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第2章:算数0点、魔術100点
第12話:優秀(ジョートー)
しおりを挟むオイラは姿をかくしたまま七海たちについて行って、七海が読んでいる本をコッソリ後ろから見た。
魔術書に書いてある魔術の中には、オイラが使う力と似たものがある。
たとえば、昨日リッカが使っていた「火球」。
火の玉を作り出して、自由に動かす魔術だ。
オイラは術の名前なんか言わなくても、火を起こしたいと思えばできるけどな。
それと、「大風」。
強い風をふかせて、いろいろな物を飛ばす魔術だ。
オイラは七海のテストの紙を飛ばしたときみたいに、自由に風を起こすことができるぞ。
あと、「水歩行」。
オイラみたいに水の上を歩いたり走ったりできるらしい。
これが使えたら、海でおぼれたりすることはないな。
「では、魔術の適正を見てみましょうか」
先生はそう言って、七海に1枚の紙を差し出した。
ほうほう、さっそくテストか。
紙には魔術の効果だけが書いてあって、その下に魔術の名前を書くというテストだ。
「全部答えられなくてもいいのですよ。一度にいくつ覚えられるかを見て、今後のスケジュールを組むためのものですからね」
なるほど。
生徒に合わせて授業を進めてくれるのか。
「1つでも答えられたら優秀だぞ。本を1回読んだだけで覚えられるヤツはほとんどいない」
リッカがそんなことを言っている。
それで気が楽になったのか、リラックスしてテストを受けた七海は、ふたりが思っていた以上の結果を出した。
「なんと、全て覚えられたのですか」
「うん」
後ろで見てたオイラもビックリしたぞ。
七海は、1回読んだだけで、魔術書の内容を全部覚えていたんだ。
「異世界のナナミは優秀だな。こっちのナナミは、何回読んでも覚えられなくて、テストでずっと0点をとっていたぞ」
「えっ」
朝の授業が終わった後、リッカが七海にコッソリ言った。
七海は0点という言葉に反応して、ドキッとしている。
そりゃそうだよな、魔術じゃないけど七海も0点をとっているから。
「0点ってことは、魔術を1つも使えないってことだ。こっちのナナミはたぶん、魔術の適正が無かったんだろうな」
「0点は、適正が無い……」
つぶやきながら、七海は何かに気づいたみたいだった。
もしかして、七海が算数のテストで0点をとったのも、適正がないからか?
「きっとお前ならすぐ魔術を使えるようになるぞ。にぃにぃがお手本を見せてやるから練習場へ行こう」
「うん!」
リッカにさそわれて、七海はうれしそうについて行く。
ふたりが向かった先は、昨日リッカが魔術を使っていた練習場だ。
「魔術の練習のときは、この腕輪をつけるんだ。魔力が少なくなると、赤く光って知らせてくれるぞ」
リッカはポケットからキレイな石がついた腕輪を出して、自分の手首にはめた。
そういえば、昨日たおれたときは、それをつけていなかったな。
「昨日はこれをつけ忘れたから、魔力が無くなるまで魔術を使ってしまったんだ」
腕輪を見ている七海に、リッカははずかしそうに顔を赤くして言う。
そうかそうか、自分の魔力が少なくなったことに気づかなくて、大きな力を使ったから気絶したのか。
プンプンおこって、八つ当たりみたいに魔術を使っていたものな。
「今日は腕輪が光ったらやめるから、たおれたりしないぞ」
そう言ったあと、リッカは七海に基本の魔術を見せてくれた。
ゴルフボールくらいの大きさの火の玉、水の玉、石ころ。
手の近くだけでクルクル回る風も。
「いいなぁ魔術、ぼくにも使えるようになるかな?」
「ナナミはもう魔術の名前を覚えたから、使いたい魔術のイメージがハッキリ心の中にうかんだら、できるようになるぞ。あとは、魔力がどのくらいあるかだな」
「魂の鏡で調べてもらったときは、魔力のところをよく見てなかったよ」
「あれは国宝だから、めったに使えないぞ。腕輪なら職人に作ってもらえるから、それをつけるといい」
「職人、どこにいるの?」
「あとで連れていってやるよ」
話しながら、リッカが右手を空へ向けた。
何か大きな魔術を使うのかな?
七海もワクワクしながら見ているぞ。
「今日は調子がいいみたいだ。腕輪もまだ光らないし、最後に大きいのを見せてやるよ」
「リッカにぃにぃ、頑張って~!」
七海に応援されて、リッカは気分がいいのかニッと笑う。
リッカが使った「大きいの」は、なんかのゲームで勇者が使うような魔術だった。
「雷よ落ちろ!」
リッカは空へ向けた右手を、的に向けてサッとふり下ろした。
ドーンッ! って大きな音がして、カミナリが落ちてきたぞ。
七海はビックリして3秒くらい固まったけど、すぐに感動の声を上げた。
「すごい! 勇者みたい! リッカにぃにぃカッコイイ!」
「うむ。にぃにぃは英雄の子孫だからな。カッコイイんだぞ」
七海は感動すると、だきつくクセがあるんだな。
リッカは七海にだきつかれながらカッコイイと言われて、満足そうに笑っている。
それからリッカは自分の腕輪を見て、アレッ? と少し驚いた顔になった。
「変だな。そろそろ赤く光りそうなくらい魔力が減ったはずなんだが」
「腕輪、こわれたのかな?」
リッカがつけている腕輪は、全く光っていない。
七海も言っているけど、オイラも腕輪がこわれたかと思ったよ。
「もう少し火球でも使ってみるか。七海、オレが気絶したらお前の部屋に運んでくれ」
「うん」
そんな話をした後、リッカが5回くらい火球を使うと、腕輪が赤く光った。
リッカは気絶しなかったけど、ちょっとねむたそうだ。
「こわれてないみたいだな。よし、今日はこれくらいにしてひるねしよう」
と言ってリッカが向かったのは、七海の部屋。
七海がひとりぼっちでさびしがってないか心配するお兄さんのフリ、まだ続けるのか?
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