Strawberry Film

橋本健太

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第30話 Bad to Bad

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    白血病による入院生活が続き、抗がん剤の副作用にも苦しむ日々が続いた。
「ハァハァ…。ホンマに治っとるんかいな…。」
回復しているのかどうか分からない状態で、薫は悶々とした心境になっていた。頭を掻くと、髪の毛がゴッソリと塊で落下した。
「オイ、ちょっと待って、何やコレ?!」
薄毛に悩まされ、身体がむくんで、食欲も無くなってきた。週刊少年ジャンプが病室に置いてあるわけもなく、新聞も届かないので、段々世間の流れに取り残されてしまった。
「タマちゃん?世間はアザラシで盛り上がっとるんか…。」

 悶々としながらも、化学療法などで快復が進み、8月下旬には無事に退院することが出来た。ただし、薄毛になった頭はすぐには戻らないため、それを隠すために茶色いハットを被って誤魔化した。
「ハァ…。世間の空気は美味いな…。」
出迎えてくれた編集長と喜美子と共に、社宅へ帰り、この日はゆっくり休んだ。休んでいた分の給料を受け取り、復帰後のグラビア撮影を行う。
「あっ!薫さん!元気になったんですね!」
「里沙ちゃん、久しぶり!」
昨年の冬に、グラビア撮影をした御堂里沙と再会した。1年ぶりに会えた彼女は、しっとり感が増し、色気を漂わせる。撮影では、制服を着て行った。
「私の、最後の制服姿です。」
「いいよ、いいよ。色気が感じられるよ。」
それから、スクール水着に着替え、プールで撮影。高校生活最後の水着姿、大きくなった胸と尻、引き締まった太もも、水に濡れた黒い髪、全てが調和した美しさに、病み上がりの薫の心が癒された。
(あぁ…。これやこれ…。ありがとう、里沙ちゃん!!)

    気持ちが回復してきた薫は、日々のグラビア撮影に勤しんだ。
「いいね、そうそう!」
撮影の合間、来年の夏の計画を立てる。中国と香港でグラビア撮影&アジアカップ撮影と、真夏の中国を駆け回ることになる。13th2004AFCアジアカップ中国は、この当時、最終予選の組み合わせが決まり、これから予選が行われるという所であった。世の中の流れに目を向け、エンタメに注目すると、フジテレビで「ワンナイR&R」が水曜夜
10時に放送され、土曜夜8時の「めちゃ×2イケてる!!」と並んで高視聴率をマークしていた。
「どうも、車車車、車3つで轟です!ギューン!!」
「松浦ゴリエです、ペコリ~。」
「フォトゥファラさぁん…。」
当時売れっ子のお笑いコンビ ガレッジセール(ゴリ・川田)雨上がり決死隊(宮迫博之・蛍原徹)donndokodonn(平畠啓史・山口智充)とグラビアアイドル 小池栄子・根本はるみが出演したバラエティ番組で、ゴリエ・落ち武者・轟さんなど個性豊かなキャラクターがいた。
「ゴリエ、ゴツイな…。」
ある日の撮影で、東京に赴き、当時K-1に登場したボブ・サップと対面した。
「ハッハッハッ」
色黒で筋骨隆々な大男に、薫は色々と圧倒された。
「デカいヤツやな…。」
試しに、なぜかリングに上がった薫。
「行くで、ボブ・サップ!!」
ボブ・サップに体当たりするも、跳ね返され、逆に手加減はしているが、強烈なボディスラムを食らった。
「痛ぇ…。」

   秋に一部メンバーが海外での撮影で、アメリカに行くことになった。
「常夏の南国 ハワイ・世界の文化の中心地 ニューヨーク・カジノの街 ラスベガスで撮る。」
だが、薫は白血病からの病み上がりということもあり、ドクターストップでアメリカ行きは叶わなかった。
「アメリカは広いしな…。」
その後も気持ちを切り替えて、グラビア撮影に勤しんだ。海外での撮影は、日韓W杯で韓国に行ったのと、来年の夏の中国と香港での撮影がある、とアメリカへ行けなかったことは、きれいさっぱり忘れた。11月になり、アメリカへ行ったメンバーが帰国。アメリカでの土産話で、皆が盛り上がる一方、薫は11月から始まった13th2004AFCアジアカップ中国大会の予選に目を向けていた。今回から出場枠が12から16に拡大。開催国 中国と前回王者 日本は予選免除。サッカー日本代表は、日韓W杯後にフィリップ・トルシエが退任。後継に元サッカーブラジル代表のジーコが就任。ジーコJAPANとして始動した。しばらく経ち、今度の撮影は福岡で行うと言われ、喜美子と行動を共にすることになった。期間は2003年11月6~11日の6日間。
「福岡か。初めてやからな…。」
「福岡は地元やけん。色々案内するけん。」
この撮影で、まさかあんなことが起こるとは誰も知る由が無かった…。
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