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あしらい下手
しおりを挟むリョウが私のそばにいるようになって1ヶ月くらいが経った。
私が男の子と話そうとすると邪魔して来たり、女の子と仲良くしようとしても邪魔するのはちょっとアレだけど、彼氏彼女ごっこはすっかり慣れてしまった。
一部の熱狂的ファンみたいな女子以外は、リョウを半ば諦めているようだ。
リョウの目的としては、成功、だと思う。
向こうには男友達もいるし、女の子からも相変わらず人気がある。だけど、男友達はまだしも、私は友達も出来ない……リョウのことを好きな女の子に睨まれるばかりで。
そこはちょっと不満な点ではある。
ある日、学校帰りに公園でリョウを見かけた。背の高い髪の長くて綺麗な人と一緒だった。
いい雰囲気に見えたのもあり、私はなんとなく声をかけにくくて気づかないふりして帰ろうと思った時、リョウがその女の子を抱きしめ、キスをしているのを見てしまった。
(う、うそ……チューしてる?!)
慌てて私は回れ右しようとしたけど、キスをしているリョウとパチっと目が合った気がした。
逃げるように公園を出て、自宅へ向かう。走ったせいか、胸が激しく脈打って止まらなかった。
家につくと私はすぐに私服に着替え、部屋にこもる。ベッドに寝転がると、腕を額に乗せて目をつぶった。
ーーーーそうだよね。イケメンだもん、彼女じゃなくたってそういうの、するよね?
私はリョウのイメージとは違うリョウを見て、なんだか悲しくなってしまった。リョウは私の中では可愛いというか、エッチなことをするタイプじゃなかったからだ。
チャラい人だったのかな?そんなふうに見えないのに。本当の彼女でもないのに、アレコレと考えてしまった。
でも私、本物の彼女じゃないし、考えても仕方ないよね?
私の思考は、ここに帰結した。
次の日、学校に行くと私はボーっとしていた。昨日のアレを見てから、なんだか異性として意識してしまいそうで、どう反応していいかわからなかった。
ペンケースからシャーペンを取りだし、指先でクルクルとまわす。考え事をするとつい、やってしまう。
「新、おはよ」
顔のすぐ横で、リョウが覗くように挨拶してくる。めっちゃ笑顔だ。
ち、近ーーーー
「おは……よ」
私は昨日のキスシーンを思い出して思わず赤面する。
ああやって女の子とキスとかするから、リョウは体が近いのかと納得してしまう。そんな私をよそにリョウは尻尾を振って机の横でしゃがんでいる。
「ねーねー新。今日帰りさ、見たいDVDがあるんだけど、駅前に一緒に行こうよ~。借りに行きたい」
甘えるように言ってくるリョウに、仕方なくオッケーする。
何というか、断れない。
とほほ、と自分の人あしらいの下手さに崩れ落ちそうだった。
放課後、勉強道具をカバンにしまっていると、リョウがじゃーねーと友達に手を振って私の方に寄って来た。いつものように机の横で座って尻尾を振っている。
「ねぇ新。今日、なんか変じゃなかった? 俺のことなんか避けてない?」
「べ、べつに変な事はないわよ」
「そう? なんか俺が新のとこ来ると、そっぽ向いてばっかだったよね?」
「いやいや、そんな事ないない! 気のせいだよ」
そういうと、最後のペンケースをカバンに詰める。
「じゃあ、DVD屋さんに寄って帰ろ……」
突然、リョウが私の両頬を掴んで自分の方に向けた。
「っ……!」
ちゅ、といきなりのキスだった。周りには誰もいない。唇は柔らかくて、リョウはいい匂いがした。
私はハッとしてリョウを突き飛ばすと、袖で唇を拭いた。
「なななななにすんのよ!」
「キスした。俺の彼女だし」
「ばっ、私はただの彼女のフリだし! それに、昨日リョウ背の高い女の子とキスしてたじゃない!!」
リョウはキョトンとすると、一瞬考えた風だったが、すぐに笑顔に戻った。
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