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第10章:魔王の心臓
第99話:幻惑の花
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コッコとケコに救出されたソナは、隠密スキルが作り出す特殊な空間で保護された。
姉妹は姿や気配を隠しながらエカたちのところへ戻って来ると、薬学の知識があるエアに未だ意識が戻らないソナを診てもらった。
「ソナちゃんが飲まされたのは、幻惑花の蜜か、それに似た効果を持つ薬だと思う。エカにあげた解除薬だけでは治らない」
医学部在籍のエアは指先でソナの額に触れ、【状態検査】の医療魔法を使ってソナを調べた結果を告げる。
水色の羽毛に覆われた聖歌鳥の背中の上、エアに抱かれたソナは深い眠りに落ちたまま目覚める気配が無い。
「解毒薬と、精神魔法での治療が要るけど、ここでは落ち着いて治療してられないね。学園に帰るまで護ってて」
健康状態の確認を終えると、エアは後ろに乗っているコッコにソナを託した。
治療はエアの作った解毒薬と、エカが使える精神魔法【癒しの夢】が必要らしい。
戦闘中のこの場ですぐ治療は無理との事で、ソナは隠密空間でコッコとケコに護ってもらう事になった。
「漆黒の点で表示される者がソナちゃんの近くにいたからルルちゃんかと思ったんだけど、知らない黒髪の男の子だったの」
「他の魔族とは容姿が全然違うから、魔王の分身または本物かもしれない」
姉妹は、拘束生物に締め上げさせたまま放置してきた少年の事も報告した。
分身なら一定のダメージを受ければ消滅するけど、少年は消えなかった。
魔族や魔王を探知する大きなメダル型の魔道具は、今も少年がいた位置に黒点を表示している。
「そっちが魔王だとしたら、こっちの黒点がルルだね」
エカも渡されている魔道具を見つめて言う。
ルルと思われる漆黒の点は、魔族が密集する城の中央部に表示されていた。
一方、アズはエカたちと念話で情報を共有しながら、魔族が集まる城内中央ホールまで来ていた。
魔工学部に作ってもらった魔族探知の魔導具は、この近くに漆黒の点を表示している。
それを中心に、放射状に魔族と思われる灰色の無数の点が広がっていた。
さっき置き去りにしてきた少年を示す黒点は、全く移動していない。
「ルル、いるの?」
呼びかけても、返事は無かった。
密集する異形の群れが隠している奥に、ルルはいるんだろうか?
魔族たちが密集しながらつかみかかってくる。
武器や魔法が当たらないなら、素手で捕まえようと考えたらしい。
一斉に伸びてくる異形の手は、アズを捉える事は出来なかった。
「ルル、いるなら返事して」
アズは身軽に跳躍して、前方にひしめき合う魔族の頭を踏んで飛び越えながら進む。
それはまるで、岩から岩へ飛び移って川を越えるような感じ。
踏まれた魔族たちは、自らの手は触れられないのに、アズには踏まれる理不尽さに解せぬ顔になった。
姉妹は姿や気配を隠しながらエカたちのところへ戻って来ると、薬学の知識があるエアに未だ意識が戻らないソナを診てもらった。
「ソナちゃんが飲まされたのは、幻惑花の蜜か、それに似た効果を持つ薬だと思う。エカにあげた解除薬だけでは治らない」
医学部在籍のエアは指先でソナの額に触れ、【状態検査】の医療魔法を使ってソナを調べた結果を告げる。
水色の羽毛に覆われた聖歌鳥の背中の上、エアに抱かれたソナは深い眠りに落ちたまま目覚める気配が無い。
「解毒薬と、精神魔法での治療が要るけど、ここでは落ち着いて治療してられないね。学園に帰るまで護ってて」
健康状態の確認を終えると、エアは後ろに乗っているコッコにソナを託した。
治療はエアの作った解毒薬と、エカが使える精神魔法【癒しの夢】が必要らしい。
戦闘中のこの場ですぐ治療は無理との事で、ソナは隠密空間でコッコとケコに護ってもらう事になった。
「漆黒の点で表示される者がソナちゃんの近くにいたからルルちゃんかと思ったんだけど、知らない黒髪の男の子だったの」
「他の魔族とは容姿が全然違うから、魔王の分身または本物かもしれない」
姉妹は、拘束生物に締め上げさせたまま放置してきた少年の事も報告した。
分身なら一定のダメージを受ければ消滅するけど、少年は消えなかった。
魔族や魔王を探知する大きなメダル型の魔道具は、今も少年がいた位置に黒点を表示している。
「そっちが魔王だとしたら、こっちの黒点がルルだね」
エカも渡されている魔道具を見つめて言う。
ルルと思われる漆黒の点は、魔族が密集する城の中央部に表示されていた。
一方、アズはエカたちと念話で情報を共有しながら、魔族が集まる城内中央ホールまで来ていた。
魔工学部に作ってもらった魔族探知の魔導具は、この近くに漆黒の点を表示している。
それを中心に、放射状に魔族と思われる灰色の無数の点が広がっていた。
さっき置き去りにしてきた少年を示す黒点は、全く移動していない。
「ルル、いるの?」
呼びかけても、返事は無かった。
密集する異形の群れが隠している奥に、ルルはいるんだろうか?
魔族たちが密集しながらつかみかかってくる。
武器や魔法が当たらないなら、素手で捕まえようと考えたらしい。
一斉に伸びてくる異形の手は、アズを捉える事は出来なかった。
「ルル、いるなら返事して」
アズは身軽に跳躍して、前方にひしめき合う魔族の頭を踏んで飛び越えながら進む。
それはまるで、岩から岩へ飛び移って川を越えるような感じ。
踏まれた魔族たちは、自らの手は触れられないのに、アズには踏まれる理不尽さに解せぬ顔になった。
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