4 / 6
4 少しは反省しろーっ
しおりを挟む
「―――で、モエさんは、仕事帰りに飲み物を買って、その缶を引き当てた、と。それで何が当たったのか確かめようとしたら、いつの間にかここへ来ていた。間違いはないですか?」
ここへとたどり着いた大体の説明をした萌音にバラデュール室長さんが確認してきた。
「はい」
「そうですか。やはりジェラルドの独断犯行ですか・・・」
罪を明らかにされた張本人は、言い逃れが出来ないからか椅子に座ったまま肩身を狭くしている。大の男がだんまりとなって小さくなってるのは、なんだか可愛かもなんて思ったのに。
「お言葉ですがバラデュール室長。一応断っておくが、前もって缶に説明文は記載したのだから、同意を得てこちらの世界に来たことは間違いない」
何を思ったのか元凶は急に強気に出やがった。
ムカっ!
「はぁっ!?記載っていったって、あんな適当な説明文。あれだけで商品説明が完全だなんて言わせない。ふざけんな?あんな説明不足過ぎる不良品、誰も内容を把握出来るわけないじゃない。そんな理屈が通るわけないでしょーが!」
あっ。思わず本音がでちゃった。大声と共に睨んじゃったよ。ジェラルドさんを。
決めた。心の中だけなら「さん」も付けなくていいか。ジェラルドめ、少しは反省してるのかと思ったのに、全然かよ。
いきなり怒り出されたものだから年下相手にもちょっとびびったらしい。後ろに下がった椅子の音が鳴り響いた。バラデュールさんと、デヴィッドさんはというと、やや引きつっている。
・・・やっぱ声がデカすぎましたかね?すみませーん・・・。
萌音は二人にへらりと愛想笑いを返しておいた。
でも、今ので分かった。ジェラルドは図体はデカいが案外小心者だ。
「とにかくっ!連日の超過勤務で疲れてるんです。早く帰って休みたいんです。明後日にはオーダーリクエストのバースディケーキを作る大事な予定があるんです。一刻も早く元の世界へ返してくださいよ」
今度はきちんと声のトーンも抑えて意見を言った。こんなところで貴重な時間を潰すなんて勿体ないなくてしょうがない。
ああもう早く布団に横になりたいのにっ!
久しぶりに自宅へ帰れると浮かれすぎていたのがいけないのか。職場ではほんの少ししか仮眠を取ることが出来なかったから、マジでマイ布団で時間を気にすることなく、まったり、ぐっすり、どっぷりと今すぐにでも寝たいのだ。
うっかり気を抜けば今すぐにでもこの場で眠れてしまいそうだけど、こんな訳の分からない異世界でうっかりと寝てしまおうものなら後が怖い。何をされるのかと考えただけで震えが走りそうだ。
目が覚めたら全部が夢オチでもなさそうだし。
それに大事な仕事が入っていることもある。
先日お母さんと一緒に来てくれた五才の女の子のバースディケーキを作るという仕事。
レンタルで見たのか、ケーブルで再放送されていたのかまでは分からないが、その女の子が最近大好きになったというアニメにハマったキャラものをケーキに描くことになっているのだ。
小さな子が一生懸命こんなケーキが食べたいのっ!ときらっきらな目をして注文を受けた時の感動ったら。もー、その姿が可愛くて可愛くて。
お姉ーさん、頑張って作るからね!と、女の子と約束をしたのだ。
病欠や不意の怪我などで仕事が出来ない時は、同僚たちがフォローしてくれることは分かっているが、自分が女の子との約束を守りたいのだ。
仕事をうけてから、そのアニメの事を萌音は調べなおした。アニメ自体は知っていたし、見たこともあった。
ただ、家に参考となるイラストが無かったので、ネットでも調べつつ、友達から本を数冊借りた。
実はアニメの原作者が専門学校の頃のからの友達である橘奈々(たちばななな)ちゃんの旦那さんだというのを知っていたから、彼女に連絡をして本家本元から本を借りたのだ。お陰で予習はバッチリだ。
ケーキの予約をしに来てくれた時の女の子のキラキラと輝かせていた目を涙で曇らせたくない。きっと楽しみにしてくれている筈だから。
ケーキを見て笑顔を見せてくれることろを想像して、絶対自分が作りたいと改めて強く思う。
こんな異世界へ飛ばされてました。なんて理由で仕事が出来ませんでしたなんて、絶対にしたくない。
―――それなのに。
「無理だ。異世界からこの世界へと移転する方法は考えていたから成功出来たが、帰すことは全く考えてなかったから分からない。君を帰さなくてはならないことは分かってはいるんだが。異世界への興味がないわけじゃないが、こうして呼べたことに満足してしまって、今は魔法構築の意欲が湧かない」
ジェラルドは、・・・もう名前も言わなくていいか。馬鹿は飄々と言いやがった。
ぶっちーん!
全員に何かが切れた音が聞こえた。
「ふっざけるなぁーっっっっっ!」
ここへとたどり着いた大体の説明をした萌音にバラデュール室長さんが確認してきた。
「はい」
「そうですか。やはりジェラルドの独断犯行ですか・・・」
罪を明らかにされた張本人は、言い逃れが出来ないからか椅子に座ったまま肩身を狭くしている。大の男がだんまりとなって小さくなってるのは、なんだか可愛かもなんて思ったのに。
「お言葉ですがバラデュール室長。一応断っておくが、前もって缶に説明文は記載したのだから、同意を得てこちらの世界に来たことは間違いない」
何を思ったのか元凶は急に強気に出やがった。
ムカっ!
