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勇者エリシオ編
第41話:聖剣を宿す者
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「エリもプルミエ王族だから神竜の間に行けると思うけど、もしも聖剣が出ても置いて帰らないでね」
セイラに念を押されてしまった。
「僕はそんな勿体無い事はしないよ」
エリシオは苦笑する。
カートルに聖女マーニが誕生してから5年が経ち、エリシオは12歳。
トワの聖女セイラから招待を受け、聖王国に来ていた。
「ではこちらへ」
黄金の長く美しい髪を持つ聖女が、同じ髪色の少年を魔法陣の上へと導く。
勇者と聖女の血を引くプルミエ王家の人間は、そのどちらかの特性を持って生まれてくる。
中にはソレミアのように、勇者の身体能力と聖女の神聖力を持つ者もいた。
聖剣を授かるのは100年に1人と言い伝えられているが、勇者の血族の儀式としてトワの神殿奥の魔法陣に立ってみる事になっていた。
エリシオが中心に立つと、魔法陣が発光し始める。
「さすがに聖剣は出ないと思うけど、シアンと話してくるね」
そう言うと、彼は神竜の間に移動した。
「やあエリ、ようやくここへ来たね」
青い宝石のような煌めく鱗、神竜シアンがエリシオを出迎える。
「これまで多くの勇者がここに来たけど、魔王を連れて来たのは君が初めてだよ」
シアンは苦笑した。
「ほお、ここが神竜の間か」
エリシオの肩の上、仔猫ルシエが興味深そうに周囲を見回す。
「あの螺旋階段の上へ行くんだっけ?」
「うん。そして屋上にある水晶の原石に触れるんだよ」
タマゴ型の建物を指差してエリシオが聞くと、シアンが頷いて答えた。
金髪の少年が、シルバーグレーの仔猫を肩に階段を進み、屋上へと上がる。
屋上には大きな水晶の原石が置かれている。
「これに触れるの?」
「そう」
かつて、祖先のセイルがしたように、エリシオも水晶に触れた。
聖剣に選ばれし者ならば、水晶が光る。
そうでないなら何も起こらない。
しかし今回は状況が違った。
「え?!」
水晶に触れた直後、光を放ち始めたのは水晶ではなくエリシオの左腕。
「どこに隠れてるかと思ったら、そこだったのか」
シアンがフッと笑う。
「勇者エリシオ、君の剣はそこに在る。利き手をかざしてごらん」
言われて、困惑しながらもエリシオが右手をかざすと、その手に光が集まり剣の形をとった。
剣、正しくは日本刀。
他の王族と同じく、勇者セイルの抜刀術を継承するエリシオに使いやすい形状のものが現れた。
「ねえシアン、これって伝承とちょっと違うよね?」
手に入れてしまった聖剣に、エリシオは戸惑う。
王家に伝わる話では、聖剣に選ばれたら水晶が光るとされていた。
「君の場合、ちょっと特殊なケースだからね」
このイレギュラーな事態を予測していたのか、シアンは冷静だ。
「特殊?」
「君はね、聖剣を宿して生まれてきたんだよ」
シアンの言葉に、エリシオは更に困惑する。
「とりあえず、ここでの用事は済んだからセイラのところへ戻っていいよ」
「う、うん」
「くれぐれも、聖剣を置いて帰らないでね!」
「わ、分ってるってば!」
シアンにまで念を押され、エリシオは苦笑した。
プルミエ王族が聖剣を手にする事は珍しくない。
近年ではエリシオの曾祖父にあたる人物、先々代のプルミエ国王が授かっていた。
それから約100年、時期的にはありえる事だが、聖剣が体内に入ってたとはどういう事なのか。
「おかえり。予想通りね」
出迎えたセイラも冷静に言う。
エリシオが手にして戻ったのは、鞘に白い花を抱く青い竜が描かれた刀。
美術的な価値も感じられる美しいデザインだ。
エリシオはセイラに案内され、今度は神樹の間を訪れる。
そこには、示し合わせたように大神官が待っていた。
代々の勇者は神樹の根元に立ち、精霊の祝福を受ける。
神樹の枝葉の間には御使いと呼ばれる緑の羽根の妖精が棲んでいて、勇者が来ると寄って来る。
慕う妖精の数が多いほど勇者の魔力が多いらしいが…
「…うん、やっぱり全員ね」
