13 / 196
1章
4話目 後編 腐ってやがる
しおりを挟む
フレディと声を合わせて強く否定したのだがそれは逆効果だったらしく、女性からはさらに大きな黄色い歓声となって返ってくる。
しかもその場に居合わせた男たちにもドン引きされ、あまつさえ尻を覆い隠しながらその場から逃げるようにいなくなってしまう。
その後は俺もあまりの居心地の悪さから、さっさと飯を口の中に放り込んでその場から離れることにした。
「お前といると、俺の幸運値も下がっちまう気がしてきたんだが……」
なんて、俺と一緒に宿屋を出たフレディが肩を落としながら言い始める。ついでにララも一緒だ。
「だったら一緒に来なきゃだろ。おかげで出る時でさえ『きゃー、やっぱりあの二人はー』なんて甲高い声で喜ばれたんだぞ?」
その頃にはもうあの宿内一帯には男一人もおらず、腐女子の巣窟みたいになってしまっていた。
あそこのスキンヘッドのおっさんにはイチャモンを付けられはしたが、今では悪いと思うくらいには同情してしまっている。
「……ま、さっきのはお互い水に流すとして、だ」
水に流すも何も、そもそもの原因があんたなんだけど……
「お前ら、これから依頼を受けに行くんだろ?」
フレディの言葉に俺は「ああ」と答え、ララも頷く。
「だったら受付にいる奴の話はちゃんと聞いとけよ。依頼自体は簡単なものでも他よりも報酬が高かったり優遇された依頼があったら何か裏があることが多い。気を付けろ」
「マジかよ……了解、気を付けるよ。ありがとな」
お礼の言葉を口にすると、フレディは手をヒラヒラとさせて俺たちと別れる。
「行っちまったか……ララはどうする?俺とは離れながら行くか?」
そう言うとララは何のことかと首を傾げる。
「ああいや……俺と一緒に行くとまたなんか言われるんじゃないかって思ってな」
するとララは呆れたように溜息を零しながら肩をすくめ、さっさと歩いて行ってしまう。今のは同意ってことでいいんだよな……?
ララが歩き出してから少しして、その背中を見失わないようにしつつ俺も後をついて行く。
しかし向かう途中、ララが誰かと話し始めていた。
絡まれてる、のか?少年一人と少女二人……なんとなくどこかで見たような顔だけど、どこで見たっけ?
「おい、ララ!あれはどういうことだよ!?」
すると突然、男が声を荒らげる。ララを責めてるようだが……
ララは何のことかと首を傾げると、向こうにいる赤い短髪の少女が彼女をビンタした。
その音に周囲の通行人が驚いてララたちに視線を向ける。
「しらばっくれないで!私たちが受けたゴブリンの討伐、あなた一人で達成させたことになってるじゃない!」
「そういうことだ!あの後、俺たちがどんな思いでここまで戻って来れたか……!」
水色の髪をした少女以外がララを責め続ける。
ああ、思い出した……あいつら、一昨日ララと一緒にいた奴らだ!
それを思い出し、奴らの言い草に腹が立った俺は感情に任せて彼女たちの方へと歩いていた。
「おい、あんたら」
「なんだ、今こっちは取り込みち――っ!?」
不機嫌にこっちを睨もうとした男が俺を見た瞬間、その先の言葉を飲み込んでたじろいでしまう。
「ああ、そうだろうよ。だけど時と場所ってもんを考えてないのか?往来でギャーギャー叫んで、その上こいつを叩いたりなんかしてよ……?」
そう言って叩いた赤髪の少女に視線を向けると、そっちも小さく悲鳴を上げて数歩後ろに下がる。睨んだつもりはないんだけどな……あれ、この世界での俺の目って相手を状態異常にする武器になってない?
「だ、だからなんだってんだよ!?あんたには関係ないだろ!」
よく聞く決まり文句が出てきて、俺は思わず鼻で笑ってしまった。
「こいつは俺の恩人なんだ。その人がイチャモン付けられてるんなら、無関係でいるわけにはいかないんだよ。それに一昨日、あんたらが何をしたかも見てたしな?」
「見てたって何を……」
自分がしたことの自覚が無いのか、呆れて溜息が漏れ出てしまう。
「お前ら、仲間を見捨てて逃げただろ?」
「「っ!」」
赤髪と男の顔が驚愕した顔になり、水色の少女は下を俯く。こっちは多少自覚があるようだな……そういえばこの子は赤髪の少女に引っ張られてっただけだったな。
ま、逃げたことには変わりないんだけど。
「最初はそっちの赤髪と水色髪の少女二人、そんで男は不意打ちを食らって悲鳴を上げ、情けなく逃亡……それに対してララは行く当てのなかった俺を助けてくれた上に、ちゃんとゴブリン?を倒してここまで来たんだぞ?それを……って、いてっ!?」
まだまだある文句を続けようとしていたら、ララにど突かれてしまった。しかも脇腹をそれなりの力で殴られたので、結構痛い。
「何をするんだ」と言葉にする前にララの表情を見ると、僅かに頬を赤くした顔を俯けていた。え、本当になんで……?
「だ、だとしてもだ!パーティで依頼を受けたんだから、報酬くらいは貰ってもいいはずだろ!?」
「……はぁ?」
男の発言に割と本気で呆れた声を出しまった。
こいつ、ララの手柄を横取りする気か?
「だったら聞くけど、お前らはゴブリンを倒してそう言ってるのか?」
「は?なんでそうなる?」
「当たり前だろ?報酬を貰いたいならそれだけの働きを当然しなきゃならないわけだろ?だったらせめてゴブリン一匹くらい倒してそう言ってるんだろな?」
俺が少し睨むと、男たちはバツが悪そうに目を逸らしてしまう。むしろなんでそういう考えに及ばないのかがわからん。
というか、まさか一匹も?倒してないのに帰ってきて、その上ララを責めてたのか?嘘だろ……
この自体をどう収集つけようかと考えていると、ララが奴らにお金を何枚か差し出す。
「……え?」
「……」
その行為が理解できない男が固まっていると、ララはさらに手を前に突き出す。
「やるから受け取れ」と言ってるようにしか聞こえないんだが……
「な、なんだよ、物分かりがいいじゃねえか?へへ、最初からそうしとけばよかったんだよ」
男は下卑た笑いを浮かべると、ララの手からお金を奪うように持って行ってしまう。
「はいじゃ、お疲れ様。報酬は貰ったから、あんたはもう用済みね……次はそこの目が気持ち悪いとでもパーティ組んでれば?お似合いよ?」
皮肉を言って男の後をついて行く赤髪の少女。
水色髪の少女は男たちと俺たちを交互に見て戸惑っていたが、一礼して去って行った。悪い子じゃない……のかな?
「……よかったのか、あの金?ララが受けた依頼の報酬だったんだろ……?」
ララは首を横に振って「構わない」と意思表示し、そして俺に対してもお金を渡そうとしてきた。
「え、ちょっ……俺は何もしてないだろ!?」
受け取りを拒否しようとした俺の言葉に首をさっきよりも横に激しく振られ、異次元袋からゴブリンから剥いだ耳と何かの牙を見せてくる。牙の方は多分、狼もどきのやつだと思う。
まさか……アレらを倒すのを手伝ったからその分の報酬を、とでも言いたいのか?
「……いや、それは受け取れねえよ。むしろ助けてくれたお礼ってことでそのまま貰っといてくれねえか?」
そう言うと、ララは頬を膨らましていじけた子供みたいな反応を見せる。やめろよ、あざとくてちょっと可愛いと思っちゃうじゃんか。
そう思ってた矢先、ララが俺の腹部へワンパンチ入れてきた。
「ぐぶぅっ!?」
思わず変な声を上げて、意外な怪力によるダメージで腹を抱えながらその場にうずくまってしまう。
その時に、たまたま片腕を突き出す形で倒れていたのだが、その手の平にお供えをするかの如くお金を置いたララ。ご、強引過ぎるでござる……!
