最強超人は異世界にてスマホを使う

萩場ぬし

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魔獣の魔王

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 俺たちは町に到着すると結界をすり抜け、恐らくルディが住むであろう豪邸の庭へ着陸する。
 馬車から降りると恐らく彼女の使用人であろう者たちが出迎えてくれていた。

「おかえりなさいませ、お嬢様」

 ただその光景がかなり異様で、ただ使用人に出迎えられることに慣れてないだけでなく、その使用人のほぼ全員が男から女に至るまで筋肉質な肉体をしていた。完全にルディの趣味全開じゃねーか。

「……始めて拝見するお顔もありますが、そちらの方は?」

「筋肉神よ!」

「なるほど、この窮地をお救いにいらっしゃった救世主様でしたか」

 やめて?「筋肉神」とかいう新しいワードで混乱しかかってるのに当たり前のようにその意味を深くまで理解して会話を進めようとしないで?なんで話が通じてるんだよ。
 ここの奴らからすればこの会話は日常茶飯事なんだろうか……と、他の奴らの顔色を窺ってみると全員のうちの数人は表情には出していないが困惑しているのが見て取れた。よかった、理解してないのは俺だけじゃなかったみたいだ。

「そういうわけでこれから魔王様に謁見しに行きます。皆様はここに残る者と町へ避難誘導をする者に分担して行動してください。サイス、あとは頼みました」

「留守はお任せください。お嬢様もくれぐれご注意なさるよう……」

 身長が二メートル近くある初老の男が深く頭を下げ、ルディは「もちろん!」と堂々と答える。この執事、まるでジークを筋肉で膨らませて巨大化させたみたいな奴だな……
 そんな異様という感想しか出て来ない出迎えを過ぎて早速その敷地から出て、魔王がいるとされる場所へと案内される。
 町の雰囲気は剣呑というか、魔物の大群がすでにすぐそこまで近付いていることで大騒ぎとなっていた。
 しかしそれでもパニックになっているというわけでもなく、ただ忙しそうにしつつ冷静に避難誘導などがされている。

「結界があるとはいえ、バカみたいな数の魔物がすぐそこまで迫って来てる災害みたいな状況なのに意外とみんな落ち着いてるな」

「それほどこの町の結界は信頼されていますから。それに魔王様の存在が何より大きいので、その安心感があると思います。あの人の強さは他の魔王様の中でも指折りなのですよ……あ、ほら――」

 ルディが上を見ると、魔王がいるであろう大きな城の方向から光線のようなものが放たれ、町の外で大きな爆発が起きる。
 その攻撃を見た民衆は騒ぐどころかなぜか歓喜して盛り上がっていた。まるで祭りやパレードでも見たような反応だ。

「もしかして今のは……」

「えぇ、魔王様です。凄いでしょう?魔族でもここまで強い魔法を軽々と放てる方はそうはいませんわ。あの強さがあるからこそ魔物や侵略者から守ってもらえるという安心感を皆が得られるのです」

 ルディがここまで褒めちぎる魔王様とは一体どんな奴なのか……コイツ好みの筋肉マッチョだったりしてな?なんて少し気になる。
 すると空から何かが……いや、「誰か」が降ってきた。

 ――ズドンッ!

 大砲の砲弾でも着弾したんじゃないかってくらいの轟音と振動。周囲の奴らも何があったのかと集まって覗いてくる。
 ……あれ、またデジャヴ?でも流石に今回はルルアじゃないよな……?
 そして砂煙が立ち込める中から現れたのは――

「やぁやぁ、おかしな気配を感じると思って来てみれば筋肉好きのルディ嬢じゃないか。奇妙な匂いをした奴と一緒にいるな?」

「魔王様!」

 ルディが魔王と呼んだソイツはルルアほどの幼い少女の外見をしており、しかし妙な身体的特徴をしていた。
 魔族のような黒い目と黄色い瞳、青い肌。同時に獣の耳と尻尾を生やし、手足にも体毛が生えて獣人のようにも思えた。
 しかしその姿は獣魔会議では見た覚えがない気がする……

「魔王……その子が?」

「魔王様に向かって『その子』って……わかってはいましたけどやっぱり当たり前のように不敬な態度ですね……魔王様、この方はワタクシが連れて参りました協力者のカズ様です」

「ああ、聞いてるよ。獣魔会議には出席できなかったから直接見れたわけじゃないけど、君が今話題の人間さんなんだろう?」

 そう言ってその魔王は興味深々といった感じに俺たちの方まで近寄ってきて顔を見上げてくる。あの会議にはいなかったのか、道理で見覚えがないはずだ。

「俺様はニト、種族的には……まぁ、獣魔ってところかな」

 独特な一人称でニトと名乗ったソイツは少女の声質や骨格をしているから性別はきっと女でいいだろう。だが……獣魔?

「彼女は獣人と魔族の間に産まれたお方なんです。そしてその二つの種族が持つ特徴をどちらも強く引き継いでいるんです。獣人よりも強靭な肉体と魔族よりも多い魔力量を持つから魔王様であらせられるのですわ!」

 俺が何を考えているのか察したようにルディが答え説明し、それにニトは照れたようだった。

「相変わらず褒めてくれるね~♪ ……で、何の縁があってか人間の君がルディと知り合い、援軍として来てくれたってことか?まぁ、軍というには数が心もとないけれど」

 それはきっと俺一人では戦力不足だと言うように挑発的な発言をしてくるニト。意図的には悪意はなく、俺がそれで怒るのか調子に乗るのか様子見、といったところか……

「まぁな。とはいえ、さっきの魔法をまだいくらでも撃てるっていうなら俺が来なくてもよかったんじゃないかって思えるんだけどな」

「ははは、まさか。ルディが何て言っておだてたかはわからないけど、あんなのを連続でポンポン撃てはしない。もう少し時間があればまた放てるがな。だがこの町の結界を維持しながらだ、魔力の回復が上回っているとはいえ消費してる分時間もかかるし、二、三発撃って動けなくなるよりは一発だけ撃って数を減らした後で直接殴りに行った方が確実だと思わないか?なぁ、人間の強者よ」

 その質問には「まぁ」と適当に答えながら、仮面を被っているにも関わらず人間と見抜かれてたことに動揺して顔を触る。するとニトは含みのある笑みをして俺たちの横を通り過ぎて行く。

「じゃ、俺様はこっちに行く。お前……えっと、名前は?」

「カズ」

「カズ。俺様とは反対の方向を行って殲滅してくれ。他の魔王たちから注目されるほどなのだから、それくらいの実力はもちろんあるのだろう?」

 ニトはわかっているかのように俺の答えを待たずそのまま行ってしまう。

「相変わらず意地悪な言い方……安心してください、カズ様。後でそちらにも冒険者をお送りしますので、先に行って少しでも数を減らしていただければ――」

「いや、邪魔だから来なくていいぞ。むしろ巻き込みたくないから、すでにその場にいる奴らにも引くよう伝えてくれ」

「――え?」

 俺も困惑するルディの返事を待たずに走り出し、高い塀を跳躍して飛び越えて結界の外に集まる魔物たちを視界に入れて確認してその方向に手の平を向け、そして魔力を込めて光線を放つ。
 放出された光線は眩い光を放ちつつ密集していた魔物たちの中心に着弾し、大きな爆発を引き起こした。
 その爆発でかなりの数が減り、その綺麗になった場所に降りる。

「魔法でまとめて倒すのって結構爽快でいいな。今度からこういう対多数戦の時は多様することにするか」

 魔法の魅力を理解し始めながら俺はソラギリを取り出した。
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