エリシオの周囲に集う妖精の多さに、セイラはクスッと笑う。
彼女にとってそれは、懐かしい光景だった。
セイラに念を押されてしまった。
「僕はそんな勿体無い事はしないよ」
エリシオは苦笑する。
カートルに聖女マーニが誕生してから5年が経ち、エリシオは12歳。
トワの聖女セイラから招待を受け、聖王国に来ていた。
「ではこちらへ」
黄金の長く美しい髪を持つ聖女が、同じ髪色の少年を魔法陣の上へと導く。
勇者と聖女の血を引くプルミエ王家の人間は、そのどちらかの特性を持って生まれてくる。
中にはソレミアのように、勇者の身体能力と聖女の神聖力を持つ者もいた。
聖剣を授かるのは100年に1人と言い伝えられているが、勇者の血族の儀式としてトワの神殿奥の魔法陣に立ってみる事になっていた。
エリシオが中心に立つと、魔法陣が発光し始める。
「さすがに聖剣は出ないと思うけど、シアンと話してくるね」
そう言うと、彼は神竜の間に移動した。
「やあエリ、ようやくここへ来たね」
青い宝石のような煌めく鱗、神竜シアンがエリシオを出迎える。
「これまで多くの勇者がここに来たけど、魔王を連れて来たのは君が初めてだよ」
シアンは苦笑した。
「ほお、ここが神竜の間か」
エリシオの肩の上、仔猫ルシエが興味深そうに周囲を見回す。
「あの螺旋階段の上へ行くんだっけ?」
「うん。そして屋上にある水晶の原石に触れるんだよ」
タマゴ型の建物を指差してエリシオが聞くと、シアンが頷いて答えた。
金髪の少年が、シルバーグレーの仔猫を肩に階段を進み、屋上へと上がる。
屋上には大きな水晶の原石が置かれている。
「これに触れるの?」
「そう」
かつて、祖先のセイルがしたように、エリシオも水晶に触れた。
聖剣に選ばれし者ならば、水晶が光る。
そうでないなら何も起こらない。
しかし今回は状況が違った。
「え?!」
水晶に触れた直後、光を放ち始めたのは水晶ではなくエリシオの左腕。
「どこに隠れてるかと思ったら、そこだったのか」
シアンがフッと笑う。
「勇者エリシオ、君の剣はそこに在る。利き手をかざしてごらん」
言われて、困惑しながらもエリシオが右手をかざすと、その手に光が集まり剣の形をとった。
剣、正しくは日本刀。
他の王族と同じく、勇者セイルの抜刀術を継承するエリシオに使いやすい形状のものが現れた。
「ねえシアン、これって伝承とちょっと違うよね?」
手に入れてしまった聖剣に、エリシオは戸惑う。
王家に伝わる話では、聖剣に選ばれたら水晶が光るとされていた。
「君の場合、ちょっと特殊なケースだからね」
このイレギュラーな事態を予測していたのか、シアンは冷静だ。
「特殊?」
「君はね、聖剣を宿して生まれてきたんだよ」
シアンの言葉に、エリシオは更に困惑する。
「とりあえず、ここでの用事は済んだからセイラのところへ戻っていいよ」
「う、うん」
「くれぐれも、聖剣を置いて帰らないでね!」
「わ、分ってるってば!」
シアンにまで念を押され、エリシオは苦笑した。
プルミエ王族が聖剣を手にする事は珍しくない。
近年ではエリシオの曾祖父にあたる人物、先々代のプルミエ国王が授かっていた。
それから約100年、時期的にはありえる事だが、聖剣が体内に入ってたとはどういう事なのか。
「おかえり。予想通りね」
出迎えたセイラも冷静に言う。
エリシオが手にして戻ったのは、鞘に白い花を抱く青い竜が描かれた刀。
美術的な価値も感じられる美しいデザインだ。
エリシオはセイラに案内され、今度は神樹の間を訪れる。
そこには、示し合わせたように大神官が待っていた。
代々の勇者は神樹の根元に立ち、精霊の祝福を受ける。
神樹の枝葉の間には御使いと呼ばれる緑の羽根の妖精が棲んでいて、勇者が来ると寄って来る。
慕う妖精の数が多いほど勇者の魔力が多いらしいが…
「…うん、やっぱり全員ね」
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彼女にとってそれは、懐かしい光景だった。
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