飽くまで悪魔です

第一章

プロローグ

暗闇に街灯の光が明滅する。
時計の針は、二時半を指して止まっている。
山を切り開いて作られた大学のキャンパスで、燃え上がる青い炎を背にして、褐色の少年が笑っている。

その背にはコウモリのような翼が生えていた。
その腰には大蛇のような尾が生えていた。
その手には身の丈を超える大剣が握られていた。
その頭には、二本の角が生えていた。

その姿は、まるで悪魔のようだった。

俺は薄れゆく意識の中、ぼんやりその姿を視界に収めていた。

「……ヨルくん」

俺がそう声をかけると、少年は不思議そうに、そして少しばかり嬉しそうに笑って答える。

「なあに、アサヒくん」

明滅していた街灯はやがて消え、青い炎もおさまって、少年を照らすのは輝く月光のみとなる。
その少年に向けて、俺は言った。

「君は、本当に。悪魔だったんだね」

背後に輝く月に照らされながら。立派な角と、翼を、尾を生やした褐色の少年は。
まるで悪戯のばれた子供のように、ぺろりと舌をだしつつもはにかむように笑った。

ああ、今日は不思議な一日だったなあなんて考えながら、俺の意識は、そこで途絶えた。