【本編完結】やいまファンタジー、もうひとつの世界

BIRD

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第2章:算数0点、魔術100点

第16話:強い心(チューバーククル)

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 あぁ驚いた~あきさみよ~
 まさかあのタイミングでリッカが目を覚ますとは思わなかったぞ。
 魔力マジグテーっていうのは心のエネルギーみたいなもんだろ?
 それを使い切って気絶したやつが、なんであんなに早く目を覚ますんだ?

 オイラはにげたフリをして、姿を消したまま七海とリッカが仲直りするのを見守った。
 七海は本当にリッカが好きだなぁ。
 パパやママがいない世界で、七海がさびしいと思わないのはリッカがいるからだろうな。
 リッカも七海が好きなんだな。
 だからヤキモチを焼いたんだろう。

 ふたりは仲直りしたあと、いつものように仲良くくっついてスヤスヤねている。
 リッカは七海に「これからもよろしくね」って言われたら、安心したようにまた気絶してしまった。
 やっぱりまだ魔力はほとんど無かったんだろう。
 よくあんなに話せるくらい起きていられたもんだ。

 あれか? 人間たちが言う「気力」とかいうやつか?
 体を動かす体力がもう残っていないときや、ねむくてたまらないときに、あとひとふんばりするために使う力。
 リッカは気が強いからな。
 だから、ふつうならまだ気絶しているはずなのに、目を覚ましたんだろう。
 自分がたおれたあとに七海がどうしたか、気になったのかな?

 そんなことを考えていたら、リッカの中からフワ~ッと白いけむりみたいなものが出てきて、人の姿になった。
 キレイな女の人、顔はリッカにそっくり。
 リッカが大人の女の人になって、黒髪くろかみに変わったみたいな人だ。
 七海もリッカもねむっているから、女の人には気づいていない。

 ゆうれいか? まぼろしみたいに姿が半分すけているぞ。
 悪いゆうれいではなさそうだけど。
 女の人は、優しくほほえみながら七海を見つめたあと、白いけむりになってリッカの中にもどっていった。

 なんだなんだ?
 あの人、いつもリッカの中にいるのか?
 っていうか、だれなんだ?

 よく分からんが、悪いゆうれいじゃないなら、まぁいいか。
 オイラは、ふたりのジャマをしないように、そっと部屋の外へ出た。


 そのまま、城の中を歩いていたら、大台所おおだいじょのほうから、あまくていい香りがしてきた。
 黒糖くるざーたーの香りだ。
 のぞいてみたら、クレープみたいなものを焼いているのが見えた。

 おお、あれはオイラの世界にもある「ちんびん」だ。
 小麦粉に水と黒糖をまぜて、クレープみたいにうすく焼いて、クルクルと巻物みたいに巻いたやつ。
 クレープとちがって具は入ってないけど、黒糖のあまさがあって、それだけでおいしい。

 ちょうど腹がへっていたオイラは、皿に置かれた1つをコッソリいただいた。
 作業をする台の下にかくれてムシャムシャ食べていたら、入ってきた女官にょかんたちの声が聞こえてきたぞ。

「お前たちの分も焼けたぞ。持っていきな」
「はぁい」
ありがとうミーファイユ
「あら? ひとり分足りないみたい」
「おかしいな? 人数分を焼いたはずなんだが」

 どうやら、オイラがつまみ食いしたのは、女官たちのオヤツだったようだ。
 料理人は首をかしげながら、ちんびんをもう1つ焼いている。
 女官たちはそれを待ちながら、おしゃべりゆんたくを始めた。

「マキラさま、ご病気なの?」
「顔色が真っ青で、グッタリしてらしたけど」
魔術マジティーの使い過ぎで、魔力マジグテーきてたおれられたそうよ」
「サイオン先生シンシーは『しばらくねむって魔力が回復すれば目を覚ますから心配ない』と言っていたわ」

 ふむふむ。
 聞いているのは、七海がリッカを運んでいるときにすれちがった女官たちかな?
 答えているのは、七海たちの世話をしている女官たちだな。

「異世界のシロマさまって力持ちなのね。あんなに軽々とマキラさまをだいて歩くなんて」
「こちらのシロマさまは、本より重い物を持ち上げられたことは無かったのに」
「そもそも、シロマさまはマキラさまにさわろうともしなかったじゃない」
「むしろ姿を見ただけで、にげていたわね」

 おいおい。
 ナナミ、どんだけリッカをキライなんだよ。
 七海はあんなになついているのに。

「今はシロマさまが仲良くして下さるから、マキラさまはうれしそうね」
「それに、いっしょに魔術マジティーの練習ができて、楽しそうね」
「そうね。今まではシロマさまがにげてしまわれて、いっしょに何かをすることはなかったから」

 ナナミは、なんでそんなにリッカからにげていたんだろう?
 最初に見たリッカの感じからすると、キツイ言い方をされたからかな?
 でも、リッカは言いたくて言ったわけじゃない気がする。


 女官たちの話を聞いたあと、オイラはコッソリと七海の部屋の様子を見に行ってみた。
 七海とリッカはピッタリくっついてねむっている。
 ふたりとも、幸せそうな顔だ。

 それにしても、さっき見たキレイな女の人はだれなんだろう?
 リッカに顔がソックリだったから、ご先祖さまウヤファーフジかな?
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