「はぁっ!?記載っていったって、あんな適当な説明文。あれだけで商品説明が完全だなんて言わせない。ふざけんな?あんな説明不足過ぎる不良品、誰も内容を把握出来るわけないじゃない。そんな理屈が通るわけないでしょーが!」
あっ。思わず本音がでちゃった。大声と共に睨んじゃったよ。ジェラルドさんを。
決めた。心の中だけなら「さん」も付けなくていいか。ジェラルドめ、少しは反省してるのかと思ったのに、全然かよ。
いきなり怒り出されたものだから年下相手にもちょっとびびったらしい。後ろに下がった椅子の音が鳴り響いた。バラデュールさんと、デヴィッドさんはというと、やや引きつっている。
・・・やっぱ声がデカすぎましたかね?すみませーん・・・。
萌音は二人にへらりと愛想笑いを返しておいた。
でも、今ので分かった。ジェラルドは図体はデカいが案外小心者だ。
「とにかくっ!連日の超過勤務で疲れてるんです。早く帰って休みたいんです。明後日にはオーダーリクエストのバースディケーキを作る大事な予定があるんです。一刻も早く元の世界へ返してくださいよ」
今度はきちんと声のトーンも抑えて意見を言った。こんなところで貴重な時間を潰すなんて勿体ないなくてしょうがない。
ああもう早く布団に横になりたいのにっ!
久しぶりに自宅へ帰れると浮かれすぎていたのがいけないのか。職場ではほんの少ししか仮眠を取ることが出来なかったから、マジでマイ布団で時間を気にすることなく、まったり、ぐっすり、どっぷりと今すぐにでも寝たいのだ。
うっかり気を抜けば今すぐにでもこの場で眠れてしまいそうだけど、こんな訳の分からない異世界でうっかりと寝てしまおうものなら後が怖い。何をされるのかと考えただけで震えが走りそうだ。
目が覚めたら全部が夢オチでもなさそうだし。
それに大事な仕事が入っていることもある。
先日お母さんと一緒に来てくれた五才の女の子のバースディケーキを作るという仕事。
レンタルで見たのか、ケーブルで再放送されていたのかまでは分からないが、その女の子が最近大好きになったというアニメにハマったキャラものをケーキに描くことになっているのだ。
小さな子が一生懸命こんなケーキが食べたいのっ!ときらっきらな目をして注文を受けた時の感動ったら。もー、その姿が可愛くて可愛くて。
お姉ーさん、頑張って作るからね!と、女の子と約束をしたのだ。
病欠や不意の怪我などで仕事が出来ない時は、同僚たちがフォローしてくれることは分かっているが、自分が女の子との約束を守りたいのだ。
仕事をうけてから、そのアニメの事を萌音は調べなおした。アニメ自体は知っていたし、見たこともあった。
ただ、家に参考となるイラストが無かったので、ネットでも調べつつ、友達から本を数冊借りた。
実はアニメの原作者が専門学校の頃のからの友達である橘奈々(たちばななな)ちゃんの旦那さんだというのを知っていたから、彼女に連絡をして本家本元から本を借りたのだ。お陰で予習はバッチリだ。
ケーキの予約をしに来てくれた時の女の子のキラキラと輝かせていた目を涙で曇らせたくない。きっと楽しみにしてくれている筈だから。
ケーキを見て笑顔を見せてくれることろを想像して、絶対自分が作りたいと改めて強く思う。
こんな異世界へ飛ばされてました。なんて理由で仕事が出来ませんでしたなんて、絶対にしたくない。
―――それなのに。
「無理だ。異世界からこの世界へと移転する方法は考えていたから成功出来たが、帰すことは全く考えてなかったから分からない。君を帰さなくてはならないことは分かってはいるんだが。異世界への興味がないわけじゃないが、こうして呼べたことに満足してしまって、今は魔法構築の意欲が湧かない」
ジェラルドは、・・・もう名前も言わなくていいか。馬鹿は飄々と言いやがった。
ぶっちーん!
全員に何かが切れた音が聞こえた。
「ふっざけるなぁーっっっっっ!」
0
あなたにおすすめの小説
狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。
汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。
元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。
与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。
本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。
人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。
そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。
「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」
戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。
誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。
やわらかな人肌と、眠れない心。
静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。
[こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
好きすぎます!※殿下ではなく、殿下の騎獣が
和島逆
恋愛
「ずっと……お慕い申し上げておりました」
エヴェリーナは伯爵令嬢でありながら、飛空騎士団の騎獣世話係を目指す。たとえ思いが叶わずとも、大好きな相手の側にいるために。
けれど騎士団長であり王弟でもあるジェラルドは、自他ともに認める女嫌い。エヴェリーナの告白を冷たく切り捨てる。
「エヴェリーナ嬢。あいにくだが」
「心よりお慕いしております。大好きなのです。殿下の騎獣──……ライオネル様のことが!」
──エヴェリーナのお目当ては、ジェラルドではなく獅子の騎獣ライオネルだったのだ。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
黒騎士団の娼婦
星森
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。
異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。
頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。
煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。
誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。
「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」
※本作はAIとの共同制作作品です。
※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる