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第11章:その先にあるもの
第109話:冒険者たち
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初等部から高等部まで短期間に飛び級して卒業検定までクリアしたエカと、編入試験を合格して高等部に入り、卒業検定もクリアしたソナ。
2人は、クロエたちと共に卒業してギルドに登録し、冒険者パーティーを結成した。
学園在学中に組んでいたメンバーで卒業後もパーティーを組む事はよくある。
同時に卒業したアズも誘ったのだけど、ルルと2人で組みたいとの事で断られていた。
卒業検定の最上級ボスを少人数でクリアしたクロエたちとソナの冒険者ランクはA級。
類稀なる魔法の才を持ち、アサギリ島の魔王討伐隊に参加したエカはS級。
アズのような目立つ活動をしていなかったので、エカは特S扱いにはならなかった。
エカ本人は冒険者ランクはほとんど気にしてなくて、タワバが狩れたら何でもいいらしい。
結婚から25年、エカ45歳。
世界樹の民は成人後は見た目の年齢がほとんど変わらないから、20歳と容姿は同じだ。
「タワバ、タワバ、高級タワバ♪」
アサケ王国北部、イベルの街から更に北にある海岸の洞窟に向かうエカは、そこで狩れるというホッカイタワバを楽しみに、踊るような足取りで森の中を進んでいた。
「ちょっとエカ、いい歳して子供みたいにはしゃがないで」
背後で苦笑するのはクロエ。
「そうよ、もうすぐお父さんになるのに」
同じく背後で苦笑するマリン。
「世界樹の民はいつまでも若々しくていいな」
ガハハと笑って言うのはチャデ。
猫人たちも見た目が老けないから、3人とも成人間もない頃の若々しさを保っていた。
この時、ソナは懐妊が分かって冒険者活動を休止し、エカと暮らす家で主婦として生活していた。
エカはソナに栄養のある美味しい物を食べさせたくて、品質が良いと評判のホッカイタワバを狩りに来ている。
ちなみにホッカイタワバと名付けたのは異世界人で、ホッカイは北の海という意味のニホン語らしいよ。
「は~やく狩りたい、高級タワ…ぶぁっ?!」
先頭ではしゃいでいたエカが、突然スッ転んだ。
「もう、だから言ったのに」
「って、なんか前にも似たような事あったわね」
クロエが苦笑する横で、マリンがそんな事を言う。
確かに、前もあったね。
「つ、冷た……いぃっ?!」
雪まみれで起き上がるエカが何か見つけて驚き、雪を掘り返した事も以前あったね。
「あ、もしかして……」
「また異世界人?」
「なんだ、また見つけたのか?」
後方の3人の予想通り。
「フラム、蘇生を!」
雪の中から異世界人らしき者を抱き起こして、エカがボクを呼ぶのも同じ。
違うのは、獣にやられたような大怪我をしている事と、見つけたのは少女じゃなくて少年だった事かな。
蘇生しようとして、ボクは気付いた。
『エカ、その子まだ生きてるよ』
「え? 生きてるの?!」
「はいエカ、これ」
聞き返したエカの言葉で察したマリンが、そっと小瓶を差し出してくる。
その小瓶の中身は、瀕死の者も瞬時に回復する完全回復薬。
意識の無い重傷者がいる場でそれを差し出す意味は、学園の卒業生なら誰でも分る。
飲ませろ、と。口移しで。
「……」
エカが鼻の穴広げて真顔になった。
助けを求めるように他の3人を見ても、みんな目を合わせようとしない。
本来なら、瀕死の者を前にこんな悠長な事はしてられないんだけど。
万が一お亡くなりになってもボクが蘇生出来ると分かってるせいか、少々緊迫感が足りない。
『嫌ならボクが蘇生するから、死ぬまで待ってていいよ』
『うぅ……さすがにそんな可哀想な事は出来ない……』
エカ、自分の時は完全回復薬使うより死んで蘇生する方が早い、とか言うくせに。
『アズ! すぐ来て!!』
結局、エカはアズに助けを求めた。
「どうしたの?」
互いの居場所を行き来出来る魔導具はまだあるから、アズはすぐ来てくれた。
「こ、これ……頼む」
エカは鼻の穴広げて真顔になりながらアズに小瓶を手渡し、腕の中でグッタリしている瀕死の異世界人らしき少年もそっと差し出す。
「飲ませればいいの?」
問いかけるアズに、エカはコクコクと頷く。
少年の上半身を支えるように抱き、顔を上向かせると、口移しで完全回復薬を飲ませる。
それを一切の躊躇いなく出来てしまうアズを見て、クロエたちは目を丸くした。
頼んでおいて何だけど、エカも目が真ん丸になった。
「この子はお城へ連れて行くよ」
「うん」
薬の効果が出て瀕死の重傷から気を失っているだけの状態に変わった少年を抱いて、アズはアサケ王城へ転移して行く。
「アズってば、全然動じないのね」
「ほんと、慣れてる感じ」
ちょっと驚いてシッポを膨らませながら、クロエとマリンが言う。
「勇者ってお姫様を助けたりキスしたり結婚したりするんだろ? だから慣れてんじゃねえか?」
