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第2章:森の外へ

第12話:1000年前の魔法

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「さあアズ、特賞の賞品をみんなに見せてあげるのニャ」

きっと自分も見たくてウズウズしてるんだろう、王様がヒゲをピーンと張って言った。

「特賞の賞品は水の神様の加護か魔法だったな、どっちを貰った?」

漁業組合のオジサンまでワクワクしてるみたい。
100年ぶりに出るような賞品だものね、気になるよね。

「えっと、魔法を貰いました」
「「魔法?!」」

アズが答えたら、女の子たちが声を揃えて聞き返す。
既に何を貰ったか知ってるエカは、ちょっと落ち着いたのか真顔だけど鼻の穴は広げなくなった。

「魚を獲ったり、狩りをする時に役立つ魔法らしいです」
「水神様は命中率や成功率を上げる魔法を幾つか持っておられるから、多分その1つだな」

アズの話を聞いたオジサンが、桟橋の脇に停泊中の船から銛を1本取り出してアズに渡した。

「まず魔法を使って、その後そこに赤い魚がいるから、銛で突いてみな」

オジサンが指差す海中には、水面近くをスイーッと泳ぐ赤い魚がいた。

「はい。えーと…水神の必中ティアマト!」

アズが起動言語キーワードを言ったら、すぐ近くに小さな水の龍が現れて、アズの周囲をぐるんと回って身体の中に入ってゆく。
微かな青い光が、アズの全身を覆った。

「なっ?! え?! マジかよ!」

なんかオジさんが1人でびっくりしてる。

アズは言われた通り赤い魚を狙って、えいっと銛を突き出す。
銛は見事に獲物を捕らえて、赤い魚をブッスリ突き刺した。

「お~!」
「やったニャ」
「すごーい!」
「獲れてる~!」

見物していた面々が口々に言った。

「………」

灰色シマシマの大柄な猫人オジサンだけが、呆然とした顔でシッポを膨らませてる。

「獲れました」

銛に刺さってピチピチ動いてる魚を、アズはオジサンに手渡した。

「あ、ああ。驚いたな、その魔法を貰ったのか」

ハッと我に返ってオジサンが言う。

「………?」
「全ての攻撃や投擲を成功させる、そりゃこの世に1人だけ持つ事を許された魔法だ」
「それを持ってたのは、1000年以上前に暴れ回る大海蛇を倒した勇者だったニャン」
「えっ? じゃあ凄い魔法なの?!」
「特賞の人がよく貰うものじゃないの?」
「この世に1人だけ持てる魔法…」

キョトンとするアズにオジサンと王様が説明したら、ローズとエアが聞く。
高い魔法の素質を持ってきたエカは、魔法の稀少さに興味を持ったみたいだ。


爆裂魔法の使い手になるエカは後に、複数のレア魔法を覚える事になる。
でもこの時はまだ、珍しい魔法があるという事を知っただけだった。
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