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翔が書いた物語
第5話:力の目覚め
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「馬鹿な……何故闇に属する者がこんな光を……」
動揺しつつ、シアルは剣を構え直す。
その目前で、リオがユラリと立ち上がった。
「……僕は、魔物なんかじゃない……」
リオの漆黒の髪が、深青色を経て青銀色へと変化してゆく。
「……オレハ……闇ニ属シテハイナイ……」
呟く声が、別人のように低くなる。
「!」
シアルは絶句した。
うつむいていたリオが、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳が、黒から鮮やかな瑠璃色に変わってゆく。
「『聖なる青』の瞳?!」
驚いて言いかけた時、シアルは突然起こった強い風に、空中へ持ち上げられた。
銀髪の少年は、弧を描いて数十メートル先まで飛ばされてゆく。
硬い地面に背中から叩き付けられたシアルは、倒れたまま震える片手を伸ばした。
「……お前……本当……に……?」
伸ばした手の先には、青銀に変わった髪を揺らして立つリオがいる。
(……僕は一体何を……?)
当のリオは放心して、自分の両手を見つめた。
倒れた少年は、更に何か言う様に口を開いたが、声は漏れてこない。
力尽きた片手がパタリと地面に落ち、目を閉じるとシアルは動かなくなった。
同時に、もう片方の手に握られたままの剣が、その腕に溶け込むように消える。
「!」
ハッと我に返り、リオは駆け出した。
自分に何が起きたのか分からないが、倒してみろなどと言っていた少年を何か未知の力で倒したような気がする。
彼は、身動き一つしない少年の傍らに膝をつくと、その身体を抱き起こした。
リオが放つ光は薄れて消え、髪と瞳が元の色に戻ってゆく。
「…おい、目ェ開けろよ」
ペチペチと頬を叩いても、シアルは瞼を閉じたまま脱力している。
ピクリとも動かないので、リオは心配になってきた。
「僕は、人殺しなんて嫌だぞっ」
「気を失っているだけですよ」
焦るリオに、落ち着いた様子のエレアヌが歩み寄ってくる。
彼が屈むと、長い黄金色の髪が流れる様に地面に落ちた。
「大丈夫、貴方の『力』は、人を殺める為のものではありませんから」
細く長い指先が青ざめた額に触れると、シアルの顔に血の気が戻ってくる。
「御覧なさい……」
エレアヌは空に目を向けて言う。
「あれは、貴方の聖なる力の影響です」
「え?」
リオが見上げると、黒雲に覆われていた空が、真っ青に晴れ渡っていた。
青空から、透き通った羽根をもつ小さな人達が、数えきれないほど飛んで来る。
「お帰りなさい、友よ」
「そして、ありがとう」
「貴方の光が、我等を清めてくれた」
子供のように可愛らしい声で、彼等は言う。
先刻までは吹いていなかった心地好い風が、リオの頬を撫で、髪を揺らした。
「……風の妖精達……」
漏れた呟きは、【内なる者】の声。
リオの瞳がまた、瑠璃色に変わった。
「約束通り、俺は戻って来たよ……やり残した事を遂げる為に……」
懐かし気に笑みを浮かべる。
彼はその時、日本の高校生・古谷リオではなく、エルティシアの長・リュシア=ユール=レンティスであった。
緑柱石色の空間でその名を呼ばれた時から、彼の中で何かが変わり始めている。
「行きましょう。皆が待っていますから」
エレアヌの、男性とは思えぬほど細く形の良い手が、リオの肩に置かれた。
「我等が運んで差し上げよう」
妖精達の小さな手が、リオとその腕に抱えられているシアル、そしてエレアヌの身体に触れる。
柔らかな絹に包まれる様な感覚と同時に、三人は空中に持ち上げられた。
そしてリオ達は、ラーナ神殿と呼ばれる聖地へと運ばれていった。
動揺しつつ、シアルは剣を構え直す。
その目前で、リオがユラリと立ち上がった。
「……僕は、魔物なんかじゃない……」
リオの漆黒の髪が、深青色を経て青銀色へと変化してゆく。
「……オレハ……闇ニ属シテハイナイ……」
呟く声が、別人のように低くなる。
「!」
シアルは絶句した。
うつむいていたリオが、ゆっくりと顔を上げる。
その瞳が、黒から鮮やかな瑠璃色に変わってゆく。
「『聖なる青』の瞳?!」
驚いて言いかけた時、シアルは突然起こった強い風に、空中へ持ち上げられた。
銀髪の少年は、弧を描いて数十メートル先まで飛ばされてゆく。
硬い地面に背中から叩き付けられたシアルは、倒れたまま震える片手を伸ばした。
「……お前……本当……に……?」
伸ばした手の先には、青銀に変わった髪を揺らして立つリオがいる。
(……僕は一体何を……?)
