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第36話:古代の遺産

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「はじまりの書にタマは神霊と書いてあるけど、神霊はこの世界の物を食べたり出来るの?」

校庭の焼肉パーティと片付けが終わった後、俺は図書館を訪れた。

「ボクは物質界のものじゃないから通常は食べられないんだけど、今は君と繋がってるから食べられるよ」

と答えた後、タマは差し入れを美味しそうに食べ始めた。

「俺と同期シンクロしてる感じ?」
「うん。イオはボクが見えて、ボクが作った食べ物を食べたからね」

タマは俺が関わった物なら、干渉出来るという。
日本のイタコみたいに、人間の身体に霊を憑依させたりしなくていいらしい。

「ごちそうさま。美味しかったよ」

食べ終えて、タマは満足そうに微笑んだ。

笑うと可愛さ大アップなタマは、神霊だから性別は無い。

というか猫型獣人たちも、男女の違いがイマイチ分からないけどね。
とりあえず、声の違いでなんとなく性別を予想してるよ。


「じゃあ、今日はこれを読んでもらおうかな」

そう言って、タマが差し出す1冊の本。

【身体強化魔法】

「…なんか、あんまり禁書っぽくないタイトルだね」

率直に感想を述べる俺。

「うん。現代にも似た効果の魔法があるし、隠す必要ないかもってボクも思うよ」

タマも苦笑して同意した。

「イオは完全回避をもってるから戦闘で一切ダメージを負わないけど、攻撃に使えるスキルや魔法がまだ無いでしょ?」
「うん」

確かに、今の俺は標的になって敵を集める事しか出来ない。
ダンジョンでもイノシシ狩りでも、攻撃は他の人任せ。
ちょっと虚しい気がしてたから、狩りに使える手段が増えるのは嬉しい。


渡された本を開いてみると…

◆火神の激怒
一撃のダメージを大幅に上げる

◆水神の必中
物理攻撃・魔法の命中率が100%になる

◆地神の慈悲
体力が半分以下の敵を即死させる

◆風神の息吹
行動の素早さが大幅に上がる


…魔法の名前と効果が書いてある。

古代の遺産なだけあって、現代の初級魔法より強そうな強化魔法だ。

それぞれの効果説明の下には共通して、こんな文章が…

習得しますか? はい / いいえ


「タマ、これって…」
「はいの文字に触れたら習得するよ」

…ゲームっぼいものキタ!

はいの文字に触れると、文字が光り、その光が指先から全身を覆い、身体に吸い込まれるように消えた。

「これで習得出来たよ。後で試してみてね」

ニッコリ笑うタマ。

俺は読み終えて習得も済ませた本を棚に戻し、前回借りた本もタマに返却した。

どういう種類の効果かはなんとなく分かったけど、性能は実際に試してから。
明日の野外授業で、使ってみよう。
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