Strawberry Film

橋本健太

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第14話 1996ドリーム

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    就職活動と卒業研究に勤しみ、写真館で実際に写真を撮るようになり、梅雨が明けて、夏の太陽がキラキラと輝くのと相まって、薫に活気が戻った。卒業研究のテーマは「ジュニアアイドル ~美しき少女の残像~ 」。就活もメンタルの切り換えを早め、いい意味で気楽にやっていけた。7月になり、アトランタオリンピックが開幕。博信の家に遊びに行き、サッカーを観戦。初戦は、サッカー王国ブラジル。
「スゲェ奴らがようけおるで…。」
「太刀打ち出来るんか?」
1996アトランタ五輪 男子サッカー 
1996年7月21日 GS グループD 第1戦 日本VSブラジル
ブラジルには、ロナウジーニョ・ロナウド。リヴァウドなどのスター選手が数多くおり、海外メディアは「ブラジルの圧勝」を予想しており、ブラジルサポーターも楽勝ムードが漂っていた。
「凄い選手達やな…。流石はブラジルやで…。」
「まず前半やな…。」
2人が固唾を飲んで見守る中、試合が始まった。予想通り、ブラジルが一方的に攻める展開に。ワールドクラスのテクニックで、日本の守備を切り裂き、次々とシュートを打ってきた。しかし、日本の守護神 川口能活が悉く好セーブを連発した。
「凄いな、このキーパー…。」
「川口、頑張っとるやん!」
前半は川口のファインセーブもあり、0-0で持ちこたえた。

    アメリカで行われているため、日本時間では朝に放送されている。ハーフタイム中に、博信が朝食を作ってくれた。食パンにベーコンとチーズを乗せて焼いたクロックムッシュというものとオニオンスープ、牛乳をいただく。
「後半、どうなるかやな。」
「川口能活っていうキーパー、スゴいな。GKって、あんなに前出てええの?」
「おっ、薫。お目が高い。その前への果敢な飛び出し、それが川口の持ち味やで。」
朝食を食べ終え、皿を片付けた頃に後半が始まった。後半早々、ブラジルの攻撃陣が牙を向く。ベベット・リヴァウド・ロナウジーニョらのシュートを川口が防ぎ、日本の守備陣は粘り強く守った。そして、後半27分にチャンスが来た。左サイドバックの路木が、ブラジルのディフェンスラインとGKの間目掛けてロングボールを放り込むと、クリアしようと飛び出したブラジルGKジダとDFアウダイールが接触した。
「おっしゃ!がら空きや!!」
「あーあ、派手にぶつかりよった…。」
ゴールががら空きになり、その隙に伊東輝悦が蹴り込み、日本が先制した。その後、日本は全員で守りきり、1-0とブラジル相手に大金星を挙げた。
「おっしゃー!!!ブラジルに勝ったー!!」
「おー!!番狂わせや!!!」
この勝利は「マイアミの奇跡」として、後世に語り継がれた。日本は2勝1敗で、ブラジル・ナイジェリアと勝ち点で並ぶも、得失点差で涙を飲んだ。

    8月は、就活で大阪を駆け回った。薫が応募したのは、大阪の芸能事務所 Star。大阪市中央区 ミナミの繁華街 難波にある。書類選考を通過し、面接に漕ぎ着けた。8月18日 薫は真夏の大阪に、スーツ姿で乗り込んだ。
(暑いわー…。せやけど、これがチャンスやな!これは絶対にモノにするで!!!)
自信を持って、面接に臨んだ。ドアを3回ノックし、部屋に入り、挨拶をする。
「京都芸術大学から来ました香塚薫と申します。本日はよろしくお願いいたします。」
面接官は、メガネをかけた小太りの男性。1対1で行われる。
「本日はお忙しい中、お越しいただきまして、誠にありがとうございます。私は、芸能事務所Starのプロデューサー 南方陽一と申します。では、面接を始めさせていただきます。」
1996年という時期、バブルが崩壊して平成不況という情勢、そういう背景の中、ここまで辿り着いたのである。
「わが社の志望動機をお願いします。」
「はい、私はグラビアカメラマンを目指しており、女の子の写真を撮るのが大好きです。当社では、グラビアアイドル専門カメラマンを募集していると聞き、応募に至りました。」
「ありがとうございます。グラビアカメラマンを目指している貴方の志は、よく分かりました。論より証拠ということで、貴方が撮影した写真を拝見させていただいてよろしいでしょうか?」
「はい。」
薫は、カバンからグラビア写真が入った封筒を取り出し、面接官に提出した。彼は、丁寧に封を切り、中の写真を注意深く観賞した。
「ほうほう。中々いいじゃないか。おっ、これはわが社の期待のアイドル 大原茉莉奈ちゃん🖤。彼女のヌードを撮るとは大したものだ。」
「ありがとうございます。」
その後、質疑応答が続き、薫は一つ一つ丁寧に答えた。
「最後に、貴方にとってグラビアとはなんですか?」
「はい。私にとってグラビアとは、女の子の一番美しい瞬間を切り取り、作品として遺すものです。」
「ありがとうございました。これで面接は以上です。」
席を立ってから一礼し、部屋を出て、面接は終わった。地下鉄御堂筋線で梅田に戻り、京都へ帰った。

    9月初め、ポストを見ると、Starから手紙が来ていた。恐る恐る封を切った。
「選考結果
先月はお忙しい所、芸能事務所Starの面接試験にお越しいただき誠にありがとうございました。選考の結果、貴方を当事務所のカメラマンとして採用することになりました。」
内定を貰え、薫は大喜びした。
「やったー!!!!!」
こうして無事に、1996年が終わった。
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