チャデが適当な事を言ってるよ。
アズは勇者だけど、助けたりキスしたり結婚したりしたのは、お姫様じゃなくて魔王だ。
2人は、クロエたちと共に卒業してギルドに登録し、冒険者パーティーを結成した。
学園在学中に組んでいたメンバーで卒業後もパーティーを組む事はよくある。
同時に卒業したアズも誘ったのだけど、ルルと2人で組みたいとの事で断られていた。
卒業検定の最上級ボスを少人数でクリアしたクロエたちとソナの冒険者ランクはA級。
類稀なる魔法の才を持ち、アサギリ島の魔王討伐隊に参加したエカはS級。
アズのような目立つ活動をしていなかったので、エカは特S扱いにはならなかった。
エカ本人は冒険者ランクはほとんど気にしてなくて、タワバが狩れたら何でもいいらしい。
結婚から25年、エカ45歳。
世界樹の民は成人後は見た目の年齢がほとんど変わらないから、20歳と容姿は同じだ。
「タワバ、タワバ、高級タワバ♪」
アサケ王国北部、イベルの街から更に北にある海岸の洞窟に向かうエカは、そこで狩れるというホッカイタワバを楽しみに、踊るような足取りで森の中を進んでいた。
「ちょっとエカ、いい歳して子供みたいにはしゃがないで」
背後で苦笑するのはクロエ。
「そうよ、もうすぐお父さんになるのに」
同じく背後で苦笑するマリン。
「世界樹の民はいつまでも若々しくていいな」
ガハハと笑って言うのはチャデ。
猫人たちも見た目が老けないから、3人とも成人間もない頃の若々しさを保っていた。
この時、ソナは懐妊が分かって冒険者活動を休止し、エカと暮らす家で主婦として生活していた。
エカはソナに栄養のある美味しい物を食べさせたくて、品質が良いと評判のホッカイタワバを狩りに来ている。
ちなみにホッカイタワバと名付けたのは異世界人で、ホッカイは北の海という意味のニホン語らしいよ。
「は~やく狩りたい、高級タワ…ぶぁっ?!」
先頭ではしゃいでいたエカが、突然スッ転んだ。
「もう、だから言ったのに」
「って、なんか前にも似たような事あったわね」
クロエが苦笑する横で、マリンがそんな事を言う。
確かに、前もあったね。
「つ、冷た……いぃっ?!」
雪まみれで起き上がるエカが何か見つけて驚き、雪を掘り返した事も以前あったね。
「あ、もしかして……」
「また異世界人?」
「なんだ、また見つけたのか?」
後方の3人の予想通り。
「フラム、蘇生を!」
雪の中から異世界人らしき者を抱き起こして、エカがボクを呼ぶのも同じ。
違うのは、獣にやられたような大怪我をしている事と、見つけたのは少女じゃなくて少年だった事かな。
蘇生しようとして、ボクは気付いた。
『エカ、その子まだ生きてるよ』
「え? 生きてるの?!」
「はいエカ、これ」
聞き返したエカの言葉で察したマリンが、そっと小瓶を差し出してくる。
その小瓶の中身は、瀕死の者も瞬時に回復する完全回復薬。
意識の無い重傷者がいる場でそれを差し出す意味は、学園の卒業生なら誰でも分る。
飲ませろ、と。口移しで。
「……」
エカが鼻の穴広げて真顔になった。
助けを求めるように他の3人を見ても、みんな目を合わせようとしない。
本来なら、瀕死の者を前にこんな悠長な事はしてられないんだけど。
万が一お亡くなりになってもボクが蘇生出来ると分かってるせいか、少々緊迫感が足りない。
『嫌ならボクが蘇生するから、死ぬまで待ってていいよ』
『うぅ……さすがにそんな可哀想な事は出来ない……』
エカ、自分の時は完全回復薬使うより死んで蘇生する方が早い、とか言うくせに。
『アズ! すぐ来て!!』
結局、エカはアズに助けを求めた。
「どうしたの?」
互いの居場所を行き来出来る魔導具はまだあるから、アズはすぐ来てくれた。
「こ、これ……頼む」
エカは鼻の穴広げて真顔になりながらアズに小瓶を手渡し、腕の中でグッタリしている瀕死の異世界人らしき少年もそっと差し出す。
「飲ませればいいの?」
問いかけるアズに、エカはコクコクと頷く。
少年の上半身を支えるように抱き、顔を上向かせると、口移しで完全回復薬を飲ませる。
それを一切の躊躇いなく出来てしまうアズを見て、クロエたちは目を丸くした。
頼んでおいて何だけど、エカも目が真ん丸になった。
「この子はお城へ連れて行くよ」
「うん」
薬の効果が出て瀕死の重傷から気を失っているだけの状態に変わった少年を抱いて、アズはアサケ王城へ転移して行く。
「アズってば、全然動じないのね」
「ほんと、慣れてる感じ」
ちょっと驚いてシッポを膨らませながら、クロエとマリンが言う。
「勇者ってお姫様を助けたりキスしたり結婚したりするんだろ? だから慣れてんじゃねえか?」
チャデが適当な事を言ってるよ。
アズは勇者だけど、助けたりキスしたり結婚したりしたのは、お姫様じゃなくて魔王だ。
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