにかサプライズ?記念日でもなんでもないし。こんな事なかなかないから気になってしょうがない。
いつの間にか、頭の中は翠でいっぱいだったんだ。自分から変わろうとしなくても、大事な人が出来ると人って変われるんだな。うわっ、また恥ずかしい考えしてた。
こんな事ずっと考えてたらもう家。
無心で風呂を洗ったり、ササッと夕飯の用意。簡単にチャーハンとスープでいいや。
無心。無心。そのうち翠は帰ってくるさ。念仏みたいに唱えて帰りを待つ。
する事なくなって、ボーーーっとテレビの前のソファに座り、観てもいないテレビ番組を見てたら翠が帰ってきた。
「ただいま~」
「お帰り。なんか別々だったから変な感じだったよ」
「あれっ?別々に帰ることもあるよね?」
「同じ時間に終わったらほとんど一緒でしょ」
「そうだね。たくちゃん俺がいなくて寂しかったの?」
「………そうかもね。結局翠の事考えてたし」
満足気な顔。いつもは僕が手綱を握ってるというか優位な感じなのに。
「たくちゃん見てこれ」
うんうん。手に持ってる紙袋は気づいてたけど、こっちから聞くのもなんだかなぁと思ってさ。
「なにそれ?」
紙袋に入った箱。それって、電気屋さんの袋だね。中を覗きこむと…。
「ビデオカメラ?」
「じゃーん。そうだよ。これ電気屋さんに頼んでおいたビデオカメラ」
「どうしたの急に?写真撮るの好きなのは前からだけど…」
そう、翠は小児科病棟の子供たちの写真を撮って、共有スペースに貼るのが好きだ。時間が有り余ってるわけじゃないのに、よくやるな~と思って見てた。翠と信頼関係がある子供たちは、みんな良い顔をして写ってる。たまに俺が診察をしてる場面を撮ってたりもするから、自分の知らない自分が病棟に飾ってあっておかしな気分になる。
退院が決まった子には仲良い子との写真を撮ってプレゼントしてるし。ほんと、忙しいはずなのにね。
負担じゃなくて、子供たちの笑顔が好きなんだって。
俺の写真も病院での匠先生って姿だけじゃなく、何気ない日常のヒトコマだったり、共通の休みに出掛けた日に外出先での姿だったり。
後から見せられると俺って翠を見る時こんな甘い顔してるんだって思い知らされる。
恥ずかしい、ひたすらに恥ずかしいけど悪い気はしない。
「これね、新人研修の時に俺がお世話になった教授がそろそろ定年されるって聞いて。会いには行けないからビデオレターでも送ろうかなって思って」
「ビデオ通話じゃダメなの?」
「小児科の子供たちも撮って、ちゃんと俺小児科医してますよーってとこも見せたくってさ」
「そっか。きっと喜んでくれるよ」
「だからさ、わざわざ店舗行って店員さんにレクチャーしてもらったわけ。で、分かってると思うけど、俺が一番撮りたいのはたくちゃんだから、最初はたくちゃんで練習させてよ」
「えぇっ?そんな流れ?!いつ撮りたいの?」
「今」
突飛なところがある翠だけど、まさかの展開だ。
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