【本編完結】やいまファンタジー、もうひとつの世界

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八重山昔話

火正月(ピーションガツ)の話

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 むかしむかし、ある大晦日おおみそかの夜、一人のみすぼらしい姿の旅人が平久保の部落にやって来ました。

「どなたか、一夜の宿をたのめませんか?」
「とんでもない、お断りだよ」

 旅人は頼んで回りましたが、どこの家でもとことわられてしまいます。
 みんな、正月のめでたい席に、みすぼらしい旅人を招きたくなかったのでした。

 部落のはずれに、とてもまずしそうな老夫婦の家があります。
 旅人はその家を最後のたよりと、戸をたたいて呼びかけました。

「すみません、一夜だけめていただけませんか?」
「ごらんのとおり、私達のところにはなんにもありません。せめて火だけでもたいて暖かい正月にしようと話し合っていたところです。それでよかったらどうぞ入って、暖まってください」

 貧しいけれど優しい老夫婦は、旅人を家に招き入れてくれました。

「ありがとう。家に招いてくれたお礼をしましょうね」

 火に当たって暖まった旅人は、ニコニコしながらそう言いました。

 旅人は家の外から木の葉や草をとって来て火のまわりに置き、持っていたつえで何かをつぶやきながらとんとんとたたきます。
 すると、そこには次々とお正月のごちそうが出てきました。

「どうぞ食べて下さい」

 旅人に言われた老夫婦が食べたごちそうは、今までたべたことがないくらい美味しいものでした。
 ごちそうを食べ終えた老夫婦に、旅人はまた言いました。

「お風呂ふろを用意しましたよ。入ってみて下さい」

 老夫婦が家の裏に出てみると、そこには立派なお風呂ができていて、温かいお湯で満たされています。
 そのお風呂に入ると、すーっとからだが軽くなりました。
 不思議に思ってたがいの姿を見てみると、なんと老夫婦は元気な若夫婦になっていました。

(むむっ、あの旅人は福の神の化身か?)

 それを見た、金持ち夫婦がいました。
 金持ち夫婦は旅人をむりやり自分の家につれて行って、たくさんのごちそうを食べさせました。

「私たちにも、風呂の湯をくれ」

 嫌そうにする旅人に無理やり頼んで、金持ち夫婦はお風呂に入りました。
 けれど、金持ちの夫婦は若返ったりはしなくて、ブタになってしまったそうです。
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