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第1章:月の遺跡と宇宙船
第6話:惑星アエテルヌム
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地球から遥か彼方、最果ての惑星アエテルヌム。
高度な文明を有するその星の民は、種としての限界に近付いていた。
D因子と呼ばれる遺伝情報が彼等の染色体の中に現れ始め、受精卵が育たなくなってしまった。
子孫を残せないため人口が激減し、これ以上は危険と判断したマザーコンピューター【マーテル】は、生き残っていた人々に冷凍睡眠を施し、多くの探査船を外宇宙へ送り出す。
探査船の目的は、D因子を無効化させる遺伝子を持つ異星人を探し、本体または受精卵、卵子や精子を持ち帰る事。
その探査船の1つがアルビレオ号、地球人にその遺伝子がある事は分ったものの、当時はまだ天動説を信じているような時代で、交流は危険と判断して地球には降下せず、月地下に潜って進化の様子を伺っていた。
……この宇宙船を発見出来るくらいまで、彼等の文明が発展するのを待とう……
運航AIの判断により、月地下で待ち続けたアルビレオ。
それを発見したのが、コロニーで暮らす時代になった人類。
その中で、交流用端末アイオを見つけ、最初に触れた者がトオヤだった。
「今の地球人の状況から考えれば、コロニーの運営に支障のない範囲での移民と、受精卵または精子や卵子を提供して頂く事が、双方にメリットがあるのではと思います」
アイオの提案は、宇宙開発研究所の管理コンピューターから政府の管理コンピューターに送られ、返答はしばし待つ事となった。
アイオには仮の市民権が与えられ、トオヤの保護下におかれた。
「とりあえず服と靴を買おう」
衣服や靴を持っていないアイオを連れて、トオヤが真っ先に向かったのは、カジュアルな衣服や靴を売る服飾店。
ブカブカのジャケットだけ着た裸足の美少年を抱いて来店したものだから、店内の人々から奇異な目で見られてしまった。
「この子に似合いそうなものをコーディネートしてもらえますか?」
「こちらお似合いだと思いますよ」
トオヤに言われた店員が持ってくる服がどれも女の子向きで、アイオが男の娘になりかけたのは容姿的にしょうがない。
どうにか男女どちらでも合いそうなチュニックにパンツスタイルにまとまり、それに合わせたサンダルも買って、着替え終えると2人は店を出た。
「地球人の食べ物は食べられる?」
「はい。トオヤが食べられる物なら同期してあるので食べられます」
と言うアイオを連れて、トオヤは人気のスイーツ店を訪れた。
せっかく来たなら楽しんでもらおう、そんな意向でアイオに甘味を買い与えた。
食の好みは同期したトオヤと同じらしいので、アイオが喜ぶ食べ物は分かり易い。
「あらトオヤ、遂に恋人が出来たの?」
馴染みの店員に、そんな事を言われてしまった。
地球人類が人工授精でしか生まれなくなった時代、恋愛は性別を問わなくなっている。
男性同士、女性同士のカップリングはごく普通の恋人として扱われていた。
「僕のものになった子です」
「あら~、おめでとう」
トオヤがそんな事を言うので、完全に誤解されてしまったが、本人は気付いていなかった。
「デビュー早々、デカいモノを引き当てたな」
トオヤの小型艇をメンテナンスしていた師匠パウアは笑う。
外宇宙へ行く事は、宇宙飛行士なら誰でも夢見る事。
その為の準備は、トオヤも研修期間に済ませている。
宇宙飛行士は、宇宙空間でも生きられる身体への最適化が義務付けられている。
パウアもトオヤも、昔のように防護服を着る必要なく宇宙での活動が可能で、一般人に比べると外宇宙へ行く不安は少なかった。
「宇宙空間での生存は問題無いから、あとはコロニーでしか買えない食べ物でも保存しておく事だな」
「師匠にはお酒も必要ですね」
そんな師弟の会話を聞きながら、アイオはトオヤに買ってもらった苺のショートケーキを美味しそうに食べている。
