31 / 81
第3章:七海の願いとリッカの夢
第29話:火食の神(イリキヤアマリ)
しおりを挟む港を爆破しようとした悪者は、ヤイマ国に火薬や武器を売ろうとして断られた商人が雇ったものだった。
火と知恵の神、イリキヤアマリ様の加護を受けるヤイマ国の人々は、火薬なんか使わなくても強い火の力を使える。
武器なんか持たなくても、魔術で身を守ったり獲物をとったりできる。
だから父上は、輸入しても売れ残るからって断ったらしいんだ。
断られた商人は、それを不満に思って、他の貿易のジャマをしようとしたらしい。
外国人がやったことだから、罰をあたえるのはその国に任せると父上は言った。
悪いことを考えた商人も、爆弾をしかけたオジサンたちも、今後はヤイマ国に立ち入ることを禁止されるそうだよ。
「父上、今年はオレとナナミも出ます」
「うむ、許可しよう」
翌日、リッカにいにぃとぼくは、王族の魔術披露に参加することを伝えに行った。
城間家のおじぃに似ている(髪の毛は赤いけど)父上は、何も聞かずにOKしてくれた。
「本当は、ふたりとも部屋で休んでいてほしいのだけど」
「オレは最近体の調子がいいから平気だ」
「ぼくはもともと元気だから、だいじょうぶだよ」
母上は、めずらしくリッカにぃにぃだけじゃなく、ぼくの心配までしている。
魂戻しで生き返らせてもらったぼくは、ケガは完全に治っているし、痛くも苦しくもない。
「イリキヤアマリさまのお告げで、リッカとナナミも参加させるようにとのことだからな」
「ぼくは弥勒さまから『強い魔術を他国に見せてやりなさい』って言われました」
「ならば、参加するべきであろうな」
父上に言われて、リッカにぃにぃとぼくはたがいの顔を見て、ヨシとうなずき合った。
空に星々が輝くころ。
リッカにぃにぃとぼくは、大きいにぃにぃたちといっしょにお城の中庭に来た。
「光魔術は人々を楽しませるだけじゃなく、夜空の向こうから近付こうとする魔物をはらう役割もあるんだよ。リッカもナナミも今年が初めてだから、最初はぼくたちの魔術を見ていてね」
そう言って、カズマにぃにぃがほほえむ。
一番上のカズマにぃにぃから順に、魔術で光の舞を見せるらしい。
「天の群星!」
ガスマにぃにぃが片手を夜空に向けると、その手からうずまく光が現れて、打ち上げられる花火のように空へとのぼり、花のように広がった。
大きな光の花が、夜空に美しく開いた。
その後に、リュウジにぃにぃ、シュウゾウにぃにぃ、シロウにぃにぃ、シンゴにぃにぃが続く。
はなやかな光の花々に照らされて、ヤイマ城はライトアップされたみたいに見えるよ。
「次はオレたちだな」
リッカにぃにぃがぼくを見て言う。
何度もふたりで練習した、光の魔術をみんなに見せるときがきた。
「天の川!」
「星の魚!」
リッカにぃにぃの光が川のように夜空に広がり、ぼくの光がたくさんの魚になって、その川を泳ぐ。
大きいにぃにぃたちがなんども打ち上げる光の花が、その周囲を飾る。
「もうひとつ、大きいのを出すぞ」
「うん!」
魔力に余裕のあるリッカにぃにぃが作り出したのは、アカハチさまをイメージした光の人形。
続いてぼくが作り出したのは、クイツバさまをイメージした光の人形。
2つの人形は手をつなぎ、バッと散って無数の光の雨になって地上へ降り注いだ。
まるで世果報雨のようだった、と、ヤイマの人々は言っていたらしい。
その光の雨は癒しの力を持っていて、浴びた人たちはケガや病気が治ったそうだよ。
お城の外から、わーっとたくさんの人々の歓声が上がる。
その声にはヤイマ国の民だけじゃなく、外国の人たちもまじっているはず。
演じているぼくたちも、見ている人たちも、みんなが楽しんで、幻想的な光の時間は終わった。
……その後……
ぼくがこの世界のナナミだと知ってから、大きいにぃにぃたちがやたらとかまってくるんだけど。
どうすればいい?
「ナナミ~っ!」
「だきしめてもいいかい?」
「もうひとりのナナミにはかまってもらえなくて、にぃにぃたちはさびしかったぞ」
にぃにぃたちを前に、ぼくは思わず後ずさりした。
どうやらぼくの代わりにこの世界にいたナナミは、大きいにぃにぃたちのことも避けていたらしい。
そりゃあこんなデッカイ体で近付かれたら、にげたくなるけど!
