悪魔の絵馬

ごったに

文字の大きさ
1 / 1

悪魔の絵馬

しおりを挟む
 「明けましておめでとう、ニンゲン。」

 オレは朝目覚めると、黒髪ロングの女子高生らしい存在に話し掛けられた。

 おかしいな。

 オレ以外にこの家には誰もいないはずなんだが。

 そうか、夢か!

 一富士二鷹三なすび、とはいかなかったか。

 いやぁ、残念残念。

 寝直そう。

 おやすみなさい。

 「いやいやいや、現実ですけど~?」

 「いやいやいや、ウチに女子高生がいるわけないんですけど~?」

 咄嗟にオレはそう返してしまった。

 「まぁたしかに?キミ、◯◯っぽいもんね~。いきなりこんな美少女がいたら恥ずかしいかぁ~。」

 イタヅラな目でこちらを見ながらそう言う女子高生みたいな存在。

 「そもそも何でここにいるんだよ。オレは昨日の大晦日は早めに寝たし、酒も飲んでないぞ。」

 「お酒飲んでたら女子高生がいたかもしれないってこと~?」

 「ち、ちげーよ!」

 「ヤダー、図星??」

 「んなことはいいんだよ!何なんだよ、お前は。」

 いかん、すっかりコイツ(女子高生?)のペースだ。

早く帰ってもらおう。

 「はいはい、それじゃあ改めてまして。私はエマ。悪魔で~す。」

 あー、アレか。

 ちょっと「アレな娘」で他人の人の家に入っちゃったか~。

 ……ダブルロック方式に今年からするか。

 「あー、今ちょっと『アレな娘』だと思ったでしょ!?失礼しちゃうなぁ。」

 そう言って後ろに彼女が向き直すと、スカートの中から黒い矢印のようなものがニョロニョロと動いていた。

 「えーっと、そういう?」

 「また失礼なこと考えてるでしょ!?これだから◯◯は。」

 「だっていきなり『悪魔です』って言われて『はい、そうですか。』とはならんでしょーよ!」

 「うーん、じゃあこのシッポ、特別に引っ張ってみても良いよ。」

 いや、そういう趣味はないものですから、あの、その手は何ですか?

 何で掴まされるんですか?

 いやー、やめて~。

 彼女のシッポを無理矢理引っ張らされたが、たしかに抜ける様子はなかった。

 「どう?信じてもらえたかしら。」

 「アッ、ハイ。ソレ デ アクマ ノ エマサン ハ イッタイ ナンノヨウデ コチラ ニ?」

 「怖ッ!急にカタコトなの怖ッッ!」

 「怖いのはこっちだから!悪魔が何の用!?オレの命?悪いけどオレの命に価値なんて無いぜ?何せ彼女いない歴=年齢だし?普通の中年サラリーマンだし?メチャメチャ陰キャのチー牛ですし!?」

 「あー、がんばれ?」

 自分で言ったけど悲しくなってきた。

 「本題だけど、ここだけの話、悪魔界では毎年『ドリームナイト宝くじ』っていうのを年末やってるんだけど、それに何と今回、私が当選しちゃったのよ。3当だけど。」

 「何かすんごい似たような宝くじを知ってる気がする。というか最後に何等が当たったか言う必要無くない?地味に傷つくんだけど?」

 「それでぇ」

 あ、無視したぞコイツ。

 「ニンゲンにわかりやすく説明すると、私たち悪魔は所謂『不幸な出来事』をエネルギーにしているわけなんだけど、一般悪魔はその『不幸な出来事』のエネルギー、あぁ、長くてめんどくさいわね。『BE』って略すけど、そもそも一般悪魔は悪魔界からニンゲン界に行くことがないから、BEを摂取する機会はあまりないのだけど、今回宝くじが当たったからニンゲンの側で間近に摂取しても良いよ~ってなったってわけ。」

 うーん、わかるようなわからないような。

 というか、それってオレはエサってこと?

 「まぁそう。」

 ホント遠慮とかないなー。

 「えっ、じゃあやっぱ命を取られるってことなんじゃ……?」

 急にオレは震えてきた。

 ごめん、オヤジ、オフクロ……。

 オレ、何の親孝行もできなかったけど、でも……

 「いやいやいや、何勝手に走馬灯を見てるの!?命は取らないって言ったでしょ?」

 えー、じゃあ何なんだよー。

 「ずばり『ニンゲン』に不幸になってもらうわ。」

 嫌です。

 「話は最後まで聞きなさい。」

 「飽きてきたんで後はどうぞごゆっくり……。」

 「何でどこかに行こうとしてるのよ!?普通『ニンゲンに不幸になってもらう』って言われたら気になるもんでしょ!?」

 いやだって長いし、命取られないならそれ以上の不幸はオレには別にないし、女子高生だか悪魔だかわけのわからないヤツと話してるほどオレはヒマじゃないからね。

 お正月休みなんてすぐ終わっちゃうんだから、ドンドン年末年始の限定イベントを消化していきたいわけよ。

 「そんなありきたりな人生、変えてみたいと思わない?」

 彼女はニヤリッとしながら指をパチンッと鳴らしてこちらを指さした。

 ごめんなぁ、オレ、もう中年だからあまり環境変わるとキツいんだわ。

 「もー!これだから◯◯は!!」

 「これを見なさい!」

 そう言って彼女は制服のポケットから木の板を取り出した。

 「さぁーて、これは何でしょう?」

 うーん、これはどう見ても……。

 「絵馬?」

 「正解~。」

 悪魔が絵馬って、全く正反対じゃないの?

