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第4章 六凶編 VS 百鬼夜行之衆・猛毒獣大陸

第74話 バトルロワイアル

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 雅文達が到着し、駐車場に車を停めてから、三宮センタープラザの入り口に向かった。辺りは騒然としており、Golden Tigerと髑髏城の抗争が始まっていた。時刻は18時。初夏の少し湿った空気が、この戦いの不気味で恐ろしい雰囲気を感じさせる。奴らの手により、阪急電鉄 神戸三宮駅からの連絡通路と商店街に繋がる通路は封鎖され、逃げ遅れた人達は避難が困難になり、抗争に巻き込まれた。
「もう戦いは、始まったんやな…。」
開口一番に重い口調で呟く所長。ここからは地獄の戦場となる。センタープラザ前に、数台のパトカーが来て、警察も現場に駆けつけた。所長は元警察で、県警とも繋がりがあり、数名の刑事とも面識がある。
「派手な戦争やな…。」
ハットを被り、静かに呟く男性。彼は、兵庫県警の沖屋雅史警部。冷静沈着で知将として知られている。
「人質も大勢いるようですね。Golden Tigerと髑髏城め、なんて非道なことを!!」 
短髪の彼も同じく、兵庫県警の笹川隆史刑事。熱血漢の行動派である。2人は警察の上司から所長のことを聞いており、互いに協力関係にある。所長が歩み寄り、2人に話しかける。
「やぁ、こんばんは。」
「あ、中村所長、ご無沙汰しております。」
「雅文君。あの時、以来やな。」
「あぁ、岩倉の件ですね。」
話は、この戦いでの作戦となる。奴らは、由香里と友梨亜を人質に三宮センタープラザに立てこもっている。現在地は三宮センタープラザの入り口。戦場となっているのは、ちょうどセンタープラザである。西館にいる可能性もあるが、奴らが行く手を阻む。確認できる戦力では、それぞれ3人ずつ大幹部を擁し、Golden TigerにはG-Tiger5、髑髏城には3・5・6支部の隊長・副隊長計6人と幹部クラスの強者がいる。奴らはそれぞれ組長・大幹部が人質を捕らえた状態で上階に待ち構えており、救出するには、それぞれの幹部と兵士を倒さなければならないということになる。2・3階には連絡通路があり、そこから西館に逃走される可能性もあり、そうなると追いかけるしかない。時間はあまりない。元警察の所長と現役警部の沖屋は迅速に作戦を練り、てきぱきとそれぞれの部下に指示を出す。
「よし、行くぞ!」
「さぁ、我々も行くぞ!」

 その頃、先にセンタープラザ西館に移動していた髑髏城組長 大山田貫爾は3階の事務所を占拠し、友梨亜を監禁していた。副組長と3人の大幹部達は、西館を占領し、フロアの統括本部を乗っ取って、防犯カメラから、一同の動きをモニタリングしていた。
「ハハハハハハハハ、オイ見ろ。友梨亜ちゃんのナイトが来たで。」
「雅文さん!助けに来たんや!」
前のめりになる友梨亜を制し、大山田はニヤニヤしながら毒づく。
「ハハハ、アイツら如きがウチの大幹部に敵うかどうかや…。まぁ、その前に支部の隊長等に潰されるんがオチや。」
センタープラザ1階はファッション関係の店や飲食店が並び、多くの人で賑わっていた。黒いドクロTシャツの連中が髑髏城の兵士で、黄色いTシャツの連中がGolden Tigerの兵士である。警官達は巻き込まれた一般人達を保護し、店の外へと避難させる。
「オイ、アイツらやな!JKビジネス潰したガキ共は!」
Golden Tigerの兵士が、里香に襲い掛かる。そこに雅文がエアガンで狙撃し、軽々と撃破した。
「よし、二手に別れよう。」
ここからは、所長・雫・里香、雅文・美夜子・玲奈の二手に別れて、戦陣を突き進む。

雅文・美夜子・玲奈サイド
サイドからの突破を狙い、飲食店が建ち並ぶエリアを突き進む。そこに共通の敵を見つけたとばかりに、両軍の兵士が襲い掛かる。
「オラァ!」
挨拶代わりに、美夜子は木刀で軽々と3人をなぎ倒し、再度立ち上がった奴には、喉元目掛けて突きをお見舞いした。
「フフ、日本刀やったら、血しぶきが飛ぶわ。まぁ、アンタらの血なんか浴びたくないんやけど。」
「隙ありぃ!」
今度は髑髏城の兵士が襲ってきた。よく見ると、雅文にとっては面識のある2人だった。
「お前らは!?」
「ハハハハハハハハ!忘れたとは言わさへんで~。」
「俺の出番あらへんかったからな。」

    この2人は、昨年の夏、友梨亜をストーカーしていた奴らである。細身の男と小太りの男。細身の男の方は、雅文が撃破し、警察に逮捕してもらった。その後、釈放され、復讐の機会を伺っていたのであろう。
「あー、あの時の連中か…。」
雅文は、記憶の断片を繋ぎ合わせて、結論に至った。
「ハハハハハハ!!!!今回は仕留めてやらぁ!!!」
懐からサバイバルナイフを抜き、雅文に襲いかかる。動きを見極め、攻撃をかわして、チャンスを伺う。一方、小太りの男は玲奈に狙いを定めた。
「お、可愛らしい娘やな?俺が相手や。」
「お兄さん、玲奈のこと舐めたらアカンで。」 
小太りの男は間合いを詰め、パンチを放つが、玲奈は軽くかわした。ゆっくりと背を向けずに、距離を取っていき、奴を誘き寄せる。
「クソォ…。ちょこまかと…。」
玲奈は降伏する素振りを見せる。
「お兄さん、強いわぁ…。玲奈のこと殴らんといてぇ…。降参するから…。」
「ヘッヘッヘ…。じゃあ、大人しくヤられてもらおうか!!」
再び殴りかかろうとしたが、それをかわし、懐から催涙スプレーを出して、顔面にお見舞いした。
「ガァァァァァァァァ!!!!!!!!」
至近距離で目と鼻と口に直撃し、顔を押さえて悶絶する。 
「やるわね、玲奈ちゃん…。」
その様子を見ていた美夜子が、静かに呟いた。褒められて、赤面する玲奈。
「早く離れた方が良いわ。再び立ち上がる。」
ヤツは立ち上がり、玲奈に襲いかかる。
「やってくれたな、ゴラァ!!!!」
「下がって。」
間に入った美夜子は木刀でパンチを防ぎ、強烈な胴を食らわし、最後は胸元に突きをお見舞いした。
「はがぁ!!!」
ヤツはノックアウト。
「ここは戦場。油断は禁物よ。」 
「はい。」

    その頃、雅文は例のストーカーと応戦。攻撃を避け続けることで、相手の体力消耗を狙う。
「クソォ…。さっきから全然当たらへん…。」
「闇雲に攻めるだけやったらアカンで…。」
「舐めんなや、ゴラァ!!!!」
ナイフを振り回してきたが、蹴りでナイフを振り払い、頭を掴んで、鳩尾に3発蹴りを入れた。悶絶した所に、エアガンで眉間を撃った。
「ギィヤァァァァァァ!!!!!!」
眉間を押さえて倒れ込む。
「哀れなストーカーが、一生地獄をさ迷ってろ…。」
このようにして、撃破した手下から順に警官が逮捕するという形で、進撃と後退を繰り返した。
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