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 ここに、首に赤いマフラーをたなびかせ、顔には何やら朝の子ども向け番組に出てそうな被り物をした、全体的に白色の装いの長身の男がいたッ!

 そして、それに対峙するように、華奢な身体を黒色の装束が纏い、そこから所々網タイツのようなものをのぞかせ、さらにその一部は網からはみ出ないか周りが心配するものも携えていた。

 さながらそれはネットに入ったミカン、もしくはビニールの半ネットに何とか収まっているメロンであった。

 髪は腰まで伸びた黒髪を一本に束ね、顔には申し訳程度にロボット作品の敵キャラが付けていそうな仮面をしている女がいたッ!

 ここ、とある高校の屋上に、朝早くから2人はいたッ!!

 「出たな惑惑魔忍のカロリーナ!」

 「は、はい!出ました!!///」

 「また悪さをするつもりだな!」

 「あ、はい!今日もガンバって悪戯し、しちゃいます!!///」

 「来い!打ち倒してやる!」

 「こ、恋!?///し、しかも押し倒す!?///」

 カロリーナの仮面下の顔がみるみる赤くなっていく。

 「はぁ~~~~///む、無理ですぅ~///今日はこのくらいにしておきます~~~!!///」

 そう言うや否や、彼女は足元に煙幕を投げ込み、煙の充満した屋上から姿を消したのであった。

 特に何をするでもなく。


 「……な、何だったんだ……?」













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 とある高校の放課後の教室。

 部活に行く者、帰宅する者、寄り道する算段を立てている者、教室でおしゃべりする者、各々がそれぞれの時間を過ごす中、浮かない顔をした黒髪の女子生徒が1人いたッ!

