Strawberry Film

橋本健太

文字の大きさ
38 / 89

第38話 翳り

しおりを挟む
 2006年になり、Strawberry Film出版で薫は大きな成果を得た。上々のスタートかと思いきや、ジュニアアイドル雑誌の「いちご🖤みるく」と「シュークリーム」の売れ行きが伸び悩み、SeventeenやPopteenに抜かれてしまった。時代はギャルなのである。
「広末涼子とかの、清楚系の時代終わってもうたんか…。」
2005年9月頃から赤字が続き、編集者も頭を抱える。菅野は病気がちで、現場に顔を出せない日々が続いた。薫をはじめ、他のカメラマン達は自主的に行動していたが、明るい菅野が病に伏している現状に、どこか現場は暗くなりかけていた。
「みんな、おはよう。」
現場に来た菅野。弱りかけた様子で、杖をついている。心配する皆を励ました。
「湿気た顔すんな、シャキっとしろ!!」

 薫は休憩時間中に考えた。この芸能事務所Starに入社して、今年で10年になる。思えば色々なことがあり、それらを1つ1つ回想する。

1997年 カメラマンとして入社。福岡から来た棟方喜美子と出会う。カラッと明るいキャラクターの喜美子に、最初は気後れする所があったが、一緒に活動していくうちに馬が合った。サッカー好きと言う共通点で、意気投合し、16th1998FIFAW杯フランス大会 アジアプレーオフ 日本VSイランをテレビで共に視聴し、岡野が決勝点を挙げた時は、深夜にも関わらず、歓喜の雄叫びを上げて抱き合った。
「やったー!!!岡野ー!!!」
「W杯へ行けるけん!!!」

1998年 喜美子とペアでカメラマンとして活動する機会が増えた。テレビでフランスW杯を視聴。3戦全敗に終わり、世界との力の差を感じた。ジュニアアイドルの写真を撮るようになり、パンチラの美学にも目覚めた。

1999年 ノストラダムスの大予言は盛大に外れた。
「大王来ぉへんやん!!」
東京の出版社へ研修に行き、グラビア雑誌の撮影を行った。フジテレビを見学させてもらった時には、江頭2:50に出会い、ネタを間近で見れた。
「取って入れて出ーす!!!」
「がっぺムカつく!!」

2000年 お菓子系グラビア雑誌が流行り、薫は女子中高生の水着やヌードグラビアを撮影しまくり、女の子の可愛い瞬間を切り取って写真に収めた。
「パンチラの所、やっぱりパンツは白やな。」

2001年 ジュニアアイドルが、大人に近づく。そんなセクシーな瞬間に立ち会えた。
「優子ちゃん、めっちゃセクシーになっとる。」
「スクール水着が、ちょっとキツくなっちゃった🖤」
当時、全盛期を迎えたアイドルグループ モーニング娘を研究し、若者文化を熱心に吸収した。
「恋愛レボリューション21、めっちゃええな!!」

2002年 17th2002FIFAW杯日韓大会が開催され、「W杯と日常」というテーマで、日本と韓国を跨いで、撮影に励んだ。幸運にも薫は、日本のグループステージの試合を観戦することが出来た。 
「ベルギーに2-2、初の勝ち点はデカイな。」
日本での撮影で印象に残っているのが、第2戦 日本VSロシアだ。横浜中華街で買った崎陽軒のシウマイ弁当を食べ、横浜国際競技場で観戦。稲本潤一の1点を守りきり、1-0でW杯初勝利を挙げた時の、選手とサポーターの熱狂の瞬間をカメラに収めた。
「W杯で勝ったんや!!」
決勝トーナメントからは、韓国に移動。韓国はイタリア・スペインとヨーロッパの列強を打ち破り、アジア初のベスト4進出を果たした。
「強いな韓国!!日本もここまで行って欲しかったな…。」
快進撃に湧く韓国。ソウルで韓国人の女子達に逆ナンされ、居酒屋でホンオフェを食べて悶絶した。
「臭ぇ!!!」

2003年 白血病にかかり、半年間入院。復帰後、福岡の芸能事務所とコラボし、九州でグラビア撮影。福岡でトラックに撥ねられ、重傷を負い、病院で年越し。
「曙VSボブ・サップとか熱いな!!」

2004年 夏にアジアカップとグラビア撮影で、中国と香港を駆け回った。重慶・済南・北京で反日行為に晒されながらも、日本の快進撃をカメラに収めた。
「川口スゲぇ!!!」
「やったー!!連覇や!!」
中国・香港のグラビアアイドルを撮影し、セクシーショットを収め、現地の観光も楽しんだ。
「飲茶は、落ち着くな。」
「看板いっぱいのネイザンロード!!駆け抜けろ~!!痛ぇ!!」

2005年 念願の単独で写真集刊行。Strawberry Filmでは、長崎・沖縄・香港・ベトナム・タイで撮影。初めてのベトナムとタイは、グルメに舌鼓を打った。
「フォー美味いわ。」
「カオニャオマムアンって、マンゴーで飯が進むかいな…。飯甘っ!!」

アジアで大冒険し、女子中高生の水着姿やヌードを撮影してきた。写真集も出せた。入社してからの10年は充実していた。と、同時にどこかマンネリを感じていた。 現状に満足している節があるな、と感じた。この日の仕事が終わり、喜美子と夕食。
「何かな。俺、現状に満足している節があるかもしれん。」
「いきなり何ば言いよっとね、薫君?」
突然の一言に喜美子も驚く。薫は、昼休みに回想したことを話す。
「なるほどね。冒険は必要かもしれんと。」
喜美子も共感してくれた。
「もうウチも薫君も30代やけん。ここで環境を変える程のチャレンジが必要になると思うんよ。」
「せやろ?良かった。喜美子も分かってくれて。」
現状にかまけてはいけない。環境を変える程のチャレンジが必要になってくると、お互い思っていたようだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...