Strawberry Film

橋本健太

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第12話 1995インパクト

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    阪神淡路大震災から少しずつ復興していった中、春に衝撃的な出来事が起きた。大学に行く前につけたテレビで、ニュース速報がやっていた。
「東京 地下鉄でサリンが撒かれた」
そこには、有毒物質のサリンが撒かれ、悶え苦しむ人々の姿が映っていた。
「えっ?!これどないなってんの?!」
通勤ラッシュの時間の、東京丸ノ内線の地下鉄で、サリンという有毒物質がばら蒔かれ、駅は大パニックに陥った。
「オイオイオイオイオイオイ、エライことやで…。」
その日の夜、情報が整理され、改めてニュースを見ると、被害状況が明らかになってきた。
「とんでもないことやな…。」
5月に、地下鉄サリン事件の犯人が逮捕され、オウム真理教が起こしたものと決定づけられた。薫は、オウム真理教については、変なことをやっている集団という認識だった。やがて、全国に支部が出来、京都にも出来た。薫も、信者に勧誘されたが、全く相手にしなかった。1989年に、衆議院議員選挙で真理党という党を作り、教祖の松本智津夫の被り物を被って、訳の分からないことをやっていた。薫は、オウム真理教の恐ろしさを知り、と同時に今後の世界の行方を案じていた。
(ハルマゲドンとか、ノストラダムスの大予言だとか、馬鹿馬鹿しいと思うてたけど、阪神淡路大震災が起きて、バブルも弾けて、閉塞感があるな…。)
オウム真理教は、当初は和気藹々としたヨガサークルに過ぎなかったが、次第に過激化し、教祖の名の元で殺人や暴力が正当化され、少しでも意見や反発すれば、教祖に目をつけられ、拷問されて惨殺されるという恐怖政治の組織となり、最終的にこのような凶行に及んだ。
(宗教は、本来は幸せを願うもの。オウム真理教、これは宗教ちゃうやろ…。)
薫は、オウム真理教が起こした事件と、社会と宗教の関係などについて、約3週間は考え抜いた。

 阪神淡路大震災の被災地の復興が進み、私鉄の路線が全線復旧し、日常が戻りつつあった夏のある日、薫は将来のことを案じていた。
「これからどうなるんや…。」
風呂上がりに、自分の部屋で扇風機の風に当たりながら、色々と考えていた。大学での単位はここまで全て取得出来、バイト先の写真館では館長の信頼を得て、高評価を受けていたが、どことなく不安感があった。バブル崩壊による平成不況、大震災とテロ事件、社会不安によって悩んでいたのである。

    悶々とした感情は徐々に払拭され、夏休みには、小旅行で静岡と山梨に行った。
「海は楽しいね!!」
「そうやな!」
伊豆の海で楽しむ2人。友子の水着姿に薫はメロメロになる。熱海にある熱海秘宝館に行き、不思議な世界観に酔いしれた。他にも、山梨県西八代郡上九一色村にあるオウム真理教のアジト サティアンも見に行った。
「ここが、サティアンって所やね。」
「こんな閉鎖された感じの所で、サリンとか作ってたんや。」
同年、地下鉄サリン事件を起こし、創設者 松本智津夫は逮捕された。半ば取り残されたような形で、信者達の居住地 サティアンが佇んでいた。白い無機質な建物で、人が住んでいるかは分からないが、ギリギリまで近づいて撮影を開始。
「気づかれるとマズいわ。」
「そうやな、ギリギリまで行って、見つかったらダッシュや。」
内部に入ると、拷問部屋のような所や工場らしき場所があった。撮影を続け、バレないように引き返して、信者に見つからずに済んだ。
「結局、彼らはこんな殺戮や洗脳なんか望んでへんかったハズや。どこかで道を誤ったんやろ。」
「そうやね、彼らは本来、救済を求めてたハズよ。」

    冬になり、薫は進路について考え始めた。カメラマンになるにしても、自分が目指しているのは、グラビア専門のカメラマンである。デビューしたからと行って、すぐに写真が撮れる訳ではない。下積みが大事である。そこでしっかり技術を学んで、自分で撮影出来るようになるのである。
(売り込むには、自分が今まで撮ったグラビア系の写真を売り込んで…。)
薫は、今まで撮影したグラビア写真を引っ張り出して見比べた。
「ヌードもあるし、セクシーな感じでは撮れてる。後は、来年の就活までにもっとグラビア写真を撮って、売り込むことや。」
震災を乗り越え、逞しくなった薫。1995年は、色々と模索した年だった。
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