上 下
3 / 123
第1章:双子の誕生

PROLOGUE:孵化

しおりを挟む


 ───…原初、神は「ニンゲン」を創り、知恵を与えた。
 ニンゲンは道具を創る事を覚え、やがて文明を築いた。
 彼等の文明は驚くほど早く発展し、栄華を極める。
 ニンゲンたちは、他の生き物たちへの影響を考えない。
 文明の発展の陰で、多くの生き物が滅びていった。

 神はそれを憂えて、ニンゲンを戒めようとした。
 けれどそうする前に、彼等は自滅してゆく。
 欲を極めた一部のニンゲン同士の争いが、世界を巻き込む戦争を呼ぶ。
 ニンゲンは、自らが生み出した物によって、この世界から消滅した。

 次に神は「ネコ」を創り、知恵を与えた。
 しかし、ニンゲンの失敗を知る神は、文明の発展に抑制セーブをかけた。
 自然と共に生きるように。
 戦争を起こさないように。

 この書を、神霊タマ・ヌマタに託す…───

 アサケ国立学園図書館禁書【はじまりの書】より




 殻を割って外に出て、ボクが最初に見たもの。
 それは、スヤスヤ眠る可愛い赤ん坊だった。
 赤ん坊の髪は最初は白かったのに、見る間に色が変わって鮮やかな赤色になった。

 この子は誰だろう?
 どうして髪の色が変わったんだろう?
 ボクは首を傾げて赤ん坊を見つめた。

「お前の名前はフラム。そして、その赤ん坊がお前の御主人様だよ」

 後ろから誰かが話しかけてきた。
 振り返ってみたら、赤い髪の男の人がいた。
 男の人の肩に乗ってる赤い鳥が自分と同じ生き物だと、ボクは本能的に分る。
 そして、ボクが生まれて初めて見た赤ん坊が、ボクの御主人様なんだと認識した。

「お前の御主人様の名前はモチ・エカルラート・セレスト。エカと呼んであげなさい」
「はい」

 ボクは赤ん坊に視線を戻した。
 白い肌に赤い髪がよく映える。
 ボクの羽根と同じ色の髪に変わった子。
 その色が、これから仕える御主人様の証だと、ボクには分る。
 エカという愛称を持つ子は、今は長い睫毛に縁どられた瞼を閉じて、気持ちよさそうに眠ってる。
 顔立ちは女の子みたいに可愛らしいけど、男の子だ。
 その寝顔を見ていると、穏やかで温かな感情に心が満たされてゆく。

「よろしくね、エカ。これからはボクが君を護るよ」

 話しかけて頬にスリスリしたら、エカは眠ったまま笑うように口元を緩めた。
 あ、笑ってくれた。と思ったら、ボクは幸せな気持ちになってきた。


 ボクは、不死鳥フェニックスと呼ばれる生き物。
 主が負傷した時は涙が癒しの力となり、主が老いずに死した時は炎が復活の力となる。

 何故不死鳥のボクが御主人様に仕える事になったのか。
 それはエカが持つ、魔法の力の為だった。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界転生特典があまりにも普通だけど最強でした。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1

【画像あり・モチ編完結・イオ編連載中】転生双子の異世界生活

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:491pt お気に入り:11

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7,329pt お気に入り:2,201

こんなやつらと異世界大冒険!?〜神様だって異世界転生〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:56pt お気に入り:2

異世界冒険者

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

異世界の魔法使い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:0

処理中です...