初めて食べる甘味はとても美味しかったようで、以降苺のショートケーキはアイオの大好物になった。
高度な文明を有するその星の民は、種としての限界に近付いていた。
D因子と呼ばれる遺伝情報が彼等の染色体の中に現れ始め、受精卵が育たなくなってしまった。
子孫を残せないため人口が激減し、これ以上は危険と判断したマザーコンピューター【マーテル】は、生き残っていた人々に冷凍睡眠を施し、多くの探査船を外宇宙へ送り出す。
探査船の目的は、D因子を無効化させる遺伝子を持つ異星人を探し、本体または受精卵、卵子や精子を持ち帰る事。
その探査船の1つがアルビレオ号、地球人にその遺伝子がある事は分ったものの、当時はまだ天動説を信じているような時代で、交流は危険と判断して地球には降下せず、月地下に潜って進化の様子を伺っていた。
……この宇宙船を発見出来るくらいまで、彼等の文明が発展するのを待とう……
運航AIの判断により、月地下で待ち続けたアルビレオ。
それを発見したのが、コロニーで暮らす時代になった人類。
その中で、交流用端末アイオを見つけ、最初に触れた者がトオヤだった。
「今の地球人の状況から考えれば、コロニーの運営に支障のない範囲での移民と、受精卵または精子や卵子を提供して頂く事が、双方にメリットがあるのではと思います」
アイオの提案は、宇宙開発研究所の管理コンピューターから政府の管理コンピューターに送られ、返答はしばし待つ事となった。
アイオには仮の市民権が与えられ、トオヤの保護下におかれた。
「とりあえず服と靴を買おう」
衣服や靴を持っていないアイオを連れて、トオヤが真っ先に向かったのは、カジュアルな衣服や靴を売る服飾店。
ブカブカのジャケットだけ着た裸足の美少年を抱いて来店したものだから、店内の人々から奇異な目で見られてしまった。
「この子に似合いそうなものをコーディネートしてもらえますか?」
「こちらお似合いだと思いますよ」
トオヤに言われた店員が持ってくる服がどれも女の子向きで、アイオが男の娘になりかけたのは容姿的にしょうがない。
どうにか男女どちらでも合いそうなチュニックにパンツスタイルにまとまり、それに合わせたサンダルも買って、着替え終えると2人は店を出た。
「地球人の食べ物は食べられる?」
「はい。トオヤが食べられる物なら同期してあるので食べられます」
と言うアイオを連れて、トオヤは人気のスイーツ店を訪れた。
せっかく来たなら楽しんでもらおう、そんな意向でアイオに甘味を買い与えた。
食の好みは同期したトオヤと同じらしいので、アイオが喜ぶ食べ物は分かり易い。
「あらトオヤ、遂に恋人が出来たの?」
馴染みの店員に、そんな事を言われてしまった。
地球人類が人工授精でしか生まれなくなった時代、恋愛は性別を問わなくなっている。
男性同士、女性同士のカップリングはごく普通の恋人として扱われていた。
「僕のものになった子です」
「あら~、おめでとう」
トオヤがそんな事を言うので、完全に誤解されてしまったが、本人は気付いていなかった。
「デビュー早々、デカいモノを引き当てたな」
トオヤの小型艇をメンテナンスしていた師匠パウアは笑う。
外宇宙へ行く事は、宇宙飛行士なら誰でも夢見る事。
その為の準備は、トオヤも研修期間に済ませている。
宇宙飛行士は、宇宙空間でも生きられる身体への最適化が義務付けられている。
パウアもトオヤも、昔のように防護服を着る必要なく宇宙での活動が可能で、一般人に比べると外宇宙へ行く不安は少なかった。
「宇宙空間での生存は問題無いから、あとはコロニーでしか買えない食べ物でも保存しておく事だな」
「師匠にはお酒も必要ですね」
そんな師弟の会話を聞きながら、アイオはトオヤに買ってもらった苺のショートケーキを美味しそうに食べている。
初めて食べる甘味はとても美味しかったようで、以降苺のショートケーキはアイオの大好物になった。
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