上 下
61 / 186
第3章 back to school 青春の甘い楽園

第60話 2on1デート

しおりを挟む
    雅文は、里香から提案された由香里とのダブルデートで三宮に繰り出した。阪急電鉄 神戸三宮駅から南下し、京町通を進む。旧居留地はどこかレトロとモダンが合わさったような雰囲気がある。
「オシャレやな。」
「かつて、ここに外国人が住んでたんよ。」
由香里のゴスロリファッションが、街並みに映える。神戸市立博物館を通り、橋を渡ると、目的地のAtoaに到着した。Atoaは2021年に開館した都市型アクアリウムで、4階建て。約100種類もの生物が展示されている。
「ここが、Atoa。」
「広いな。」
Atoaの対岸には、ハーバーランドとメリケンパークが見える。中に入ると、自然の中に入ったような感覚になる。一際、印象的なものが、3階の「MIYABI」(雅)と呼ばれるエリアで、これは日本庭園をモチーフにしており、ガラス張りの床の下では、錦鯉が優雅に泳いでいる。
「古き良き日本の美と、金魚に鯉。水族館とジャポニズムの融合やな。」
「ランチュウ・東錦・出目金と金魚いっぱいおる~。」
同じく3階にある、奇跡の惑星「PLANETS」は大きなガラス張りの球体の中に、数種類の魚が泳ぎ、プラネタリウムのようにライトアップされる。
「うわー、すごい…。」
「神秘的…。」
「まるで、生命の胎動のようやな。」
奇跡の惑星というタイトルで、恐らく地球を表した球体、生命が誕生した海とかかっており、どこか神秘的である。
都市型アクアリウムを満喫した3人は、Atoaを後にし、京町通を北上。居留地を抜けると、赤い大きな門がお出迎え。
「あの向こう、中国?」
「由香里は来たこと無いんや。ここは南京町っていう中華街。」
南京町は、横浜・長崎と並ぶ日本3大チャイナタウンである。門をくぐって中に入る。

 門をくぐると、所狭しと出店が建ち並び、食べ歩きには持ってこいである。
「南京町に来たら、ここは外せへんな。」
そう言うと、向かったのは老祥記。大正時代に創業した豚まん発祥の店と言われている。豚まんは1個90円とお買い得。ここで豚まんを3個(90×3 270円)買う。
「雅文さん、男気じゃんけんしませんか?」
「男気じゃんけん、あぁ!とんねるずでやってたヤツね!」
「勝った人が払うんやね?」
雅文の号令で始まる。
「行くぞ、せーの、男気じゃんけん、じゃんけんホイ!!」
雅文と里香はパーを出し、由香里はチョキを出した。
「じゃあ、ここは由香里が大盤振る舞いするで。」
由香里に豚まん3個を買ってもらい、中央広場でいただく。
「熱っ…。わー、めっちゃジューシー。」
「出来立ては美味いな。」
老祥記の豚まんは、売り切れたら営業終了。南京町に来たら、ここはオススメ。次は、元祖ぎょうざ苑へ向かう。ここは、昭和26年(1951年)創業の老舗。店内には、多くの有名人のサインが掲げられている。
「サインがいっぱいある。」
「ここは、老舗やからね。」
ここでは、雅文がお支払。名物の餃子を3種類(焼餃子・水餃子・揚げ餃子430×3 1290円)をいただく。
「ここではね、味噌ダレでいただくのがオススメ。」
餃子に味噌ダレをつけていただく。一味違った味わいになる。
「美味しい!」
「3種同時に食べられるとか、めっちゃお得~!」
餃子に舌鼓を打ち、他のお店も食べ歩いて南京町を満喫した。

