異世界への通行料、今なら100円

清杉悠樹

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2 犯人特定かっ!?

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 萌音の驚いたが聞こえたらしく、室内にいた三人全員の視線が集まった。男性が二人に、女性が一人。三人とも萌音より少し年上に見える。
 向こうも急に見知らぬ人間が現れたことに驚いたらしくぎょっとした表情をしている。互いに顔を見合わせたまま、動くことが出来ない。

 室内の様子が、萌音が知ってる普通のオフィスとは明らかに違って見える。
 三人は羽織っている白衣は同じデザインたが、下はスーツではない。随分ラフな格好をしている。研究でもしているのだろうか。
 書類が蓄積し雑然としたデスクが10程ある。それだけならばどこかのオフィスに見えるが、デスクの上にはよく分からない実験道具らしきものがちらほらあり、パソコンを始め、電子機器類が一つも見当たらない。
 窓の形も見慣れたものと違う。古びて見える木枠で出来たガラス窓はレトロ風。外は闇と一緒に木の陰が薄っすらと辛うじて見える。
 それに天井にあるだろう蛍光灯もなく、壁に幾つもの蝋燭が灯されている。だから室内の明かりはオレンジ色っぽい。萌音の知っているLED照明の白い明かりの色とは全然違う。



 えーっと、えーっと。こういう時って、どうすべき?

 こんなに対処に困る場面に遭遇したことが無い。どうすべきか接客サービスのやり方を思い出そうとしても無理だと言える。

 睡眠不足で知らないうちに倒れ夢でも見ているのでなければ、これは現実だと思う。うん。いつの間にか見知らぬ場所に居ましたなんて、私は夢遊病かっ。って、一人突っ込みをしてる場合じゃなーい。

 怪しいものではありません、とか言うべき?自分の意思でここへ来たわけじゃないし。気が付いたらここにいたんだから違うよね。でも、向こうの人からすれば明らかに自分が不自然に現れたと見えただろうし。
 
 萌音は心の中に大量の汗が流れ、精神的に焦りまくっていたが、どう説明すればいいのか分からなくて体は固まったまま前を向いたまま三人を見続けていた。



 私は確かに外にいたはず。それは絶対に間違いない。仕事が終わってアパートに帰ろうとしていたんだよね。その証拠に両手には店から貰ったケーキボックスと、自販機ので買った缶を持っているんだし。

 はっ!! 

 って、そうだよっ、この缶が原因なんじゃない!?

 缶が光り輝くなんてありえない現象が起きた。そして、缶に書かれていた文字はかなり変だった。原因があるとすればこれしか思い当たらないと萌音は確信し、左手に持っていた当たりの缶を明るい室内の中、もう一度缶に書かれていた文字を確かめようと目の前に近づけた。

「あっ!それっ俺が作ったヤツっ!」

 ナヌっ!?これを作ったヤツがいるだとっ!?

 聞き捨てならんっ、どこのどいつだ、こんな変なものを作った重宝人は!?

 一体何をどうすれば、アパート近くからこんなところに来たのか分からないが、誰のせいだとはっきり分かるのであれば有難い。後で犯人に慰謝料請求してやるっ。
 息を荒くしつつ前を見れば背の高い男の人が萌音の手にしている缶を指差している。三人の内の一人から大きな声で叫び声をあげたらしい。萌音は缶と指を差したままの男の人を交互に見た。

「何っ!?ジェラルド、お前まさか、また許可もなく勝手に新しい魔法を試したんじゃないだろうなっ!?」

 今度は女の人が缶を作ったと思われる人に抗議の声を上げた。

「えっ?えーっと、そのー・・・」
「やっぱりかっ!!最近影でコソコソおかしな行動してると思ったら、お前はまたっ」
 心当たりがありまくるジェラルドと呼ばれた男の人は目を泳がせている。どうやらこの男が犯人で間違いがないらしい。こんなに早くに犯人が見つかってよかった。
 よしっ、請求相手の顔はばっちり覚えた。
「バラデュール所長。落ち着いてください、そんなに大声を出すと血圧上がりますよ。これで何度目でしょうね。、ジェラルド・ブルグスミューラー。流石にそろそろ魔術研究所の退団も近いんじゃないですか?」
 もう一人の男の人は実に冷静に女性を宥めると、犯人には冷徹な言葉を投げている。
「やめてくれ、デヴィッド次長。あんたに言われると現実になりそうだ」
 どうやら今回の犯人であるジェラルドは以前にも何度も問題を起こしているらしい。
 
 ・・・ちょっと。そろそろ仲間内で揉めてないでこっちのことも少しは気にしてくれませんかね?

「どーでもいいけど、誰でもいいから私に現状を説明してほしーんですケド!?」

 自分にはその資格が大いにあるはずだと萌音は胸を張って言い切った。
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