悠生が息をする為の方法

七々虹海

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悠生の過去

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 気がついた時には同じ年くらいの、あまり身綺麗ではないガキに囲まれてた。
 俺もその中の1人。

 世話をしてくれる大人が数人。大人は、泣いたり漏らしたり手がかかる子供を必然的に世話する。俺は自分で言うのも何だけど、手がかからないガキ。
 少し年下の子を見ててとさえ頼まれる。みんなキライだった。

 大人は俺の事を無表情で何を考えてるか分からないと陰で話ながらも、悠生は下の子の面倒見てエライね、なんて口先では言うんだ。

 何が悲しいんだか、泣きながら俺にくっついてくる年下のガキども。俺の髪が綺麗だとか言って触らせてと群がってくる同世代の子供たち。
 俺だって変わらないガキだったんだ。泣きたい時もあった。温かい手が欲しい時もあった。
 でも放っておかれた。何のためにここにいるのか、分からなかった。

 そんな毎日が何年も過ぎ去り、無表情なのも変わらずそのまま、どこを見てるのか分からないとまで言われても俺だって分からない。
 変わらない毎日の中で現れたのが、今のボスだった。ボスはある日突然、どこからか現れて、俺を引き取りにきた。
 俺からしたら、ここから出してくれるなら誰でもいいよ。楽しいとか好きとか、本でだけ読んだ事のある色んな感情を知る事が出来るんなら。

 施設の大人が言った。
「悠生、こちら大山さんとおっしゃるのよ。残念な事に奥様との間にお子さまを授かる事ができなかったんですって。それで、悠生を子供として引き取りたいんですって。良かったわね」
 厄介払いできるから喜んだんだろ。どうでもいいけど。

 大山さんが迎えに来た日、見たことのない多分高級な車に乗せられた。運転するのは大山さんと一緒に来た大人だった。
 大山さんは運転しない、偉い人なんだ。無意識にそう思った。偉い人の子供になれるんだ。今までと違う生活、違う景色が待っている。

 車に乗って施設の方を振り返ると、大人たちと、俺が面倒を見てきたガキども、俺を友達だと思ってたらしい奴らが見送っていた。泣いてる奴もいた。
 なんで俺がいなくなることが悲しいのか分からない。手なんか振ってやらなかった。もう俺の事なんて忘れなよ。



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