    腹を満たした後は、ハーバーランドへ移動。神戸市の象徴 ポートタワーやmosaic・umieなどが見える。
「この赤い塔が、神戸市のランドマーク ポートタワーや。」
「通天閣より高いやん…。」
ハーバーランドのmosaicの横にある大観覧車に乗る。デートで定番のシチュエーションである。雅文・里香・由香里が向かい合う形で座り、ゆっくりと観覧車は回る。料金は大人1人800円で、各人で払った。ゆったり回る観覧車、窓からはハーバーランド・メリケンパークが一望出来る。思春期の高校生のガールズトークに雅文も加わる。
「こうして、雅文さんとデートするとか想像出来ひんかった。」
「あぁ、初めて出会ったのは、探偵事務所やったからね。」
遡ること、2月半ば。里香が探偵事務所に来て、由香里がJKビジネスをしており、そこから脱却して欲しいので、実態調査を依頼したことから関係が始まった。
「まさか、里香が探偵に依頼したなんて思わんかった。その探偵が、雅文さんで「「えっ?探偵って、こんなにイケメンなんや~。」」って、ちょっと一目惚れして…。」
「由香里ちゃんに会うたのが、JKリフレの個室やからね。しかも、私は由香里ちゃんのパンツを拝見しちゃったからね…。」
潜入捜査として、雅文は盗聴器を持参し、JKビジネスの店に行った。そこで由香里を指名し、個室で話をした。由香里はセーラー服のコスプレをし、雅文にパンツを見せた。
「あの時の、パンツの色は覚えとるよ…。純白やったね…。」
「雅文さん、赤くなってる~!」
「てか、由香里、パンツ見せてたん?!」
それから、JKビジネスの恐ろしさを知った由香里は、同じ立場の高校生達に脱却するように働きかけた。
「働きかけたんは偉い。鉄の部屋で寝ている皆を起こしたからね。」
「そこからが壮絶やったね。由香里も戦ったから。」

    雅文達は、KANSAI BLACK PANTHERと組み、大阪に乗り込んで、Golden Fruit一派と戦った。由香里は、Golden Appleの黒服に誘拐され、店主から暴行を受けた。殺されそうになった所に、雅文が駆けつけた。
「悪い、待たせたな…。」
「あの、助けに来てくれた時の雅文さん、カッコ良かった~!」
「由香里、死にかけてたもん。」
その後、Golden Fruit一派を撃破し、由香里と他の高校生達は、JKビジネスから解放された。
「雅文さんは、由香里達の一生のヒーローやからね!!」
「ヒーローやなんて、照れる…。」
「ホンマに、探偵ってカッコいい…。」
思春期の少女に褒められ、雅文は赤面する。観覧車を下りた後は、ハーバーランドを満喫。時刻は、17:00となり、外は暗くなり始めた。ポートタワーもライトアップされ、昼とは違う光景になる。メリケンパークの岸部で、今日のことを振り返る。
「今日はホンマに楽しかった。私自身も、この1年色々あったけど、女子校で2人に出会えて良かった。」
「私も、由香里を助けてくれてありがとう。探偵さんって、ホンマにカッコいいなぁって思った。」
「由香里のために戦ったくれたし、雅文さんは一生、由香里のヒーローやから。これからも由香里のヒーローでおってな?」
2人の言葉を聞いた雅文は、最後にそっと頭を撫でた。それから、阪急電鉄 神戸三宮駅まで見送った。
「今日はありがとうございました。雅文さん、メリークリスマス!」
「冬休みの宿題、やってくださいね。」
「あぁ。宿題しっかりやるよ。じゃあね、Merry Xmas&Happy New Year…。」
2人と分かれた雅文は、独りで路地裏に向かっていく。
「そうや、あの娘にも挨拶しておきたいな。」

     そう言って、雅文が向かったのは、Loft101。バニーガールのいるガールズバーである。ここでは、髑髏城との一件で出会った友梨亜に会いに行く。店内は薄暗く、バニーガールがお出迎え。雅文はカウンター席に着き、ドリンクを注文してくつろぐ。酒が飲めないので、ウーロン茶をちびちび飲む。
「あっ、雅文さん!久しぶりです!」
「あっ、友梨亜ちゃん!久しぶりやね。」
白いレオタードの童顔の女子、この娘が友梨亜である。髑髏城の手下にストーカーされていた所を、雅文に助けてもらった。
「雅文さんは、私の騎士(ナイト)です。」
「私が騎士(ナイト)やったら、君はSexy Rabbitさ。」
(Sexy Rabbit!!私が雅文さんの、ウサちゃんに…。はぁ、ご主人様~!!)
友梨亜は赤面した。雅文はフードメニューでピザとカプレーゼをいただく。本当に恋多き男である。楽しい時間は、あっという間に過ぎ、去り際に友梨亜の頭を撫でた。
「See you my Sexy Rabbit…。」
耳元で呟いた。
(Sexy Rabbit!!ハァンっ…。雅文さん、甘いよ、甘すぎる~!!!)
友梨亜は赤面して、口を押さえた。雅文は店を後にし、夜の三宮を1人歩く。
「Im a Sexy Knight」
しおりを挟む

処理中です...