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初夜 ★

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 フォルクハルトに導かれるまま隣室へと入ると、頬に長い指が触れた。剣を握る彼の指に一切の記憶はないにも関わらず、優しくも遠慮がちな触れ方はひどく懐かしい。
 飲んだばかりの秘薬は体格や時間、二人の関係性を考慮しても、互いにまだ効果を発揮するに至っていない。
 にも関わらず、エルゼの頬は既に熱く、心臓は破裂してしまいそうなほど速く動いていた。

「エル……好きだ」
「?! ず、随分素直ね」
 突然の真っ直ぐな言葉につい、エルゼは可愛げのない返事を返してしまう。
 色々と性急すぎないか……と続けて文句を言って照れ隠しをしておきたいところだが。依頼の完遂はエルゼの信条。フォルクハルトと側近らとの関係や王子夫妻への恩もある。
 それに一時前まで、見ず知らずの男に同衾の協力を仰ごうとしていた性急な人間が言える台詞でもないだろう。
「フォルは素直さの切り替えが……昔からバランス悪いというか」
 羞恥心を持て余したエルゼが、訳のわからぬ悪態をつき俯くと、頭上から苦笑が漏れた。

「なら、ずっと素直になろうか?」
「それはもうフォルじゃないけど……フォルはフォルで、そのままで良いのだけど」

 エルゼの煮えきらぬ言葉にフォルクハルトの苦笑は満面の笑みに、間もなくして艶を含んだ微笑へと変わる。
 額に柔らかな感触が降ったかと思うと、エルゼは軽々と抱き上げられ、ベッドへと運ばれる。魔法による光の粒が舞うと部屋の灯りが落ち、足元の淡い灯りと窓から降り注ぐ月光のみが残った。

「フォル……」
 流れるように覆い被さり、自らの上着のボタンを外し始めるフォルクハルトにエルゼは真っ赤になってしまう。
 熱っぽい眼差しを向けられるのも抱き締められるのも初めてではないが、この先の事はまだ経験のない世界。互いに明確な意思を持って同じベッドを使うのも初めてならば、転倒以外で彼に覆い被さられるのも、彼の素肌をまじまじと見るのも初めてである。

「可愛い妻にそのまま好きにして良いって言われたんで」
 シャツをも脱ぎ捨て、フォルクハルトはにこりと微笑む。
 眼前にさらされた体躯はたくましく、エルゼの想像以上に艶めかしい。
「いっ、言ってな……くもないけど! その、妻ってまだ……とっ、とにかく節度は守って……っ」
「ああ」
 言い終わる前に、エルゼの両手にフォルクハルトのそれが重なった。エルゼの反応を堪能するかの如く余裕のある艶笑とは裏腹に、両の手の力は弱くない。
 薄明かりの中で黄金色の瞳は煌めいていた。

「エル、口付けても良い?」
「い、良いに決まってるでしょう⁈」
 緊張故の情緒にかける返答になってしまったが、フォルクハルトは口元を手の甲で押え、肩を小刻みに揺らして笑うばかり。気にする様子はない。

「そんなにおかしい?!」
「ああ。変わってないなと思ってさ」
「フォルと違って私は数年で変われるほど器用じゃないもの」
「そんなに俺、変わった?」
 軽口に似合わぬ悲しげな色をフォルクハルトの笑みに見た気がして、エルゼの胸はぎゅぅと苦しくなる。
(変わったわ……色々と。びっくりするくらい。でも……)

「……まあ、そうね。私を揶揄う技術に磨きがかかったと言わざるを得ないわね」
 エルゼはすねたフリをして、頬を膨らませる訳にもいかずに鼻を鳴らした。
 おそらく彼の生真面目さも、軽薄な言葉を照れ隠しにするところも、人を寄せ付けぬ美貌に隠れる優しさも、好ましいと思っていたところは変わっていない。変わったであろうところについても、好感こそあれ嫌悪感など抱いていない。けれど、その原因を彼の口から聞くのは耐えがたいので誤魔化しました――とまでの本音は言えない。