「えっ? やだ。にぃにぃたち力強すぎて骨が折れちゃう」
「ナナミ、にげるぞ!」
そんなとき、いつもリッカにぃにぃが助けてくれる。
リッカにぃにぃとは、ずっといっしょに生活しているよ。
ぼくにだきついたリッカにぃにぃの【帰還】で、今日も脱出成功だ。
「まぁ~た、デカイにいにぃたちからにげてきたのか?」
「あっ、ムイ来てたの?」
「おう。ミジュンがいっぱいとれたから、カラアゲを作ってもらいに来たのさ」
ぼくに巻きこまれてこの世界に来たキジムナーのムイは、弥勒さまから「元の世界へ帰してやろうか?」と言われたそうだよ。
でも、この世界が気に入ったから残ることにしたと言っていた。
最近は割と堂々と城の中を歩き回っていて、海でとってきた魚を大台所で料理してもらっている。
「おどろくほど健康になられましたね。これならシロマさまといっしょに学校へ通えますよ」
「ほんとうか?!」
この世界の健康診断は、ぼくがいた世界よりもカンタンだ。
命の鏡っていう道具があって、それにふれるだけで健康状態が分かる。
リッカにぃにぃの健康診断に来たお医者さんは、ニッコリ笑ってうれしいお知らせをしてくれた。
リッカにぃにぃは今までは病気ばかりしていて、学校には通えていなかったらしい。
年下のナナミが学校へ行くようになって、くやしくてイジワル言ったこともあったそうだよ。
今ではナナミがで0点をとったのをからかってしまったことを、後悔しているみたいだ。
「リッカがこんなにも元気になったのは、きっとナナミがいっしょにいてくれるからね」
「きっとそうだ。ナナミが近くにいると、体の調子がいいぞ」
母上は、リッカにぃにぃが健康になったおかげで、心配性が減ってきたみたいだ。
リッカにぃにぃは、ぼくから何か力をもらっているみたいだと言う。
そういえば、弥勒さまが、ぼくは赤毛の兄弟に力をあたえられるみたいなことを言っていたような?
「我が国に兵器は要らぬ。強すぎる火は人を苦しめるだけだ」
あるとき父上は、兄弟全員を呼んでそう言った。
子孫の代になっても、外国から兵器を仕入れてはならない、と、父上は特にカズマにぃにぃに言い聞かせている。
「魔術がある限り、この国は滅ぶことはない。子々孫々までイリキヤアマリさまと共にあれ」
「はい」
父上の言葉に、カズマにぃにぃがうなずいた。
カズマにぃにぃがいつか王様になって、その子供が王様になっても、火と知恵の神様と共にいてほしいね。
31
あなたにおすすめの小説
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
この町ってなんなんだ!
朝山みどり
児童書・童話
山本航平は両親が仕事で海外へ行ってしまったので、義父の実家に預けられた。山間の古風な町、時代劇のセットのような家は航平はワクワクさせたが、航平はこの町の違和感の原因を探そうと調べ始める。
クールな幼なじみの許嫁になったら、甘い溺愛がはじまりました
藤永ゆいか
児童書・童話
中学2年生になったある日、澄野星奈に許嫁がいることが判明する。
相手は、頭が良くて運動神経抜群のイケメン御曹司で、訳あって現在絶交中の幼なじみ・一之瀬陽向。
さらに、週末限定で星奈は陽向とふたり暮らしをすることになって!?
「俺と許嫁だってこと、絶対誰にも言うなよ」
星奈には、いつも冷たくてそっけない陽向だったが……。
「星奈ちゃんって、ほんと可愛いよね」
「僕、せーちゃんの彼氏に立候補しても良い?」
ある時から星奈は、バスケ部エースの水上虹輝や
帰国子女の秋川想良に甘く迫られるようになり、徐々に陽向にも変化が……?
「星奈は可愛いんだから、もっと自覚しろよ」
「お前のこと、誰にも渡したくない」
クールな幼なじみとの、逆ハーラブストーリー。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
アリアさんの幽閉教室
柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。
「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」
招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。
招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。
『恋の以心伝心ゲーム』
私たちならこんなの楽勝!
夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。
アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。
心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……??
『呪いの人形』
この人形、何度捨てても戻ってくる
体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。
人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。
陽菜にずっと付き纏う理由とは――。
『恐怖の鬼ごっこ』
アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。
突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。
仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――?
『招かれざる人』
新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。
アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。
強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。
しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。
ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。
最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