 「あーあ、どうしたら良いんでしょう……。」

 「なーにブツブツ言ってるのよ!」

 「わっ、びっくりした~。急に話しかけないでくださいよ~。」

 「ごめんごめん!」

 この浮かない顔をした黒髪の女子生徒に元気よく話し掛ける女子生徒。

 ちょっと茶髪かかったショートと、頭頂部から生えている一際目立つ髪の束、それと何かを揺らしてひとり、ケラケラと笑っている。

 「で、千代子はなーに独り言言ってたのよー。」

 「な、何でもないですよ~///」

 「あー、待って、当ててあげる!」

 「な、何でもないですってば~///」

 「んー、わかった!」

 「ひぃっ///!」

 「千代子、アンタ、好きな人いるんでしょ~。」

 「///!」

 みるみる顔を赤く染める黒髪の女子生徒。

 「図星でしょ~。」

 「ち、違いますよ~///そんなんじゃないですって~///」

 頭を横にブンブンと振って必死に抵抗する黒髪の女子生徒。

 違うものも顔とシンクロするように動いていた。

 「ふーん、まぁ良いけど。じゃあ、それはそれとして、今年のバレンタインのチョコ、何作るの?」

 「えーとですねぇ、今年はチョコチップクッキーにしようと思います!」

 「こ と し は ?」

 「ぴーーーッ///!!!」

 ただでさえ赤かった黒髪の女子生徒の顔がさらに赤くなり、このままお湯でも沸かせそうなくらい真っ赤になっていた。

 「あらー、やっぱりいるんじゃない、好 き な 人 ♡」

 「……う~///」

 「誰よー。」

 「お、教えません///!」

 「えー、親友じゃん!」

 「それを言うのはズルいですぅ~。」

 「大丈夫大丈夫、別に誰にも言わないわよ。」

 「当たり前ですぅ~!」

 「で、誰なの?学年一イケメンの吉良くん?それとも剛田財閥の御曹司くん?」

 食い入るように攻めるショートの女子生徒。

 「…ゴニョゴニョ。」

 「え、聞こえない。」

 「う、浦山 杉男くんですぅ///!」

 「わーお、またダークホースなところを!」

 「う~///」

 ショートの女子生徒は親指と人差し指でV字を作り、まるで名探偵や刑事のようにふむふむと頭を縦に振る。

 頭頂部の髪の束と何かを揺らしながら。

 「まぁーでもたしかに、結構彼もイケメンだよね。しかも性格も悪くなさそうだし。」

 俯き気味だった黒髪の女子生徒は急に顔を上げて目を輝かせ、首も縦に大きく振って頷く。

 何かもシンクロ(以下略

 「でもさ、千代子のフシギな術?でも使えば彼もアンタにメロメロになるんじゃないの~?」

 「それはフェアじゃないですぅ。」

 「えー、でも忍者って卑怯がウリなんじゃないの?」

 「それはあまりにも偏った知識ですぅ!しかも私はくノ一です~!」

 「あーはいはい、そのくノ一だったらそれこそ【お色気の術】とか使えば彼も男だし悩殺できるんじゃない?」
 「それも偏ってますぅ~!///」

 「じゃあないの?」

 「な、なくは、ないですけど……///」

 「彼のこと、好きなんでしょ?」

 コクリと無言で頷く。

 「じゃあ、とにかくきっかけが大事なんじゃない?いいじゃん、【お色気の術】!」

 「【お色気の術】は勘弁してください……。まだ女子高生ですし……。」

 「う~ん、じゃあ【影分身の術】とかは?」

 「どこで知るんです、そういう知識。」

 「え、一般教養じゃないの?忍者やくノ一はみんなできるもんなんでしょ?」

 「あれ、すごい難しいんですよ。しかも私がたくさんいたら浦山くんびっくりしちゃいますよね??」

 「良いじゃん!仮に千代子が1人死んでも、代わりの千代子がいる、みたいな感じで!」

 「何で私が1人死ぬ前提なんですか!?どんなシチュエーションで私はチョコを渡してるんですか!!?」

 「う~ん、これもダメか。」

 「当たり前です~!!」

 「じゃあ【手裏剣】や【クナイ】に千代子が作ったチョコとラブレターでも付けて、裏山くんの目の前の壁とかに刺さるように投げて渡すとかは?」

 「完全にそれ殺しにきてるか、良くて果たし状じゃないですか!?」

 「でもインパクトはあるよ?」

 「むしろインパクトしかないです~!!」

 「えー、じゃあどうすんのよ?」

 「だから困ってるんじゃないですかぁ~///」

 「あー、じゃあもーわかった!!」

 「えっ。」

 そう言って姿勢を改めたショートの女子生徒は、黒髪の女子生徒にハッキリと告げる。

 「回りくどいことしないで、もう正々堂々渡しちゃえばいいのよ!」

 「そ、それは、恥ずかしいですぅ~///」

 「でもいつかはアタックしなきゃいけない時が来るのよ。」

 「それはそうですけど……。」

 「それが早いか遅いかの違いだけよ。もしOKだったらその分好きな彼と過ごせる時間も増えるじゃないー。」

 「わかります、わかりますけど……。」

 パチンッ

 と指を鳴らす音が聞こえたと同時に

 「じゃあ決まりね!」

 とドヤ顔のショートの女子生徒がそこにはいた。

 「ふぇ?」

 とあまりにも早い、しかも一方的な展開に黒髪の女子生徒は思わず声が出てしまった。

 「今度のバレンタインの結果、ちゃんと聞かせてね!相野 千代子から浦山 杉男への一世一代の大勝負!楽しみにしてるから!」

 「そ、そんな……!///」

 「じゃ、部活あるし、そろそろ行くわ。じゃーねー。」

 そうショートの女子生徒が言うと、脱兎の如く何処かに立ち去ってしまったのであった。

 「うぅ……、それができたら苦労しないんですよぉ……///」

 ひとり残された黒髪の女子生徒は力なく机に突っ伏した。

 「……。」

 「【お色気の術】に【影分身の術】、それに【飛び道具】、ですか……。」

 「……。」

 「…………。」















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またしても、とある高校の屋上で朝から白色(省略)の男と、黒色(省略)の女が対峙していたッ!

 「また出たな!惑惑魔忍のカロリーナ!」

 「え、はい///!出てきてしまいました!」

 「一体お前は何が目的だ!」

 「わ、私は///」

 「私は?」

 「あああアナタの///」

 「オレの?」

 「す、すべてが欲しい、です///!」

 白色(省略)の男に電撃が走るッ!

 「な、何だって!?オレのすべてだと!?」

 「は、はい///で、ですので……、こ、これでも食らってください、ですぅ///」

 「なッ!?」

 黒色(省略)の女はたちまち人数が増え、そのまま空中からクナイの雨を降らし、白色(省略)の男の前の地面、もといコンクリートに刺さった!

 「カ、カロリーナ、いつの間にこんな大技を……!」

 「は、ハイッ///が、がんばりましたから!///」

 「な、中々やるなぁ……!」

 そう白色(省略)の男が感心している中、黒色(省略)の女たちは頬を赤く染め、その頬に両手を当てながら身体をくねくねさせていた。

 大量にコンクリートに刺さったクナイには箱がくっついていた。

 「カロリーナ、これはまさか……爆弾!?」

 「違いますぅ~///」

 そう否定する彼女は1人の女だけを残し、他は消えていた。

 「では一体何だというのだ。」

 「わ、私の口からはい、言えません!///」

 「何ッ!?そんなに危険な物なのか!!?」

 「危なくないですってば~///」

 若干後退りする彼に、彼女は半べそをかいていた。

 「で、ですから///は、は、箱を開けて食らってください、ですぅ~///」

 「まったくもって意味が分からんぞ。」

 「う~///わかりました///」

 そう言う彼女は、頬を赤く染めたまま少し頬を膨らませていた。

 「じゃ、じゃあもう私、今回は帰りますから!///」

 「お、おう。」

 「あ、アナタは正義のヒーローらしく、箱のな、中身を1つ残らず、ちゃんと確認して、そ、そして食らってくださいね///」

 「お、おう。」

 「そ、それとひひ日にちもか、確認していた方が良いと思いますよ///」

 「日にち?日にちが何か関係あ」

 と彼が言い掛けたところを彼女は食い気味で遮った。

 「おおお大ありですぅ~!///」

 突然彼女から聞いたことのない声量で異議を唱えられたことで、彼は少し呆気に取られた。

 コホンッと彼女が咳払いをすると改めて

 「で、では、今度こそホントに帰りますです///」

 と言って、毎度おなじみ(?)の煙幕を放ち、彼女は何処かへまたしても消えていたのであった。

 誰もいなくなった朝の屋上にひとり佇む白色(省略)の男。

 その視線の先には、大量に残されたクナイと、それにくっついている箱が存在感を放ちながら転がっていた。












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 カロリーナの言葉通り、クナイと箱を回収すると、白色(省略)の男は変身を解き、ひとりの男子高校生に戻った。

 「ったく、カロリーナのやつ、一体何のつもりなんだ。」

 そう言って困惑しながら彼は1つ箱を開けると、中にはチョコチップクッキーが入っていた。

 『食らってくださいね。』

 ふと彼女の言葉を思い出す。

 「なるほど……?」

 まだよくわかっていない彼は、もうひとつの彼女の言葉を思い出す。

 『日にちも確認した方が良いですよ。』

 彼はスマホを取り出し、日にちを確認する。

 【2/14】

 「……。」

 「…………。」

 「………………。」

 「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!///」


 箱の中には、彼女の【写真】も入っていた。

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