 そんなエルゼを全て理解しているのか。
「エルに再会した時にたくさん褒められたかったから」
 フォルクハルトはエルゼの恐怖を吹き飛ばすような満面の笑みで冗談を告げて「今夜もこれからも、もっと。俺の成長を知って貰おうと思ってる」とまで付け足してくる。

 まるで現在も過去も未来も。フォルクハルト自身がエルゼと共に居たいと望んでいる、望んでいた、望んでいくのだと誓うように。

「覚悟して、エル」
「望むところよ……わ、私だって負けないわ! それに貴方の成長だけじゃなくて衰えだって、きちんと見るつもりなんだから……」
 勢い余ってあらぬ方向に話を進めるエルゼに、フォルクハルトは吹き出す。
「それはありがたいな」
 屈託のない無邪気な笑みはやがて、甘く柔らかなそれへ。愛おしげな眼差しがエルゼを捕らえる。

「好きだ。エル。エルの良い雰囲気を緊張で壊す所も。全部。全部、好きだ」
「っ……フォル……私も」
 続きは全て、どちらともわからぬ甘い吐息に変わった。フォルクハルトの唇がエルゼのそれに重ねられる。柔らかな感触を味わうように、甘い唇に溺れるように。フォルクハルトはエルゼに口付ける。
「んっ……あっ……」

 幾度目かの触れ合いを経て、エルゼの下唇を熱い舌が撫でた。ぴくりと肩が揺れてしまったのは驚愕か、快楽の予感に反応してしまったからか。答えを自覚する間もなく、熱いそれは口内へと入り、上顎を撫で、怖気付くエルゼの舌を捕らえてしまう。
 ぞくりと愉悦が背を走り、堪らずエルゼは身を震わせた。
 深く合わさっていた唇が離れて、淫らな銀糸が後を追う。薄闇の中で、欲の灯る黄金色の瞳が見えた。

「薬は安全性だけ報告すれば済むことだから……媚薬の効能とか、良かったところとか、改善した方が良いところは……俺だけに教えて」
 フォルクハルトはエルゼを抱き締め、「報告書で妬きたくない」と頬擦りして甘えてくる。首筋に唇を当て、エルゼの反応を見ながら舐めてくる。
 独占欲を隠さぬその様子は、さながら赤毛の猫。

「もう、んっ……フォルったら……っ」
「エル……ところでこんなに刺激的な格好で……」
 骨ばった左手がエルゼのブラウスのボタンに触れた。異論を唱える間もなく彼の指がボタンを外――すかと思われたが、実際は外さなかった。正しくは外せなかったのだ。
 どうやら当の本人も想定外だったらしい。フォルクハルトは少々バツが悪そうに起き上がると、両手でエルゼのボタンに取り掛かり始める。
「ごめん、こんな筈じゃ……予定ではもっと滞りなく外せるはずで……」
 恋物語で活躍する美男子のように、薄暗い中、片手で難なくボタンを外せるとでも思っていただなんて。用意周到なのか夢見がちなのかわからないところが面白く、愛おしい。

「大丈夫よ、フォル」
 エルゼは緩む頬を抑えながら、ふと、気になる文言へと話題を移す。
「ところで、そんなにだった……?」
 返事の代わりに返ってきたのは拍子抜けしたような表情。ようやくエルゼは彼の言及通りに失敗を重ねてしまったと気付く。
「つ、続けて!」
「そうか、魔女様としては気になるか……。ごめん。刺激的って言うのはその、業務に支障が出そうな格好だと指摘したわけではないんだ。服装についてはきちんとしていて、良いと思う」
「良かったわ。いつも似たような感じの服で接客してたから」
 ほっと胸を撫で下ろすエルゼにフォルクハルトは微苦笑すると、最後のボタンへと手をかける。
「すごく素敵だ。きっちり上のボタンまでしめて、着込んでいるのもエルらしいし、安心。だからその、さっきのは俺にとっては刺激的だったって意味で……」
「ああ、色のこと? たしかに正装と比べると……?」

 ただしそれも致し方のないこと。フォルクハルトやエルゼが好むような由緒正しき魔術師の装いは、一般的には不気味で不評なのだ。そうエルゼが説明する前に。フォルクハルトは首を振る。
 同時にブラウスがはだけて、温かく大きな手が薄い下着越しにエルゼの両胸を掴んだ。

「全て、だよ」
「っ?! フォ、フォル!」
「色も落ち着いていて、清潔感があってエルによく似合ってると思うけど。だからこそ禁欲的で、俺にとっては何もかも刺激的だ」
「そ、そうじゃなくて?! いえ、わかったけどそれよりフォルの手が……っん」

 抗議にも紛う声が、決して静止を求めての本心からではないと理解しているのか。フォルクハルトはエルゼの両胸を包み、感触を確かめるように揉み始める。優しくも、もどかしいくらいに遠慮がちなそれに、エルゼの熱は上がってしまう。

「柔らかくて可愛い」
「馬鹿……っフォル……んっ……やぁ、も……へ、変態」
「俺もそう思う」
 羞恥に身をよじって苦し紛れの悪態をつくが、フォルクハルトの不埒な手は止まらない。
「でも仕方ないとも思う。好きな人の下着姿の妄想だけで人前に出られなくなるほど興奮できる男を普通だとか、一般的だとかは……少なくとも俺は胸を張っては言えない」
「えっ?!」
 大真面目に伝えられるとんでもない告白に目眩を感じる間もなく、フォルクハルトの指がエルゼの胸の先へと触れた。瞬間、エルゼの内に得体の知れぬ何かが走る。
「っ……」
「もしかしてエル、感じてる?」

 そこに揶揄する色はない。おそらく彼に他意はなく、素朴な疑問、或いは期待を込めての確認。彼なりにエルゼの反応を知りたいだけなのではあろう。
 しかしだからと言って、素直に首を縦に振れるほどはまだ、素直にはなれないのだ。
 じっと反応を待つフォルクハルトに、エルゼは無情にも首を横に振った。

「違うっ。全然、このくらい日常の範囲内よ。そんなあるわけないわ。それこそ猫や子犬を抱っこしても、ほら、この程度の触れあいはあるもの」
 他にも着替えや散歩程度の運動でも起こりうる程度の接触に、特別性的な感情を抱くなんて……とのエルゼの強がりは、どうやら曲解して伝わってしまったらしい。
 フォルクハルトの薄い唇から久方ぶりの好敵手ライバル時代の悪戯っぽい笑みが零れて。
「へえ。猫や犬、ね。そいつらはエルに日頃から随分と仲良くしていたみたいだね。野生も忘れて、エルの肌に触れていたなんて」
 意味深長な言葉が続く。
「え? フォル、普通の猫ちゃんよ? なにか勘違いを……」
「大丈夫、知ってるさ。毒虫の防虫効果はあっても動物の出入りはあったから当然、万が一のことも、エルの結界なら多分ないだろうけど……盲点だったなと」
「フォル??」

 結界に防虫効果はない。はずだ。盲点、それが欠点と同義ならば、あっただろう。
 そんなどうでも良い思考は、彼自身によって遮られる。
「馬鹿みたいな見栄なんか張らずに、エルにもっと早く会いに……もっと早く、終わらせたつもりなんて微塵もないって伝えれば良かった」
 苦笑を滲ませながらも、フォルクハルトはちゃっかりとエルゼの下着を取り払う。
 無理やり押し込められていた二つの膨らみが解放され、フォルクハルトから悩ましげなため息に続いて、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。
「あ、あの、」
「すごい、綺麗……」
 ぽつりと、飾らぬ言葉が零れる。恍惚とした表情は再び漏れ出た吐息をはさんで、やがて満足気な笑みへと変わった。
「触れてしまうのが勿体ないくらいだ……」
 付き合いが長いからこそ、はにかむ彼が本音をエルゼへと告げていることは明白。そして見よう見まねの口説き文句でないからこそ、たちが悪い。
「エル、」
「フォル……っ、やぁ」
 少しも迷わず、フォルクハルトはエルゼの胸を食んだ。
 ねっとりとした舌が敏感な肌を舐め上げ、エルゼの肌が粟立つ。鼻に抜けたような甘ったるい声を我慢したのも束の間。
「っは、可愛い。エル、声も可愛いから、我慢しないで」
 フォルクハルトは難易度の高いお願いを告げると、エルゼへと深く口付けた。
「……エル、好きだ……っん、エル」

 熱いそれはエルゼの舌へ優しく触れ、溶け合うようにゆっくりと絡め取っては、少しだけ息が苦しくなったのか名残惜しげに離れて。甘い吐息と心底嬉しそうな笑みが見えたかと思うと、また柔らかな感触がエルゼの唇へと合わさる。
「私も……フォル」
「エル」
 数え切れぬほどの口付けを重ねて、フォルクハルトは再びエルゼの胸の先を口に含んだ。
 快楽と羞恥にエルゼの体がぴくりと震える。そんなエルゼを熟知しているかの如く、フォルクハルトは桜色の先端を吸い上げる。
「あ、や……フォ、ル……」
「……やっぱり、エルはここが好きみたいだ」
「ちが、ちがうっ」

 必死に首を振り、もどかしさに敷布を蹴り、涙目で訴えても無駄だ。薬の効能以上の身の内を焦がす熱に、フォルクハルトに触れられる度に駆ける悦びに、エルゼはもう気付きかけていた。
「そうなんだ? エルがそう言うなら……ひとまず今夜はそうだったと覚えておこうか」
 好戦的で生意気な弟弟子の顔を覗かせながらも、彼の表情は柔らかく、熱っぽい。
「もっと確かめさせて」
 好奇心か悪戯か。彼はエルゼに見えるようにと言わんばかりの仕草で、朱に熟れていく先端を舌で舐る。
「も、フォルっ……あぁっ」
 胸を吸われ、膨らみを愛でるように舐められては紅い蕾を擦られて。エルゼは身を捩り、疼く下腹の奥に耐えられずに敷布だけでなくフォルクハルトの足まで蹴ってしまう。

 逃れたいのか。もっと深く囚われたいのか。
 羞恥心に揺れるエルゼへ、フォルクハルトはところどころ手間取りながらも残った衣服を取り去り、己もまた一糸まとわぬ姿となって、ひとつひとつ丁寧に明確なこたえを示していった。

「エル、ごめん」
 何に対しての謝罪かは判然としないまま、エルゼの腹にフォルクハルトの手が触れる。期待と羞恥に身を震わせれば、そのまま彼の指は淡い茂みを撫で、既に潤うそこへと辿り着いた。
「あっ……フォルぅ」
 秘所がフォルクハルトの指を飲み込む。待ち望んでいた触れ合いに、エルゼの中が切なげに震え、唇から甘やかな吐息が零れた。
「……っフォル、もう……」
 なにかに耐えるような険しい表情の彼を抱きしめ、エルゼは快楽を甘受する。蜜壷は淫らな音をたてて悦び、彼の熱を逃がすまいと切なげにうねっては、恋しい愛しいと締め上げる。
 鼓膜を犯すような淫らな水音と、二人分の切なげな吐息と、互いを求める声とが交差して。やがて彼のそれが敏感な花芽を掠った。
「ひっ……?! っあ、やぁっ……」

 抗えぬ甘美な刺激にエルゼの視界が瞬く。背はしなり、勢い余った足先は意味もなく空を蹴った。
「エル、可愛い……ここ、少し膨らんでるね……」
「やっ、そんっ……ッ、わかんな……やぁぅあぁっ」