当のリオは放心して、自分の両手を見つめた。
倒れた少年は、更に何か言う様に口を開いたが、声は漏れてこない。
力尽きた片手がパタリと地面に落ち、目を閉じるとシアルは動かなくなった。
同時に、もう片方の手に握られたままの剣が、その腕に溶け込むように消える。
「!」
ハッと我に返り、リオは駆け出した。
自分に何が起きたのか分からないが、倒してみろなどと言っていた少年を何か未知の力で倒したような気がする。
彼は、身動き一つしない少年の傍らに膝をつくと、その身体を抱き起こした。
リオが放つ光は薄れて消え、髪と瞳が元の色に戻ってゆく。
「…おい、目ェ開けろよ」
ペチペチと頬を叩いても、シアルは瞼を閉じたまま脱力している。
ピクリとも動かないので、リオは心配になってきた。
「僕は、人殺しなんて嫌だぞっ」
「気を失っているだけですよ」
焦るリオに、落ち着いた様子のエレアヌが歩み寄ってくる。
彼が屈むと、長い黄金色の髪が流れる様に地面に落ちた。
「大丈夫、貴方の『力』は、人を殺める為のものではありませんから」
細く長い指先が青ざめた額に触れると、シアルの顔に血の気が戻ってくる。
「御覧なさい……」
エレアヌは空に目を向けて言う。
「あれは、貴方の聖なる力の影響です」
「え?」
リオが見上げると、黒雲に覆われていた空が、真っ青に晴れ渡っていた。
青空から、透き通った羽根をもつ小さな人達が、数えきれないほど飛んで来る。
「お帰りなさい、友よ」
「そして、ありがとう」
「貴方の光が、我等を清めてくれた」
子供のように可愛らしい声で、彼等は言う。
先刻までは吹いていなかった心地好い風が、リオの頬を撫で、髪を揺らした。
「……風の妖精達……」
漏れた呟きは、【内なる者】の声。
リオの瞳がまた、瑠璃色に変わった。
「約束通り、俺は戻って来たよ……やり残した事を遂げる為に……」
懐かし気に笑みを浮かべる。
彼はその時、日本の高校生・古谷リオではなく、エルティシアの長・リュシア=ユール=レンティスであった。
緑柱石色の空間でその名を呼ばれた時から、彼の中で何かが変わり始めている。
「行きましょう。皆が待っていますから」
エレアヌの、男性とは思えぬほど細く形の良い手が、リオの肩に置かれた。
「我等が運んで差し上げよう」
妖精達の小さな手が、リオとその腕に抱えられているシアル、そしてエレアヌの身体に触れる。
柔らかな絹に包まれる様な感覚と同時に、三人は空中に持ち上げられた。
そしてリオ達は、ラーナ神殿と呼ばれる聖地へと運ばれていった。
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ラビリンスの中で魔物を倒すと稀にその個体の姿が写ったカードが落ちた。
その後、そのカードに血を掛けるとその魔物が召喚され使役できる事が判明した。
彼らは通称カーヴァント。
カーヴァントを使役する者は探索者と呼ばれた。
カーヴァントには1から10までのランクがあり、1は最弱、6で強者、7や8は最大戦力で鬼神とも呼ばれる強さだ。
しかし9と10は報告された事がない伝説級だ。
また、カードのランクはそのカードにいるカーヴァントを召喚するのに必要なコストに比例する。
探索者は各自そのラビリンスが持っているカーヴァントの召喚コスト内分しか召喚出来ない。
つまり沢山のカーヴァントを召喚したくてもコスト制限があり、強力なカーヴァントはコストが高い為に少数精鋭となる。
数を選ぶか質を選ぶかになるのだ。
月日が流れ、最初にラビリンスに入った者達の子供達が高校生〜大学生に。
彼らは二世と呼ばれ、例外なく特別な力を持っていた。
そんな中、ラビリンスに入った自衛隊員の息子である斗枡も高校生になり探索者となる。
勿論二世だ。
斗枡が持っている最大の能力はカード合成。
それは例えばゴブリンを10体合成すると10体分の力になるもカードのランクとコストは共に変わらない。
彼はその程度の認識だった。
実際は合成結果は最大でランク10の強さになるのだ。
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