しかもその場に居合わせた男たちにもドン引きされ、あまつさえ尻を覆い隠しながらその場から逃げるようにいなくなってしまう。
その後は俺もあまりの居心地の悪さから、さっさと飯を口の中に放り込んでその場から離れることにした。
「お前といると、俺の幸運値も下がっちまう気がしてきたんだが……」
なんて、俺と一緒に宿屋を出たフレディが肩を落としながら言い始める。ついでにララも一緒だ。
「だったら一緒に来なきゃだろ。おかげで出る時でさえ『きゃー、やっぱりあの二人はー』なんて甲高い声で喜ばれたんだぞ?」
その頃にはもうあの宿内一帯には男一人もおらず、腐女子の巣窟みたいになってしまっていた。
あそこのスキンヘッドのおっさんにはイチャモンを付けられはしたが、今では悪いと思うくらいには同情してしまっている。
「……ま、さっきのはお互い水に流すとして、だ」
水に流すも何も、そもそもの原因があんたなんだけど……
「お前ら、これから依頼を受けに行くんだろ?」
フレディの言葉に俺は「ああ」と答え、ララも頷く。
「だったら受付にいる奴の話はちゃんと聞いとけよ。依頼自体は簡単なものでも他よりも報酬が高かったり優遇された依頼があったら何か裏があることが多い。気を付けろ」
「マジかよ……了解、気を付けるよ。ありがとな」
お礼の言葉を口にすると、フレディは手をヒラヒラとさせて俺たちと別れる。
「行っちまったか……ララはどうする?俺とは離れながら行くか?」
そう言うとララは何のことかと首を傾げる。
「ああいや……俺と一緒に行くとまたなんか言われるんじゃないかって思ってな」
するとララは呆れたように溜息を零しながら肩をすくめ、さっさと歩いて行ってしまう。今のは同意ってことでいいんだよな……?
ララが歩き出してから少しして、その背中を見失わないようにしつつ俺も後をついて行く。
しかし向かう途中、ララが誰かと話し始めていた。
絡まれてる、のか?少年一人と少女二人……なんとなくどこかで見たような顔だけど、どこで見たっけ?
「おい、ララ!あれはどういうことだよ!?」
すると突然、男が声を荒らげる。ララを責めてるようだが……
ララは何のことかと首を傾げると、向こうにいる赤い短髪の少女が彼女をビンタした。
その音に周囲の通行人が驚いてララたちに視線を向ける。
「しらばっくれないで!私たちが受けたゴブリンの討伐、あなた一人で達成させたことになってるじゃない!」
「そういうことだ!あの後、俺たちがどんな思いでここまで戻って来れたか……!」
水色の髪をした少女以外がララを責め続ける。
ああ、思い出した……あいつら、一昨日ララと一緒にいた奴らだ!
それを思い出し、奴らの言い草に腹が立った俺は感情に任せて彼女たちの方へと歩いていた。
「おい、あんたら」
「なんだ、今こっちは取り込みち――っ!?」
不機嫌にこっちを睨もうとした男が俺を見た瞬間、その先の言葉を飲み込んでたじろいでしまう。
「ああ、そうだろうよ。だけど時と場所ってもんを考えてないのか?往来でギャーギャー叫んで、その上こいつを叩いたりなんかしてよ……?」
そう言って叩いた赤髪の少女に視線を向けると、そっちも小さく悲鳴を上げて数歩後ろに下がる。睨んだつもりはないんだけどな……あれ、この世界での俺の目って相手を状態異常にする武器になってない?
