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転移者イオ編
第14話:レア魔法(画像あり)
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禁書閲覧室の薄い本、後半まで読み進めた。
魔法ともギフトとも違う【七徳の光】は、こちらの世界には無い珍しい現象だな。
薄い本の世界には魔法と呼ばれるものは出てこない。
主人公が使う【聖なる力】が、こちらの世界でいう聖属性魔法みたいものかな。
風の妖精の力を借りて空を飛んだりするのは、ゲームによくある精霊術に近いものかな?
主要キャラクターの少年が【聖剣】に認められた者って事は、勇者的な立場になるんだろうか?
「タマはこの本の作者に会った事があるんだっけ?」
「うん」
「どんな人だった?」
「まだ子供だったよ。13歳って言ってた。黒髪だから普通の転移者だね」
作者についてタマに聞いてみた。
俺やモチみたいに前世がこちら側の人間という人ではなかったようだ。
本の主人公が転生+転移だから、作者もそうかなと思ったけど、違うらしい。
「作者はこちらに来た後、どうなったの?」
「ナーゴに住み着いて、天寿を全うしたよ」
「学園に入ったりしたの?」
「魔法学部に在籍して、レア魔法を開発して、卒業後は宮廷魔導師になったよ」
本の主人公は日本に帰ったけど、作者は異世界に永住したらしい。
やはり転移者、魔法の才を授かった?
「レア魔法?」
「例えば、アズとルルの亡骸にかけられた【時の封印】がそれだね」
「あ~、アズの霊が『死にたて新鮮』とか言ってたアレか」
「アズってば、まるで魚か何かみたいな事を……」
タマも俺と同じ事を思ったようだ。
神様の時間停止魔法を作ったのが日本人だったのには少し驚いた。
「【時の封印】の開発のきっかけになったのは、【コールドスリープ】っていう地球の技術らしいよ」
「まさかの元ネタSFか」
俺の脳内に、冷凍保存されているアズとルルが浮かんだ。
2人とも死んだ後の保存だから、解凍しても生き返らないだろうね。
その細胞を使ってクローンを……って、アズのクローンみたいな俺がここにいるじゃないか。
それならルルのクローンを……いや、やめとこう。
ルルの復元は魔王の復活と同じ、本人はそれを望んでいない。
「【時の封印】の魔法原理は、ナーゴで生まれ育った猫人や世界樹の民には理解出来なくて、開発者の死と共に創造神に奉納されたよ」
「地球からの転移者は?」
「当時はまだ異世界転移が滅多にない時代だったから、他の転移者はいなかったよ」
薄い本と作者が異世界転移したのは、かなり大昔のことだった。
ゲーム会社の従業員が765人も転移した現代なら、いくらでも継承者がいただろうに。
現世の知識を持つエカなら魔法の才もあるから継承出来ると思う。
エカの妻ソナは日本からの転移者で魔法の才を持つ人だから、継承出来るかも。
あまり詳しくはないけど、ソナは日本で嫌な経験があり、自分個人に関わる記憶は消したらしい。
でも、箸の使い方とか道具に関することは、知識として残っていると言っていた。
「今なら、モチや俺が継承出来たかもしれないのにね」
「見に行ってみたら?」
「え?」
「アズとルルの身体、世界樹の中に保管されてるでしょ。それにかかってる【時の封印】を見たら継承出来るかもしれないよ?」
そういうテがあったか。
俺は昨日から予定していた、世界樹の中のルルを見に行く事にした。
もれなく自分の前世の遺体も見る事になるけど、気にしない方向で。
いつも通り剣神アチャラ様の修行空間で日課の剣術修行を済ませて、通常空間に戻ると世界樹の根元へ向かう。
大樹の根元に立ち、創造神にお願いしてみた。
『神様、ルルに触れてみたいので、世界樹の中に入れてもらえませんか?』
『入るがよい』
念話で話しかけるとすぐに返事がきて、俺は大樹の中に吸い込まれた。
一瞬、薄い本の第1話、主人公が菩提樹の大木に吸い込まれるシーンが浮かぶ。
薄い本とは違い、俺は異世界転移する事は無かった。
というかもう既に異世界転移済だな。
世界樹の中には、木漏れ日のように緑の葉の間でキラキラする光があった。
俺は太い枝の上に現れて、前方にある緑の球体に気付く。
そこに、よく知っている男女が横たわっていた。
「ルル、来てみたよ」
俺は、目を閉じて動かない美女に話しかける。
返事は無かった。
そりゃそうだ、これは抜け殻、ルルの霊はアサギリ島にいる。
「もしも君が生きていたら、俺は前世の記憶と心を受け継げたのかな?」
ルルに話しかけながら、その隣に横たわる青い髪の青年を見る。
今の俺が成長した姿みたいな青年。
まあ、俺の今の身体は前世の身体をコピーしたようなものだから、似てるのは当然だ。
「もしも前世の記憶と心を受け継げたら、ジャスさんやフィラさんを泣かせずに済んだのにね」
ルルの頬を撫でてみた。
温かくはないけど、冷たいわけでもない。
自分の頬を伝う涙は、魂に残る前世の残滓のせいだろうか。
そうしてしばらくルルに触れていたら、何かの術式が自分の脳に書き込まれた事に気付いた。
【時の封印】という起動言語が記憶される。
それはコールドスリープにヒントを得た、生命の時を止める魔法だ。
ルルとアズには死亡後に使われているけれど、これは生きている人間にも使える。
「この魔法、ルルが若くて元気だった頃にアズが覚えられたら良かったのにね」
タマの予想通りレア魔法を継承した俺は、ルルの額にキスをして世界樹の外に出た。
魔法ともギフトとも違う【七徳の光】は、こちらの世界には無い珍しい現象だな。
薄い本の世界には魔法と呼ばれるものは出てこない。
主人公が使う【聖なる力】が、こちらの世界でいう聖属性魔法みたいものかな。
風の妖精の力を借りて空を飛んだりするのは、ゲームによくある精霊術に近いものかな?
主要キャラクターの少年が【聖剣】に認められた者って事は、勇者的な立場になるんだろうか?
「タマはこの本の作者に会った事があるんだっけ?」
「うん」
「どんな人だった?」
「まだ子供だったよ。13歳って言ってた。黒髪だから普通の転移者だね」
作者についてタマに聞いてみた。
俺やモチみたいに前世がこちら側の人間という人ではなかったようだ。
本の主人公が転生+転移だから、作者もそうかなと思ったけど、違うらしい。
「作者はこちらに来た後、どうなったの?」
「ナーゴに住み着いて、天寿を全うしたよ」
「学園に入ったりしたの?」
「魔法学部に在籍して、レア魔法を開発して、卒業後は宮廷魔導師になったよ」
本の主人公は日本に帰ったけど、作者は異世界に永住したらしい。
やはり転移者、魔法の才を授かった?
「レア魔法?」
「例えば、アズとルルの亡骸にかけられた【時の封印】がそれだね」
「あ~、アズの霊が『死にたて新鮮』とか言ってたアレか」
「アズってば、まるで魚か何かみたいな事を……」
タマも俺と同じ事を思ったようだ。
神様の時間停止魔法を作ったのが日本人だったのには少し驚いた。
「【時の封印】の開発のきっかけになったのは、【コールドスリープ】っていう地球の技術らしいよ」
「まさかの元ネタSFか」
俺の脳内に、冷凍保存されているアズとルルが浮かんだ。
2人とも死んだ後の保存だから、解凍しても生き返らないだろうね。
その細胞を使ってクローンを……って、アズのクローンみたいな俺がここにいるじゃないか。
それならルルのクローンを……いや、やめとこう。
ルルの復元は魔王の復活と同じ、本人はそれを望んでいない。
「【時の封印】の魔法原理は、ナーゴで生まれ育った猫人や世界樹の民には理解出来なくて、開発者の死と共に創造神に奉納されたよ」
「地球からの転移者は?」
「当時はまだ異世界転移が滅多にない時代だったから、他の転移者はいなかったよ」
薄い本と作者が異世界転移したのは、かなり大昔のことだった。
ゲーム会社の従業員が765人も転移した現代なら、いくらでも継承者がいただろうに。
現世の知識を持つエカなら魔法の才もあるから継承出来ると思う。
エカの妻ソナは日本からの転移者で魔法の才を持つ人だから、継承出来るかも。
あまり詳しくはないけど、ソナは日本で嫌な経験があり、自分個人に関わる記憶は消したらしい。
でも、箸の使い方とか道具に関することは、知識として残っていると言っていた。
「今なら、モチや俺が継承出来たかもしれないのにね」
「見に行ってみたら?」
「え?」
「アズとルルの身体、世界樹の中に保管されてるでしょ。それにかかってる【時の封印】を見たら継承出来るかもしれないよ?」
そういうテがあったか。
俺は昨日から予定していた、世界樹の中のルルを見に行く事にした。
もれなく自分の前世の遺体も見る事になるけど、気にしない方向で。
いつも通り剣神アチャラ様の修行空間で日課の剣術修行を済ませて、通常空間に戻ると世界樹の根元へ向かう。
大樹の根元に立ち、創造神にお願いしてみた。
『神様、ルルに触れてみたいので、世界樹の中に入れてもらえませんか?』
『入るがよい』
念話で話しかけるとすぐに返事がきて、俺は大樹の中に吸い込まれた。
一瞬、薄い本の第1話、主人公が菩提樹の大木に吸い込まれるシーンが浮かぶ。
薄い本とは違い、俺は異世界転移する事は無かった。
というかもう既に異世界転移済だな。
世界樹の中には、木漏れ日のように緑の葉の間でキラキラする光があった。
俺は太い枝の上に現れて、前方にある緑の球体に気付く。
そこに、よく知っている男女が横たわっていた。
「ルル、来てみたよ」
俺は、目を閉じて動かない美女に話しかける。
返事は無かった。
そりゃそうだ、これは抜け殻、ルルの霊はアサギリ島にいる。
「もしも君が生きていたら、俺は前世の記憶と心を受け継げたのかな?」
ルルに話しかけながら、その隣に横たわる青い髪の青年を見る。
今の俺が成長した姿みたいな青年。
まあ、俺の今の身体は前世の身体をコピーしたようなものだから、似てるのは当然だ。
「もしも前世の記憶と心を受け継げたら、ジャスさんやフィラさんを泣かせずに済んだのにね」
ルルの頬を撫でてみた。
温かくはないけど、冷たいわけでもない。
自分の頬を伝う涙は、魂に残る前世の残滓のせいだろうか。
そうしてしばらくルルに触れていたら、何かの術式が自分の脳に書き込まれた事に気付いた。
【時の封印】という起動言語が記憶される。
それはコールドスリープにヒントを得た、生命の時を止める魔法だ。
ルルとアズには死亡後に使われているけれど、これは生きている人間にも使える。
「この魔法、ルルが若くて元気だった頃にアズが覚えられたら良かったのにね」
タマの予想通りレア魔法を継承した俺は、ルルの額にキスをして世界樹の外に出た。
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