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第3章 back to school 青春の甘い楽園

第51話 霊魂☆バトル

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   福岡有数の心霊スポット 旧犬鳴トンネルでの霊魂バトルが始まった。雅文・雫・玲奈と光輝・悠・京子の3対3の戦い、雅文は、動くより先に考えを張り巡らした。
(光輝はナイフ使い、アイツは改造エアガンでどうにかなる。京子は呪いの使い手、骸骨も霊力で動いとる。破壊したら何とかなるな。悠の霊魂操る能力は厄介やな…。まずは…。)
「まずは、お前やけん!死ねぇ!!」
ナイフ使いの光輝が、雅文目掛けてナイフ二刀流で、襲撃してきた。ナイフからは微かに、スパイシーな香りがした。
「フッ…。そのナイフ、唐辛子塗っとるやろ?切り傷をつけた上に、唐辛子が染み込んで二重苦になるっていう算段やな…。」
攻撃を避けた上に、そこまで見抜いた雅文。だが、間髪入れずに、ガシャドクロが襲ってくる。
「アハハハ!!行くけん!ガシャドクロ!」
「やぁ!!」
雫が助走をつけて、ガシャドクロに飛び蹴りをかました。しかし、ガシャドクロはすぐに立ち上がった。
「何やコイツ…。「「シャーマンキング」」におったな、こんな骸骨のバケモン…。」
「雫さん、多分コイツは骨そのものを破壊せぇへんと止まらへんと思います。」
一方で、玲奈は京子が手薄になっている所を突いて、攻撃を仕掛ける。
「ウチもおること、忘れたらアカンで!」
「ここまで近づいてくるとは、チャンスやけんね。」
京子は早業で、玲奈の髪の毛を1本抜き取り、藁人形に入れた。
「フフフ、まずは金縛りに遭ってもらうけん。」
藁人形の両足に、五寸釘を打つと、玲奈も動けなくなる。
「何やコレ?!動けへん!!」
「フフフ。これが呪いの力やけん。」

   その頃、心霊探偵 桐原孝太郎は、持ち前の霊能力を駆使して、幹部3人と対峙していた。
「貴様も、一端の霊能力ば使えると?」
「ああ、私は心霊探偵やけん。霊を仲間にするのも、朝飯前と。」
幹部の1人で、黒髪ロングの胸にサラシを巻き、黒い特攻服に身を包んだ彼女の名は、大牟田麻帆。グループでの肩書は、呪術師。霊感が強く、霊を召喚して戦わせることも可能。彼女とは、幽霊同士の戦いという形で応戦し、もう1人の幹部とは、自分自身で戦う。
「へへへへへへ、お前なんか、この釘バットで叩き潰してやるっちゃん!」
黒いヘルメットを被り、スカジャンを羽織った大男は、城太郎。グループでの肩書は、クラッシャー。粗暴なならず者で、釘バットで、相手を滅多打ちにする。
「オイオイ、2人共。俺の出番ば残してほしか。」
茶髪で黒いジャージを着た男。彼の名は、加藤博昭。グループでの肩書は、チェーンマスター。チェーンを振り回して攻撃する。ここまでは2人の戦いを、座って見ている。
(あのチェーンの男、恐らく只者やなか。しかし、この2人も手強い。何とか、由梨ちゃんを奪還せねば…。)
トンネル内では、総長・福崎、そして、由梨が睨み合っていた。
「どういうつもりやけん。」
「フフフ、由梨ちゃ~ん、会いたかったと。」
気持ちの悪い甘ったるい声をかけられ、トンネルの陰気さと相まって、由梨は顔をしかめる。
(何ば言いよっと…。気持ち悪い奴やけん…。)
「俺様は、福岡爆徒の総長 小倉隼人。ハッハッハッ!どうや、俺の女にしてやっても良かよ?」
金髪の大柄な男は、福岡爆徒総長 小倉隼人。別名 金ゴリラ。怪力の持ち主で、メリケンサックをつけてのパンチは殺人技である。由梨の顎をクイっとして、舐めるように見つめて囁く。
「触るな、このクズ…。」
由梨は臆することなく、彼を睨み付けて毒づいた。その様子を見て、福崎が前に出た。
「フフフ、誰に口ば聞いとると!!ゴラァ!!」
由梨の頬にフックを食らわし、バランスを崩した所で、みぞおちに膝蹴りを入れる。
「ゲホッ!ゲホッ!何ばしよっとね…。」
「フフフ、由梨ちゃん、悪い話やなか。福岡爆徒と俺は手を組んどるけん。このまま六凶の傘下に入って、裏社会の天下を獲るけん。その時には、由梨ちゃんは俺の嫁、いや、裏社会のクイーンにしてやると。どうや、由梨ちゃん。俺と組んで、一緒に夢見ると?」 
六凶と聞いて、由梨の表情が曇る。六凶は、裏社会の列強とも言われる反社会的勢力で、6ついることから、そう呼ばれる。
「嫌やけん!反社会的勢力とは組まんと!」
「ほう、言うとね。金ゴリラ、1発やったれ。」
小倉が前に出ると、メリケンサックをはめた右手で強烈なフックをお見舞いし、横腹に回し蹴りを食らわした。
「ゲホッ!ハァハァ…。そんな女の子に暴力ば振るうようなヤツの、女になんかならんと!」
「フフフ、いつまで持つか?その威勢…。」

