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夢の中

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 特にする事もないので、テレビでも見よう。

 テレビを見ていると、ドラマとかいう奴で少女が過去に戻るとかいう内容のものがあった。まるで今の自分と合わせてしまい、感慨深い。
 最終的にその少女は元の時間に戻り、元あった生活に戻るというエンディングだった。

 ユーリがなかなか帰ってこない。
 俺は少し睡眠不足で眠くなり、うつらうつらとしてきた。
 ベッドに潜り込んで、ユーリの残り香を感じながら睡魔に打ち負けた。



 俺は夢を見る。
 ユーリの世界に来てしまったが、本当は元の世界に戻りたいのだ。ユーリは俺の世界に対応出来たが、俺はどうしてもこの世界が退屈でたまらない。
 ゆらゆらと重力のない空間で、俺は仰向けにだらんと腕を垂らし身を任せ漂っている。
 すると、暗くて遠い場所からユーリが近づいてくる。

「アリオス様」

 ユーリの鈴のような声に俺は目を覚ます。

「帰りましょう、アリオス様の世界へ」

 何を言ってるんだと思いながら、ユーリの方へぼんやり視線だけ向けると、力の抜けた俺の手を握り締めてくる。
 ユーリの熱が伝わってくる。

「風が来たら帰れます」

 ユーリが言った途端、目の前の無の空間に穴が開き始める。夜の闇の穴だ。
 ビュウゥゥーーーーッと、風が突如強くなる。

 俺の手をユーリが握りしめたまま、俺達はまたその穴の中に吸い込まれて行った。

「キャアァァァァ!」
「グッーーアァァァ!」




     †††



 ゆっくりと瞼を開けると、見慣れた空間だった。
 広い部屋にソファが置いてあり、部屋の隅には華美な花が飾られている。
 俺はベッドから身を起こすと、体をチェックした。
 服が、夢の中の服だった。

「あれは……夢では無かったのか?」

 じゃああの車だとか店だとかテレビだとか、異世界のものだったのか?
 状況が読めない。

「あ、アリオス様ー!!」

 涙目でユーザが目覚めた俺に駆け寄ってくる。

「心配してたんですよ! 庭園で行方不明になって丸一日見つからなくて。見つかったと思ったら、意識不明なんですから!」

 そういえば、ユーリがこの世界へ来た時も、意識がなかったとか言っていたな。

「にしても、随分と地味な服をお召しになってますね?」

 俺の着ている服をみて、ユーザが不思議そうにする。ペタペタと上衣の布を触り、感触をチェックしている。

「不思議な手触りですね。柔らかくて伸びやすい。動きやすそうです」
「そうなんだ。似たような糸さえあれば、開発出来ないかなと思うんだが」
「いいですね。専門のものに尋ねてみます!」
 
 ユーザはすぐにこの部屋を出て行った。
 この世界に戻った途端、商いの話に戻る。やはりこうでなくては。カレーとかいう食べ物も作れたらいいのだが、難しいか?

 しかしユーリ、ユーリは戻っているんだろうか? この屋敷には気配がない。
 後ほどユーザに調べに行ってもらおう。いや、自分で行った方が早いか。

 俺がいつもの服に着替えようとしていたら、突然来客が来たようだった。
 タイミングの悪い……

 仕方なく俺は、着替え後応接室へむかった。
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