19 / 80
第17話:水の乙女
しおりを挟む
『貴方の魂は、清めの力に満ちています』
エレアヌの【声】に導かれるように、リオの身体が青みがかった銀色の光を放ち始める。
あどけなさの残る顔に、大人びた凛々しさをもつ表情が浮かぶ。
泉の側に膝をつくと、リオは片手を水の中に突っ込んだ。
直後、彼が放つ光は銀色の閃光となった。
「ギャアアッ」
おぞましい断末魔の悲鳴が上がり、水面に黒い水が盛り上がる。
それは、ドロドロとしたゼリー状の物体と化してゆく。
アメーバを思わせる魔物は、全身から湯気らしきものを放って蒸発し始めた。
リオの目前で、黒い半液体の魔物の最後の一片が、まるでフライパンに落とされた水滴の様に消え去った。
清らかに澄んだ泉には、透明な水が静かに湧き出し始める。
「ありがとう」
柔らかく響く声がして、水面に一人の乙女が現れた。
「……水の妖精……」
呟くリオ(リュシア)の目前で、アクアマリン色の髪と瞳をもつ乙女は、ドレスのように長い衣服の裾を左右の手でつまみ、西洋の貴婦人の様に優雅に一礼する。
「お帰りなさい、友よ。貴方が戻ってくる日を、ずっと待っていました」
その微笑みは、親しい者との再会の喜びに満ちていた。
「水の妖精は、この姿を見てどう思う?」
リュシアの意識が沈み、リオの心が浮上して問う。
漆黒の髪と瞳に変わった姿を見ても、乙女の笑みは変わらない。
「姿は違っても、貴方は貴方。私達妖精族の友であることに変わりはありません」
アスリィルと呼ばれる乙女は答えた後、不思議そうに首を傾げた。
「何故不安そうなのですか? 貴方は自ら望んで、あちらの世界に転生したのでしょう?」
意外な言葉に、リオは息を飲む。
黒い色を嫌う筈の白き民、その長が何故、日本人に生まれ変わる事を望んだのか?
「まだ、そこまで思い出してはいないのですね」
優しい微笑みを浮かべ、水の妖精は高く澄んだ声で予言めいた言葉を告げた。
「『闇に勝つ力は、闇を恐れぬ心。すべての魂を救えるのは、輪廻を信ずる思い』これは、リュシアとしての貴方が世を去る前に、私達に語った言葉です」
そして、彼女はゆっくりと両手を広げる。
「何故その姿に生まれ変わる必要があったのかは、きっとそのうち思い出せますわ」
薄青色の空間に流れが起こり、リオの身体を上へと押し始めた。
戸惑いながら、リオは上へと流されてゆく。
そんな彼に、乙女はまた笑みを向けた。
「そろそろ地上に戻った方がよろしいですわ。貴方を信ずる者が心配しておりますから」
その笑顔が、次第に遠くなってゆく。
澄んだ泉が小さくなり、やがて一点の光と化した直後、リオは井戸の側に立っていた。
エレアヌの【声】に導かれるように、リオの身体が青みがかった銀色の光を放ち始める。
あどけなさの残る顔に、大人びた凛々しさをもつ表情が浮かぶ。
泉の側に膝をつくと、リオは片手を水の中に突っ込んだ。
直後、彼が放つ光は銀色の閃光となった。
「ギャアアッ」
おぞましい断末魔の悲鳴が上がり、水面に黒い水が盛り上がる。
それは、ドロドロとしたゼリー状の物体と化してゆく。
アメーバを思わせる魔物は、全身から湯気らしきものを放って蒸発し始めた。
リオの目前で、黒い半液体の魔物の最後の一片が、まるでフライパンに落とされた水滴の様に消え去った。
清らかに澄んだ泉には、透明な水が静かに湧き出し始める。
「ありがとう」
柔らかく響く声がして、水面に一人の乙女が現れた。
「……水の妖精……」
呟くリオ(リュシア)の目前で、アクアマリン色の髪と瞳をもつ乙女は、ドレスのように長い衣服の裾を左右の手でつまみ、西洋の貴婦人の様に優雅に一礼する。
「お帰りなさい、友よ。貴方が戻ってくる日を、ずっと待っていました」
その微笑みは、親しい者との再会の喜びに満ちていた。
「水の妖精は、この姿を見てどう思う?」
リュシアの意識が沈み、リオの心が浮上して問う。
漆黒の髪と瞳に変わった姿を見ても、乙女の笑みは変わらない。
「姿は違っても、貴方は貴方。私達妖精族の友であることに変わりはありません」
アスリィルと呼ばれる乙女は答えた後、不思議そうに首を傾げた。
「何故不安そうなのですか? 貴方は自ら望んで、あちらの世界に転生したのでしょう?」
意外な言葉に、リオは息を飲む。
黒い色を嫌う筈の白き民、その長が何故、日本人に生まれ変わる事を望んだのか?
「まだ、そこまで思い出してはいないのですね」
優しい微笑みを浮かべ、水の妖精は高く澄んだ声で予言めいた言葉を告げた。
「『闇に勝つ力は、闇を恐れぬ心。すべての魂を救えるのは、輪廻を信ずる思い』これは、リュシアとしての貴方が世を去る前に、私達に語った言葉です」
そして、彼女はゆっくりと両手を広げる。
「何故その姿に生まれ変わる必要があったのかは、きっとそのうち思い出せますわ」
薄青色の空間に流れが起こり、リオの身体を上へと押し始めた。
戸惑いながら、リオは上へと流されてゆく。
そんな彼に、乙女はまた笑みを向けた。
「そろそろ地上に戻った方がよろしいですわ。貴方を信ずる者が心配しておりますから」
その笑顔が、次第に遠くなってゆく。
澄んだ泉が小さくなり、やがて一点の光と化した直後、リオは井戸の側に立っていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
8
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる