【本編完結】株式会社SETA異世界派遣部~ゲーム大会で優勝したら異世界に招待された~

BIRD

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勇者セイル編

第103話:不死鳥に勝てるか試してみた

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「お前さん一体どんだけ武器持ってんだい?」
100本目の刀が溶けた辺りで不死鳥が聞く。
「まだまだあるよ。あと900本」
涼しい顔で星琉が答える。
「って、1000回も斬る気かい!」
うんざりした様子でツッコむ不死鳥。
これまで100回瞬殺されて再生・復活しているが、斬られれば痛いのだ。
「武器が勿体ないとは思わないのかい?」
なんとか諦めさせようとする不死鳥、武器代を心配するフリをした。
「大丈夫、溶けた刀は高く売れるから。レアメタルになるらしいよ」
事前に文献で調べた情報を述べる星琉。
「………。お前さん意外とチャッカリしてんだねぇ」
はぁ~と溜息をつく不死鳥。

そんな双方を少し離れたところで撮影・見学しているOBたちやイリアは、渡辺が魔道具で展開したバリアにガードされている。

範囲型・防御アプリ:battle shield

不死鳥はSSクラスの魔物だが、賢者シロウが開発したマイクロチップ型魔道具のアプリは、その飛び火くらい余裕で防いでしまう。

「あんなにコロコロ死んでるの見ると強そうに見えないよな」
「実は再生と復活に能力全部つぎこんで他は大した事ないとか?」
ここぞとばかりに言いたい放題なOBたち。
「ちょっとアンタ達! 負けたくせに何言ってんの!」
キレた不死鳥が客席に火炎弾を飛ばすが、全部防がれていまう。
「はいはい、客席を巻き込むのはやめようね」
と言ってまた一撃で不死鳥の核を砕いて即死させるのは星琉。

500回斬られた辺りで不死鳥は涙目になった。
「もう近接はお腹いっぱいよ、何か他の事してみなさいよ」
「ん~そうだなぁ、魔法でも使ってあげようか」
半ベソかきながら言う不死鳥に、呑気に答える星琉。
何とも緊迫感の無いSSクラス魔物戦だ。
星琉はとりあえず魔法を使ってみた。

無属性魔法 : 鏡の世界ミラーワールド
水属性魔法 : 壮大な水イグアス

不死鳥を球体で包み、その中に大量の水を滝のように突っ込む。
鉄が瞬時に溶けるような超高温の炎に大量の水が触れ、球体内部で水蒸気爆発が起きた。
その衝撃波は球体によって内部で乱反射し、不死鳥を襲う。
しばらく待って爆発が治まったところで 鏡の世界ミラーワールドを解除すると、口から湯気を吐きながら白目を剥いた不死鳥が出てきてバタッと倒れた。

「…再生…しないな?」
「まさか本気で死んだ?!」
倒れたまま動かない不死鳥を見てOBたちがザワつき始める。
「多分、気絶してるだけかな?」
星琉が木の枝でつついてみると、意識が戻った不死鳥が慌てて起き上がる。
「な…何なの今の魔法は…」
「攻撃を弾くバリアを表裏逆に張って、水かけただけだよ」
「そんな簡単に言ってるけど、消費魔力とんでもないでしょ!」
さらっと説明する星琉に不死鳥がツッコんだ。
「うん。でもこれよりは消費少ないよ」
と言いながら、星琉が次の魔法を発動する。

水属性・氷系魔法 : 雪花

炎を纏う鳥を冷気が包み、体表温度を下げてゆく。
さすがに凍りはしないが、炎の温度が下がり始めた。
更に魔法の出力を上げると、マイナス3桁レベルの冷気に圧された炎はトロ火みたいになってしまう。
そして、氷の結晶が煌めき舞い始めた。

「何その人外レベルの魔力は…!」
不死鳥がビビリ始めた。
どうやら相手が只者ではないと察したらしい。
「うん、よく言われる」
答えながら星琉は、ストレージから出した刀に凍気を纏わせる。

氷属性・支援系 : 凍気纏う刀フローズンソード

煌めく氷の粒子が刀の周囲に舞う。
誰でも買える安価の刀が、斬られた相手を凍らせる力を宿した。

「じゃ、ちょっと試させてもらうよ」
言った直後、星琉の姿が消える。
「!!!」
不死鳥が驚愕した。
斬撃ではなく刺突が核を襲い、凍気がそこから一気に広がる。
勢いが落ちていた炎は完全に消え去り、大きな鳥の身体が完全凍結した。
凍結によって【生命の時計】を停止させられた不死鳥は、再生する事も復活する事も出来ない。
更に雪花によって表面を氷の結晶で覆い、結晶を増やして氷の塊に閉じ込めた状態に仕上げた。

「すげえ…」
「不死鳥が凍るなんて初めて見たぞ」
OBたちも驚愕していた。
「降参とは言ってなかったけど、これでどうですか?」
氷に閉じ込めた不死鳥を指差して星琉が聞く。
「お、おぅ充分だ!」
「1000回斬って泣かして降参させるかと思ったけどな」
予想外の結果にOBたちは満足した様子。
若いOBたちは氷のオブジェと化した不死鳥をスマホで撮影し、しばらく待ち受けがそれになっていた。

「じゃ、帰ろうか」
『まっ待って!!!』
凍った不死鳥を置いて帰ろうとしたら、必死で呼び止める【声】が聞こえた。
「何か言った?」
何者か察した星琉が不死鳥の氷漬けに歩み寄る。
『ごめんなさい降参するから助けてぇぇぇ!!!』
「じゃあそれ全員に言ったら助けてあげる」
そして不死鳥は【念話】でその場にいた全員に降参を宣言した。
星琉は凍結を解除して核に刺さっている刀を抜いてやり、ようやく不死鳥は核を再生して復活出来た。

「ありがとうございます。今後はご主人様と呼ばせて頂きます」
復活した不死鳥、口調が変わっている。
人間より大きかった鳥がスーッと縮んで鷹くらいのサイズになり、星琉の肩にとまった。
「え? どういう事?」
キョトンとする星琉。
小型化した不死鳥は炎を纏っておらず、紅と金の羽毛に覆われた綺麗な鳥に見えた。
「ご主人様の使い魔としてお供致します」
不死鳥は星琉について行く気らしい。
まさかのテイミング成功であった。



「じゃあこれ、提出します」
課題の提出日、星琉は動画つきで不死鳥との対戦レポートを提出した。
「不死鳥をテイムしちゃうとか、星琉くん卒業検定まで規格外ねぇ…」
担任が苦笑しつつそれを受け取る。

卒検の課題【不死鳥に勝てるか試してみたレポート】はその後、伝説の卒検として学生たちに言い伝えられる事となった。
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