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第1章:双子の誕生
PROLOGUE:孵化
しおりを挟む───…原初、神は「ニンゲン」を創り、知恵を与えた。
ニンゲンは道具を創る事を覚え、やがて文明を築いた。
彼等の文明は驚くほど早く発展し、栄華を極める。
ニンゲンたちは、他の生き物たちへの影響を考えない。
文明の発展の陰で、多くの生き物が滅びていった。
神はそれを憂えて、ニンゲンを戒めようとした。
けれどそうする前に、彼等は自滅してゆく。
欲を極めた一部のニンゲン同士の争いが、世界を巻き込む戦争を呼ぶ。
ニンゲンは、自らが生み出した物によって、この世界から消滅した。
次に神は「ネコ」を創り、知恵を与えた。
しかし、ニンゲンの失敗を知る神は、文明の発展に抑制をかけた。
自然と共に生きるように。
戦争を起こさないように。
この書を、神霊タマ・ヌマタに託す…───
アサケ国立学園図書館禁書【はじまりの書】より
殻を割って外に出て、ボクが最初に見たもの。
それは、スヤスヤ眠る可愛い赤ん坊だった。
赤ん坊の髪は最初は白かったのに、見る間に色が変わって鮮やかな赤色になった。
この子は誰だろう?
どうして髪の色が変わったんだろう?
ボクは首を傾げて赤ん坊を見つめた。
「お前の名前はフラム。そして、その赤ん坊がお前の御主人様だよ」
後ろから誰かが話しかけてきた。
振り返ってみたら、赤い髪の男の人がいた。
男の人の肩に乗ってる赤い鳥が自分と同じ生き物だと、ボクは本能的に分る。
そして、ボクが生まれて初めて見た赤ん坊が、ボクの御主人様なんだと認識した。
「お前の御主人様の名前はモチ・エカルラート・セレスト。エカと呼んであげなさい」
「はい」
ボクは赤ん坊に視線を戻した。
白い肌に赤い髪がよく映える。
ボクの羽根と同じ色の髪に変わった子。
その色が、これから仕える御主人様の証だと、ボクには分る。
エカという愛称を持つ子は、今は長い睫毛に縁どられた瞼を閉じて、気持ちよさそうに眠ってる。
顔立ちは女の子みたいに可愛らしいけど、男の子だ。
その寝顔を見ていると、穏やかで温かな感情に心が満たされてゆく。
「よろしくね、エカ。これからはボクが君を護るよ」
話しかけて頬にスリスリしたら、エカは眠ったまま笑うように口元を緩めた。
あ、笑ってくれた。と思ったら、ボクは幸せな気持ちになってきた。
ボクは、不死鳥と呼ばれる生き物。
主が負傷した時は涙が癒しの力となり、主が老いずに死した時は炎が復活の力となる。
何故不死鳥のボクが御主人様に仕える事になったのか。
それはエカが持つ、魔法の力の為だった。
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