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第12章:魔王が遺したもの

第115話:名付けと贈り物

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「君は【リヤン】と名付けよう。異国の言葉で【絆】という意味だよ」

愛し子を抱いて、エカは微笑みながら名を与えた。

父エカ・母ソナから生まれてきた子供は、母親似の男の子。
世界樹の民は白い髪、目が開いていない状態で生まれてくる。
その髪色は召喚獣を与えられると変化し、それと共に目も開く。

「不死鳥の里へ行ってくるよ」

エカはそう言って、不死鳥の里へ向かった。
かつて、エカの父ジャスさんがそうしたように。
事前にボクが里にいる両親に念話で知らせておいたから、エカの頼み事はすんなり受け入れてもらえた。

『この子の名はリアマ。あなたの子と良き縁で結ばれますように』

そう言って託されたのは、不死鳥の女の子。
孵化間もない、目の開いてない雛を懐で温めながら、エカは息子の元へ急いだ。

籠の中で眠る赤ん坊の枕元に、雛鳥をそっと置く。
雛鳥が目を開けた時に視界に入らないように後ろへ回り、エカは目覚めの言葉を紡いだ。

覚醒エヴァイユ

雛鳥リアマが目を開けて、赤ん坊リヤンを見つめる。
純白だったリヤンの髪が鮮やかな赤に変わり、開かれた瞳も宝石のような赤。

「君の名はリアマ、そこにいる赤ん坊が君の主人マスターだよ」

エカが優しい声で話しかける。
彼とボクが出会った頃と似た光景が見られて、なんだか懐かしかった。


召喚獣との契約が済んだ後は、親族や友人たちへのお披露目だ。

「「かわいい~!」」

孫を抱いたフィラさんと、隣に寄り添うジャスさんが揃って声を上げた。
周囲の騒がしさなど聞こえていないのか、リヤンはスヤスヤと眠っている。

「俺にも抱っこさせて。あ~可愛いなぁ~」

子供好きのアズも、宝物を扱うように慎重に抱っこした。
赤ん坊を慈しむアズの優しい笑みに少し切なさが混じっているのは、ルルの死と共に逝った胎児を想ったからかもしれない。
その胎児の転生者は今、アズの隣にいる。

「ほらルイ、君の従兄弟だよ」
「な、なんか壊れそうで抱っこするのが怖いんですけど……」
「横抱きにして、腕で頭と首を支えるんだよ」

自分の番が回ってきて緊張しながら抱っこするルイに、アズがアドバイスした。
アズはルルと共に世界各国を旅していた頃に孤児院に寄り、子守りを手伝った事があるらしい。

「どれどれ、ばぁばが可愛いひ孫に贈り物をあげようね」

ジャミ様は、守護の効果がある刺繍を施した産着をくれた。
病気や怪我をせず健康に育つように、と願いを込めてくれた刺繍は、白い花の形を描いている。

「私は子守歌を贈るね」

ローズはリヤンを抱っこして、愛歌鳥ルベライトの聖女と呼ばれるに至った癒しの歌声を披露する。
その歌声は肩にとまる愛歌鳥ユズによって広げられ、世界樹の森全体に流れてそこに棲む生物たちを癒した。

「これはソナが食べてね。クロエたちが採ってきてくれた木の実でクッキーを作ってみたの。母乳に効果が出るから赤ちゃんが元気に育つよ」

エアは新作のお菓子をくれた。
サクサクしたクッキーの中にカリッとしたナッツが入った香ばしいお菓子は、後に出産祝いとして贈られる人気商品となった。
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