 属性というか何というか。

 「細かいことは気にしない~気にしない~。」

 それで、これをどうするんだ。

 「この絵馬にキミの「なりたかったもの」を書いてほしいのよ。」

 普通こういうのって『願い』を書くもんなんじゃ?

 「『なりたかったもの』も『願い』みたいなもんじゃない?まぁ、いいから、ちゃちゃっと書いちゃってよ。」

 一応聞くけど、書くとどうなるんだ?

 「その『なりたかったもの』の道の達人の域に一気に達することができるの。」

 ???

 そんな馬鹿な。

 それにBEと何の関係があるんだよ。

 「良い質問ですね~、ニンゲン!」

 な、なんだよ急に。

 「キミがこの絵馬に『なりたかったもの』を書く。するとキミはたちまちその『なりたかったもの』になれるわけ。するとキミは幸せになるわけ。」

 それ、お前が欲しいBEと真逆じゃん。

 「チッチッチ。」

 何かムカつくな~。

 「それは一方向から見た場合でしょ?もっと広い視点で見ないとダメだよ~?」

 話が見えないなぁ。

 「つまり、キミが幸せになれば他の一部のニンゲンはそれを羨んだり、妬んだりしてBEが発生するわけ。それ即ち不幸!それを私は!身近に!新鮮なまま!摂取できる!というわけ。」

 お、おぉ?

 つまりオレはその『なりたかったもの』になれば幸せになれるってことが約束されるってことなのか?

 「まぁそういうこと。」

 んなウマい話、あるわけ……。

 いや、まぁすでに悪魔が目の前にいるからなぁ……。

 そういうことも、あるのか……?

 「普通のニンゲンはそれこそ馬車馬にやってきてやっと掴める幸せを、キミはこの絵馬に書くだけで掴めるってわけ。悪い話じゃないでしょ?」

 ……悪魔の言うことを信じても良いのか?

 「別に悪魔に強制力とかはないから、そりゃあ最終判断は本人になっちゃうけど、少なくとも、悪魔は契約には厳しいからね。」

 なるほど。

 まぁ元々波風の無い人生だったわけだし、いっちょここでやってみるかな。

 「万事塞翁が馬」って言うし。

 「じゃあ書くぞ?」

 「いいねー、はい、じゃあどうぞ~。」

 そう言って彼女は絵馬を渡してきた。

 「楽しみだわ。キミが何を書くのか。」

 そんな大したことは書かないさ。

 「ほぼ何でも良いからね~。何を書くのかなぁ。スポーツ選手?芸能人?はたまた有名絵師やインフルエンサー?何かな何かなー??」

 オレの横でニヤニヤしてる悪魔、エマ。

 突然オレの前に現れたかと思ったらまさに「夢物語」みたいなことを信念早々から言い始めて。

 どうなっても知らないからな!

































 【目の前のエマと結婚して幸せな家庭を築く男になる】






















 絵馬に『なりたいもの』を書くや否や、絵馬とオレとエマは光り出した。

 「ちょ、ちょっとキミ!何書いたの!?何で私まで!??」

 オレは書いた絵馬をエマに見せた。


【目の前のエマと結婚して幸せな家庭を築く男になる】

 「ハァアァアァァ!???馬鹿じゃないの???」

 いや、だって「何でも良い」って言ったじゃん。

 「だからっていきなりそんなこと書くかな普通!?」

 お前だっていきなりオレに訳わかんないことばっかり言ったじゃん。

 だからお互い様だよ。

 「え~~~、マ?」

 マ!

 「そもそもそこに、愛はあるんか?」

 それはこれから築いていくよ。

 「馬には乗ってみよ、人には添うてみよ」って言うしね。

 まぁこの場合、「馬」じゃなくて「悪魔」だけどね。

 「やかましいわ!」

 「とにかく!書いたからにはその、つまり……。」

 ンンン~ッ?

 「あーもう!私もキミも幸せになるわよ!!」

 「これじゃあどっちが悪魔かわからないわよ……!」

 彼女の顔は赤くなり、怒ってるのか泣いてるのか、笑ってるのか、よくわからない表情でオレに怒鳴ってきた。





 こうして何の前触れもなく、まさに馬のように駆け抜けてニンゲンと悪魔は幸せな家庭を築くために結婚しましたとさ。

 愛でたし。

 愛でたし。

 え?

 どんな家庭を築いて、どんな風に幸せになったのかって?

 それはまた別のお話。

~終~
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

私は逃げ出すことにした

頭フェアリータイプ
ファンタジー
天涯孤独の身の上の少女は嫌いな男から逃げ出した。

処理中です...