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第75話:長くてニョロニョロしたのは嫌い

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 女子寮エリア。

 2階の男子寮エリアとは階段で繋がってるけど、男子は基本的に近寄らない。
 別に禁止はされてないけど、入ってはいけないようなオーラを感じると誰かが言ってた。
 俺とモチは談話室くらいは行くけどね。
 そんな女子寮の廊下に、男女入り混じって人が群がってる。

 集団からちょっと離れた位置にワープした俺。
 モチも来てたので声をかけてみた。

「女子寮にヘビが出たって?」
「お、おう」

 モチが鼻の穴広げて真顔で言う。

 この展開、もしかして……

「リユちゃんの部屋に出たんだけど……」
「えっ?!」
「……パニックになったリユちゃんがボコり倒した」
「………」

 ……あ、やっぱり。

 妹の部屋に出たと聞いて一瞬焦ったけど。

「リユちゃん泣いてるから、なぐさめてあげて~」

 部屋の中からヒョッコリ顔を出して、カジュちゃんが言った。

「リユ、大丈夫?」

 呼びかけて部屋に入ってみる。

「うえぇ~ん! おにいちゃぁん!」

 抱きついてくる妹の背後、巨大ヘビが転がってる。

「こわかったよぉぉぉ~!」

 リユ、号泣してるけど、君それ倒してるやん。ってツッコミは心の中だけにしておこう。

 妹はヘビが大の苦手だ。
 幼い頃に1回噛まれた事があって、トラウマになってる。
 長くてニョロニョロしたのは嫌い! って言って動物園ではヘビエリアへ行くのを拒否するくらいだ。
 なのに巨大ヘビなんか出たら、そりゃあもうパニックだったろう。

 とりあえず、ウサギと同じくナデナデしておこう。

 俺がリユをなぐさめてる間に、モチが掃除用具入れからホウキを出して、ヘビの方へ歩いてゆく。

 ツンッ、シーン。
 ツンツンッ、シーン。
 ツンツンツンッ、シーン。

「目標は、完全に沈黙しました」

 ヘビをつついてみたホウキ片手に、ドヤ顔のモチ。
 それ言いたかったから確認に行ったな?

「モチ、それ収納して研究棟に持ってって」
「OK」

 近くにいるついでに、モチの異空間倉庫ストレージに収納してもらって、ヘビ撤去完了!
 これでリユも落ち着くかな。

「ほらリユ、アレはもう片付けたよ」

 落ち着かせる為に言ってみた。

「じゃ、ロッサ先生んとこ行ってくる」
「モチ、片付けてくれてありがとう~」

 ヘビを収納後、部屋を出て行くモチを、ホッとした様子でリユが見送る。

 この部屋に侵入したヘビは、一体何を狙ったんだろう?
 これまでは鳥とかウサギとか、捕食するものがいるところに現れてたけど。

「リユ、この部屋で鳥とかウサギとか、飼ってる?」
「うん」

 聞いてみたら、リユは机の引き出しを開けて見せてくれた。

「ピヨッ?」

 ヒョッコリ出てくる、水色のヒヨコ。
 夜店みたいな着色したものじゃなく、自然な生まれつきの水色ヒヨコだ。

「ピヨちゃん。春の森で小鳥たちにパンあげてたらタマゴもらったの」
「ピヨピヨピヨ」

 リユの姿を見た途端、水色ヒヨコが口開けて羽根をプルプル震わせ始めた。
 メシくれアピールだ。

「もらった……?」
「手の上でパン食べ終わった後、タマゴ産んで帰ってったの。お礼かな?」

 ってリユは言ってるけど。

 お礼というより、子育て押し付けられたんじゃなかろーか。

 でもこんな小さいもの、なんで巨大ヘビが狙ったんだろう?
 食べるとこ少ないよね?
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