 止まぬ快楽はエルゼの眦から生理的な涙を零させ、悲鳴にも拒絶にも取れる言葉を溢れさせる。
 それでもエルゼを知り尽くした彼が、その意味がなんたるかを誤ることはない。
「良かった。えっちな気持ちになってくれてるみたいだから、もう少し……」
 フォルクハルトは悩ましげなため息をひとつ零して微笑むと、秘所を暴く指を増やして従順なまでにエルゼの欲望を叶えていった。

「あぁ、ここもいいんだ?」
「やっ、あぁッ……」
「はぁ……可愛くて、凛としたエルも夜はえっちになってくれるかもって、ずっと夢想してたけど」
「ふぁ、あっ……」
「想像なんて、やはり想像でしかないんだ。可愛い。えっちなのに可憐で……」
 フォルクハルトの指は彼の想いを表すように、内壁を優しく撫で、愛でるように摩っては執拗に花芽を転がして弄ぶ。
 自分が愛されているのか、彼の欲望のままにぐちゃぐちゃに犯されているのか。時折判断がつかなくなるくらいには激しい行為は、エルゼの欲を煽っていった。

「ねぇ、エル。薬が効いてるのは俺だからなんだよね?」
「っ……あっ」
 艶めかしい音と共に蜜洞から熱が離れ、フォルクハルトから核心を突いた言が零れる。
 眉根を寄せる表情に大人の余裕は見えない。そこにはエルゼがいつか見た、己の無力さを呪いながらも必死に不安に耐え、そうであって欲しいと切に願い続けるひたむきな少年の面影があった。

「っ大丈夫。推測の通り、フォルだからに決まってるでしょう……? それとも……」
 エルゼはあえて多様な受け取り方ができるよう効能書きに記載した言葉をこっそりと思い出しながら、笑いを堪えて。愛おしい人に手を伸ばす。
嬉しいのか、嬉しいのか……ちゃんと確かめてみる?」

 勇気を奮い起こして、エルゼはフォルクハルトを抱き締める。
 そのまま昂る熱へ肌を寄せ、固まる彼の赤い耳へと口付けた。

「……私だってフォルのこと、大好きなんだから」
「……エルっ」
 エルゼの唇に滑らかなフォルクハルトのそれが重なる。
「良い……?」
 尚も躊躇するフォルクハルトに、エルゼはこくりと頷いた。
 ごくりと喉を鳴らす音が聞こえる。熱いフォルクハルトの両手が腿に触れたかと思うと、ひんやりとした夜の空気がしとどに濡れる秘められたそこを撫でた。

「エル、好きだ」
「フォル……私も」
 微かな水音をたてて、フォルクハルトの昂りがあてがわれる。
「あっ……フォルぅ」
「エル……」
 とろりと溢れ出た蜜を纏わせて、フォルクハルトの熱はエルゼの柔らかな花弁を押し開く。途端、エルゼは彼の熱がとてつもない質量だと気付いてしまった。
「……あ、っ……」
 想像以上の圧迫感に慄いたがもう遅い。
 フォルクハルトの熱情はエルゼの隘路を押し進む。

「あっ、ぁっ……」
「……逃げないで、エル……っ」
 互いの艶めいた吐息が荒々しいそれに変わり、やがてフォルクハルトの熱情はエルゼの最奥へと至った。
「……エル」
 しっとりと濡れた肌は心地好く、過ぎた月日を埋めるような力強い抱擁はエルゼを満たしていく。
「フォル」
 泣きそうな金の瞳の奥には、その身さえ滅ぼしかねない狂焔のような欲が宿っている。

「ずっと傍にいるわ」

 誓いの言葉への応えなのだろう。ほっとしたような微笑と一粒の雫を零すフォルクハルトに、再び懐かしい愛称が呼ばれて。
 まるでそれが合言葉だと承知しているかのように、フォルクハルトはエルゼの望み通りに中を揺さぶり始めた。
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