    ゴーストギャルズに苦戦していた雅文達の下に、謎のバイクが1台現れた。
「誰や?」
バイクから下りた男は、ヘルメットを外して荷台にしまい、鍵をかけた。入念に準備体操をしているスポーツ刈りの彼は、長身で黄色いジャンパーを着て、黒い長ズボンを履いている。
「さて、行くとね。」
そう言うと、助走をつけて、光輝に挨拶代わりのドロップキックを食らわした。
「フンッ!!」
「どぅぐし!!!」
光輝を1発KOさせ、トンネルに向かって走っていった。
「おし、やりやすくなったな。」
「何ば言いよっとね、このスカシ野郎!直接ハンマーで、頭蓋骨砕くと!」
雅文目掛けて、ハンマーで襲いかかる京子をかわすと、ガシャドクロの腕を掴んで、身代わりにした。ハンマーはガシャドクロの頭蓋骨に命中、頭を砕かれたガシャドクロはバラバラに崩れ落ちた。
「ガシャドクロー!!!」
その隙に、藁人形を奪い取り、釘を引っこ抜くと、玲奈の金縛りが解けた。
「よし、動ける。さて、やってくれたなぁ?アンタァ…。」
玲奈は、京子の蝋燭を奪い、背中を踏みつけ、溶けた蝋を首筋に垂らした。
「熱っ!!熱っ!!ドSと!?」
「お仕置き。玲奈ちゃんって、呼んでぇ🖤」
雫は、神社で貰った妖封じのお札を、悠の額に貼り付け、霊能力を封じた所で腕を捻った。
「痛い!痛い!ギブやけん!!」
ゴーストギャルズを弱らせた所で、雅文が前に出る。
「私は、女の子に銃は向けへん。2人共、もうこんな事は終わりにしような?これを聞いてな。」
雅文はポケットから、盗聴器を取り出し、福崎と福岡爆徒の幹部との会話を聞かせた。
「えっ…。最初から捨てるつもりやったと?」
「許さんと…。京子ちゃん、あのスカシ野郎に一撃食らわしたるけん、一緒にやると?」
裏切りに気づいた2人は、怒りに震えた。
「よし、一緒に戦おうか!」
「やってやるけん!!」

   黄色いジャンパーの男は、福岡爆徒の幹部の下に駆け寄った。霊能力と腕力の1対2で戦っている桐原を尻目に、チェーンマスターを攻撃する。
「誰と!!」
「ちょっと、その向こうに用があるけん。どいて欲しか。」
「ハッハッハッ!俺が誰か知らんようやけんね?このチェーンで締め上げると!」
チェーンで襲いかかったが、それを難なくかわし、助走をつけて、首にレッグラリアットを食らわした。
「ぐわぁ!!!」
「さて、由梨は無事とね。」
そこに雅文がエアガンで威嚇射撃をして、登場した。
「そこまでや、福岡爆徒。お前らはこの娘達を騙してたんやな?」
「ハァ?何ば言いよっとね!」
盗聴器を取り出し、盗聴した会話を最大の音量で再生する。場所は、福崎の店の裏側。福崎と福岡爆徒の総長・幹部達のやり取りである。

「あの探偵のガキ、舐めたマネしてくれたと。まぁ、俺の目的は由梨やけん。由梨ちゃんを俺のモノにしたら、それで良か。」
「へへへ、福崎さん。俺達を六凶の傘下に入れてくれると?」
「あぁ、金ゴリラ。六凶で言うたら、「「百鬼夜行之衆」」の傘下が良かよ。俺もホスト以外の闇営業で裏金は、腐るほどあるけん。」
「「「百鬼夜行之衆」」、フフフ、私の霊能力があれば、そこで充分戦力になれると。それと、その探偵達がもし向かってきたら、どうするとね?」
「フフフ、その時はな。あの手下の3人を身代わりにしたら良かよ。フフフ、最終的に由梨ちゃんを俺のモノにして、アイツらブチ殺して、これは暴走族の抗争で、勝手に死んだ、ということにしたら良か。フフフ、あのガキ共、利用されてるとも知らずにな!!!」

悪事をバラされ、福岡爆徒の総長・幹部は青ざめる。トンネルの中から、由梨を連れて、総長と福崎が出てきた。
「フフフ、バレたらしゃあない。オイ!お前ら3人には死んでもらうと。」
「仲間裏切るやなんて、アンタは本物のクズやけんね!!」
幹部2人が、雅文達に襲いかかる。黄色いジャンパーの男と桐原は、2人を任せて、総長と福崎の下に駆け寄る。日本刀と釘バットで攻撃してきたので、桐原は先に雅文達の援護をする。
「フフフ、ゴーストギャルズが粋った所で、私の悪霊には敵わんとね!!」
麻帆は、霊能力を駆使して、周囲の地縛霊や悪霊を呼び寄せ、日本刀に憑依させた。
「何か、幽☆遊☆白書みたいけん!」
「フフフ、ゴーストギャルズ。アンタら、秘密を知ってしもうたと、地獄へ葬り去るとね。」
不気味な笑みを浮かべる彼女の背後に、無数の怨霊がさ迷う。本気で、ゴーストギャルズの2人を殺そうとしているのを感じ取った桐原は、間に入った。
「私は、心霊探偵 桐原孝太郎。悪霊如きで、私を殺そうとするのは不可能やけん。」
「フフフ、悪霊舐めたらアカンよ。心霊探偵って、幽☆遊☆白書かいな!霊丸出せんとね?黒竜波出したら、アンタは灰やけんね。」
「フフ、心霊探偵として呼ばれとると。ありがとうございます。」
桐原は、右手を出して合掌の形にし、数珠をかけた。そして、精神統一をして、経を唱えた。
「フフフ、今度は、シャーマンキングのアンナの真似事と?アンタ、週刊少年ジャンプ好きやけんね。まぁ、まずはアンタから死ねぇ!!」
日本刀を一振りすると、悪霊が解き放たれ、桐原に襲いかかる。だが、桐原は落ち着き払い、
「南無仏、南無阿弥陀仏。悪霊、大成仏!!」
と、叫び、悪霊達を成仏させた。日本刀も砕け散った。
「ウソやん!!!」
呆気に取られる麻帆に、ゴーストギャルズが駆け寄り、髪の毛を抜き取って、藁人形に入れた。
「フフフ、今度はこっちの番やけんね!」
藁人形に釘を打ち、金縛りにかけた。
「うう、動けん!アンタら、こんなんして、タダで済む思うな!!」
毒づく麻帆に、京子はハンマーを振り回して、
「フフフ、麻帆さん。地獄へ墜ちて貰います。」
と言い返し、藁人形の顔面をハンマーでぶっ叩く。呪いの原理で、本人もハンマーで叩かれるダメージを受けた。
「ブハァ!!!!!」
麻帆をノックアウトし、今度は雅文達が城太郎に襲いかかる。
「まずは、俺からやけん!必殺、ナイフボンバー!!」
ナイフ使いの光輝が、ナイフを投げつける。
「痛ぇ!!」
城太郎に刺さり、唐辛子のダメージも受ける。雅文は改造エアガンを構え、殺傷能力を増した弾丸を込める。
「唐辛子、ヒリヒリすると。テメェ…。この野郎…。」
怒りに震え、釘バットを持って立ち上がる。
「よし、掃除したるわ…。」
巧みな2丁拳銃使いで、城太郎を狙い撃ちにする。弱った所で、同じように京子が藁人形で呪い、ハンマーで叩く。
「ゴァァ!!!!!」
幹部を2人共KOし、桐原は警察に通報した。旧犬鳴トンネルを舞台にした、霊魂バトルも最終局面を迎えた。
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