「だ、だからなんだってんだよ!?あんたには関係ないだろ!」
よく聞く決まり文句が出てきて、俺は思わず鼻で笑ってしまった。
「こいつは俺の恩人なんだ。その人がイチャモン付けられてるんなら、無関係でいるわけにはいかないんだよ。それに一昨日、あんたらが何をしたかも見てたしな?」
「見てたって何を……」
自分がしたことの自覚が無いのか、呆れて溜息が漏れ出てしまう。
「お前ら、仲間を見捨てて逃げただろ?」
「「っ!」」
赤髪と男の顔が驚愕した顔になり、水色の少女は下を俯く。こっちは多少自覚があるようだな……そういえばこの子は赤髪の少女に引っ張られてっただけだったな。
ま、逃げたことには変わりないんだけど。
「最初はそっちの赤髪と水色髪の少女二人、そんで男は不意打ちを食らって悲鳴を上げ、情けなく逃亡……それに対してララは行く当てのなかった俺を助けてくれた上に、ちゃんとゴブリン?を倒してここまで来たんだぞ?それを……って、いてっ!?」
まだまだある文句を続けようとしていたら、ララにど突かれてしまった。しかも脇腹をそれなりの力で殴られたので、結構痛い。
「何をするんだ」と言葉にする前にララの表情を見ると、僅かに頬を赤くした顔を俯けていた。え、本当になんで……?
「だ、だとしてもだ!パーティで依頼を受けたんだから、報酬くらいは貰ってもいいはずだろ!?」
「……はぁ?」
男の発言に割と本気で呆れた声を出しまった。
こいつ、ララの手柄を横取りする気か?
「だったら聞くけど、お前らはゴブリンを倒してそう言ってるのか?」
「は?なんでそうなる?」
「当たり前だろ?報酬を貰いたいならそれだけの働きを当然しなきゃならないわけだろ?だったらせめてゴブリン一匹くらい倒してそう言ってるんだろな?」
俺が少し睨むと、男たちはバツが悪そうに目を逸らしてしまう。むしろなんでそういう考えに及ばないのかがわからん。
というか、まさか一匹も?倒してないのに帰ってきて、その上ララを責めてたのか?嘘だろ……
この自体をどう収集つけようかと考えていると、ララが奴らにお金を何枚か差し出す。
「……え?」
「……」
その行為が理解できない男が固まっていると、ララはさらに手を前に突き出す。
「やるから受け取れ」と言ってるようにしか聞こえないんだが……
「な、なんだよ、物分かりがいいじゃねえか?へへ、最初からそうしとけばよかったんだよ」
男は下卑た笑いを浮かべると、ララの手からお金を奪うように持って行ってしまう。
「はいじゃ、お疲れ様。報酬は貰ったから、あんたはもう用済みね……次はそこの目が気持ち悪いとでもパーティ組んでれば?お似合いよ?」
皮肉を言って男の後をついて行く赤髪の少女。
水色髪の少女は男たちと俺たちを交互に見て戸惑っていたが、一礼して去って行った。悪い子じゃない……のかな?
「……よかったのか、あの金?ララが受けた依頼の報酬だったんだろ……?」
ララは首を横に振って「構わない」と意思表示し、そして俺に対してもお金を渡そうとしてきた。
「え、ちょっ……俺は何もしてないだろ!?」
受け取りを拒否しようとした俺の言葉に首をさっきよりも横に激しく振られ、異次元袋からゴブリンから剥いだ耳と何かの牙を見せてくる。牙の方は多分、狼もどきのやつだと思う。
まさか……アレらを倒すのを手伝ったからその分の報酬を、とでも言いたいのか?
「……いや、それは受け取れねえよ。むしろ助けてくれたお礼ってことでそのまま貰っといてくれねえか?」
そう言うと、ララは頬を膨らましていじけた子供みたいな反応を見せる。やめろよ、あざとくてちょっと可愛いと思っちゃうじゃんか。
そう思ってた矢先、ララが俺の腹部へワンパンチ入れてきた。
「ぐぶぅっ!?」
思わず変な声を上げて、意外な怪力によるダメージで腹を抱えながらその場にうずくまってしまう。
その時に、たまたま片腕を突き出す形で倒れていたのだが、その手の平にお供えをするかの如くお金を置いたララ。ご、強引過ぎるでござる……!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
125
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる