【本編完結】やいまファンタジー、もうひとつの世界

BIRD

文字の大きさ
3 / 81
第1章:算数のない世界へ

第1話:気をつけて(キーシキタボーリ)

しおりを挟む
 


 ぼくは城間しろま七海ななみ、小学6年生。
 小学2年生から、ぼくは算数が苦手になった。
 足し算・引き算はできるよ。
 ぼくの敵は【九九】だ。
 ニニンがナントカっていうあれが、ぜんぜん覚えられない。
 物覚えが悪いとか、そういうわけじゃないみたい。
 国語の漢字の読み書きは、すぐに覚えたよ。
 植物や鉱石の名前も、しっかり覚えている。
 ゲームに出てくる魔法まほうやスキルの名前と効果は、全部覚えて説明ウインドウを見なくても分かるくらいだ。
 九九だけがダメ。
 だから、かけ算ができない。
 テストのときは、数字を足し算して答えていたんだけど、学年が上がるとどんどん難しくなっちゃって、今日のテストは0点だった。

 どうしよう。
 もうすぐ夏休みなのに。
 友だちと遊ぶ約束したのに。
 お父さんやお母さんに知られたら、夏休みが勉強まつりになるよ。
 学習塾がくしゅうじゅくに通えって言われるかもしれない。
 そんなのはぜったいイヤだ。
 0点の答案用紙を、家族に見られないようにしよう。
 そういえば、この前読んだマンガに「黒歴史は封印ふういんすべし」って書いてあったな。
 この答案用紙はぼくの黒歴史だ、封印ふういんしなきゃいけない。

 ぼくは家の物置小屋からスコップを持ち出して、自転車に乗って出発した。
 行き先は、泳いじゃダメって言われていて、あんまり人が近寄らない海岸。
 そこなら、砂遊びをする子もいないから、きっと見つからないと思う。

 だれもいない海辺に来たぼくは、辺りを見回して答案用紙をうめる場所を考えた。
 どこにうめようか?
 そうだ、あそこの大きなガジュマルの木の下にしよう。

 ぼくは岩に巻き付くようにはえている木に近づいて、スコップで根もとの砂や土をほった。
 地面がやわらかいから、とてもほりやすい。
 なるべく深くほって、穴の底に答案用紙を置いたとき、だれかに後ろからいきなり声をかけられた。

「はいさーい!」
「うわぁっ?!」

 びっくりして、さけんじゃったよ。
 海水浴できない海辺に、いるのはだれ?!
 あわてていたら、ブワァッと風がふいて、答案用紙が飛ばされてしまった。

 大変だ!
 もしもだれかに見られたら、ぼくの黒歴史がバレちゃう。

 ぼくは声をかけてきただれかより先に拾うため、答案用紙を追いかけた。
 服がぬれてもかまわず海に入っていたら、後ろでだれかがさけんだような気がする。
 何を言ったか聞こえないし、それどころじゃない。
 なかなか答案用紙をつかめなくて、必死で追いかける。
 あとちょっとで追いつけるって思ったとき、急に海が深くなって、ぼくは転んでしまった。

 起き上がれない! 足がつかない! こわい!
 泳ごうとしたけど、上手く泳げない。
 助けてって言おうとしたら、口の中に海水が入ってきた。
 しょっぱい! 息ができない!
 苦しくて頭がぼうっとしてきたとき、だれかがぼくの後ろから手をのばして、水の中から助け出してくれた。
 水を飲んじゃってむせていたら、ぼくの背中をさすってくれている。

 だれ? って聞こうとした。
 けど、ゲホゲホとむせて、しゃべれない。
 やっとしゃべれるようになって、後ろにいる人をふり返って見たら、かみの毛が赤い子供がいる。

「え? キジムナー?」

 キジムナーなら、島ではだれでも知っている。
 人間に似ているけれど、人ではない「精霊せいれい」という生き物だ。
 だけど、見た人はほとんどいない。
 ぼくも見るのは初めてだよ。
 めったに会えないキジムナーが、ぼくを助けてくれたんだ。

「助けてくれたの? ありがとう!」
「お、おぅ」

 感動したぼくがきついたら、キジムナーはちょっと困ったような声を出した。
 あんまりベタベタされるのは、好きじゃないのかな?
 でもその後、キジムナーはぼくの手を引いて立ち上がらせてくれた。
 キジムナーは優しいって聞いたことがあるけど、そのとおりだなって思う。
 立ち上がって足もとを見たぼくは、水面に立っていることに気づいた。
 キジムナーは水の上を歩けるって図書館の本に書いてあるよ。
 その力で、ぼくも水の上にいるんだ。

「よし、とにかく岸にもどるぞ」
「うん」

 キジムナーに手を引かれて海の上を歩き始めたとき、ぼくたちの足元に光るものが現れた。
 光は円をえがいて、そこに知らない文字がいっぱいうかび上がってくる。

「うわっ! なんだこの光!」

 キジムナーもビックリしている。
 キジムナーの力とはちがうみたいだ。
 なにか見えない縄みたいなものが足元からのびてきて、ぼくたちにからみついてくる感じがした。
 足もとにある光の円は、ゲームやアニメに出てくる魔法陣まほうじんに似ている。

「なんかこれ、魔法陣まほうじんみたいだよ?!」

 だからぼくは、そう言った。
 でも、キジムナーの力じゃないなら、だれの力だろう?

 光の円の真ん中に開いた穴に、ぼくとキジムナーは引きずりこまれた。
 これってもしかして、マンガやアニメによくある異世界転移?
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート

谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。 “スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。 そして14歳で、まさかの《定年》。 6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。 だけど、定年まで残された時間はわずか8年……! ――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。 だが、そんな幸弘の前に現れたのは、 「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。 これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。 描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。

クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました

藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。 相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。 さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!? 「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」 星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。 「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」 「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」 ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や 帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……? 「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」 「お前のこと、誰にも渡したくない」 クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。

【完結】夫に穢された純愛が兄に止めを刺されるまで

猫都299
児童書・童話
タイムリープしたかもしれない。中学生に戻っている? 夫に愛されなかった惨めな人生をやり直せそうだ。彼を振り向かせたい。しかしタイムリープ前の夫には多くの愛人がいた。純愛信者で奥手で恋愛経験もほぼない喪女にはハードルが高過ぎる。まずは同じ土俵で向き合えるように修行しよう。この際、己の理想もかなぐり捨てる。逆ハーレムを作ってメンバーが集まったら告白する! 兄(血は繋がっていない)にも色々教えてもらおう。…………メンバーが夫しか集まらなかった。 ※小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、Nolaノベル、Tales、ツギクルの6サイトに投稿しています。 ※ノベルアップ+にて不定期に進捗状況を報告しています。 ※文字数を調整した【応募版】は2026年1月3日より、Nolaノベル、ツギクル、ベリーズカフェ、野いちごに投稿中です。 ※2026.1.5に完結しました! 修正中です。

この町ってなんなんだ!

朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

処理中です...