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2章
3話目 前編 一服
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「シャドウリーダー!?ヤタたちは駆け出しなのによく生き残った二……」
一波乱のあった後、予定通りレチアと合流し、町への帰路に就いていた時に彼女が感心したようにそう言った。
「やっぱ強いのか?」
「当たり前二!まさか、戦いを挑んでない二……?」
レチアは責めるようにジト目で俺を睨んでくる。
俺は引きつった口を引きつらせて「ははは、まさかー」と誤魔化す。実際俺は、他はももかくリーダーもはそんなに戦わず逃げたのだから間違ってない。
すると、レチアは大きく溜息を吐いて説明をし始める。
「そいつの周囲に特徴の少ない影っぽい奴もいなかった二?そいつらはシャドウっていうんだけど、リーダーはその名の通りそのまとめ役で、他の個体より数段強い二!ただ歩く速度は遅いから、僕たちのような駆け出しや見習い冒険者はそいつを見たら逃げるのが常識二」
「マジで?ララも知ってたのか?」
俺の横に並んで歩いているララにそう聞くと頷いた。
それなら先に言ってほしかった……いや、あの時は奴の咆哮で動けなくされてたから、それどころじゃなかったか。
どちらにしろ、俺の判断は正しかったってことだな。
「無理だと思ったら無理せず逃げる」。これ、向こうの世界の学生や社会人でも同じことが言える大事なことだからね。
げ、現実逃避か、そういうのじゃないんだからねっ!
「ま、命あっての物種だしな。少しは無理したけど、誰も大怪我せずに済んでよかったよ……」
軽く笑ってそう言うと、両サイドから妙な視線を感じる。ララとレチアだ。
「……何?」
俺が聞き返すと、レチアが「いやー」と少し恥ずかしそうに苦笑いして言葉を続ける。
「冒険者になったばっかりにしては珍しい考え方をしてるなーと思って二。『俺ならやれるっ!』とは思わない二?英雄になりたいとか……」
「ねえな。そういう華のある役は他に任せて、俺は裏で慎重にコソコソ動く派だ。それに俺はできないことはやらない主義だしな……今さっきそれを実践してきたところだ」
「なんだか凄い二ー……凄い二?」
おい。褒めてくれるかと思った瞬間に疑問を持つな。
そこで「やっぱ凄くない二ー」とか言われたら最終的に泣くぞ?
「何事にも逃げる勇気ってのも大切なんだよ」
「たしかに一理あるかもだけど……それって男の人的にはどう二?」
痛いところを突かれる八咫 来瀬(35)。いい歳したおっさんが説教されちゃったよ……ま、それでもこの生き方は変えるつもりはないがな。
別にララたちを置いて逃げたわけでもないし?
そんなこんなで雑談をしつつ、特に強敵などが出ることもなく無事に町へ、そして連合本部へと辿り着いた。
「シャドウとシャドウリーダー……それらは本来、駆け出しや見習いが倒せる相手ではありません!よく生き残りましたね」
一連の流れを掻い摘んでアイカさんに話すと、レチアから言われたことと同じことを言われてしまった。
というかリーダーの方はともかく、リーダーじゃない方もそんなに難しい相手だったの?
「はい、全く同じことを他の人からも言われましたよ、レチアって子に……」
「……ああ、彼女ですか」
それだけ呟くと、アイカさんは何か言いたげに眉をひそめる。
レチアとはここに着く前に「僕はやることがあるから、一旦ここで失礼する二!」と言ってどこかへ行ってしまった。
なんというか……結局何かあったわけじゃなかったが、最初から最後まで挙動のおかしい奴だったな……
というか、どうせならアイカさんに彼女のことを聞いてみるか?
「それでレチアってのはどういう子なんですか?」
その質問をすると、彼女もジト目で俺を睨んでくる。
最近、女の子に睨まれること多いなー……俺、そんな趣味ないのに。
「ヤタさんはああいう子が好みなんですか?」
「……は?」
何を言い出すかと思えば……好み?いきなり何を言ってるんだ、この人は?
「男の人って胸の大きな女性を好むってよく聞きますけど、胸が大きければ小さい子にだって手を出すロリコンだったんですか?」
言葉が進むにつれてジト目から見下すような冷たい視線へと変わっていく。
「待って?俺はロリコンじゃないですからね?あいつは年齢的に十八ですよね?見た目がそうだってだけでロリコンは軽率だし、レチアにも失礼ですよ。というか……そもそもそんな話じゃねえ!」
なぜか男女的な話と勘違いされていたので、間違いを正すために詳細を話した。
「――ってな感じです」
「レチア様の挙動な言動ですか……たしかに最近、彼女は色んなパーティに入っては出るを繰り返しています。特にヤタ様方が向かった例の鉱山近くへ行くパーティについて行くことが多いようです」
アイカさんもレチアの行動に疑問を感じていたらしく、少し眉をひそめた表情で書類を見つめながらそう言った。
「ちなみに、そのついて行ったメンバーはその後どうなっていますか……?」
「……あまりこういった情報を漏らすのはよくないのですが、彼女と関わったヤタ様には伝えた方がいいかもしれませんね……レチア様と関わったパーティメンバーは現在、八割が近日に行方不明となっています。さらにうち九割が女性という共通点を持ってることも……」
彼女の言葉を聞いた瞬間、無意識に固唾を飲んでいた。
どうやら黒のようだ。
――――
ララの昇級騒ぎの合間に鉱石の鑑定と買い取りをアイカさんに頼んだ結果、やっぱりベルド鉱石の数が足りていなかった。
代わりに他にあった鉱石を他にもあった依頼品として納品させ、予定より少し懐が潤った。ついでにアイカさんからも感謝され、一石二鳥となった。
まぁ、それはともかく。だから依頼を完遂させるならもう一度行かないといけないのだが……
「……憂鬱だなぁ」
連合内での喧騒が後ろから聞こえてくるのを他所に俺は憂鬱っぽく呟き、出入り口付近のベンチで座りながら手に持った小さな円柱状の棒を慣れた手つきで口に運ぶ。
咳き込まないように調整しつつ、ソレを口から離して白い煙を空に巻き上げる。
これが何かって?煙草だよ。
さっき俺が中にいた時に知らない冒険者のおっさんから貰ったもんだ。
正確には煙草に似た何か。この世界特有のものっぽいが、正式名称は知らん。
しかし元の世界で吸っていたものにも似てるし、中身は体に害の全くないナンチャラハーブで作られてるんだと。
元々こういうものを吸うことが少なかった俺だが、その理由が実害があるから遠慮していたのだが、それがなければ思う存分吸えるってわけだ。
しかもこの世界で十六を超えてれば、これを吸えるんだと。
普通、この見た目というか若さで吸ってたらそれこそ通報もんだしな。異世界様々ってやつだ。
とはいえ煙は出るし、煙いもんは煙いだろうからイクナの前で咥えるわけにもいかないので、外に出て吸ってるわけだけども……
「そういえば外ではたまに見かけるけど、本部の中で咥えてるやつは見てないな……」
禁止にしてるのか、もしくは誰かさんが言っていた「暗黙のルール」ってやつか……どっちにしても、この世界でも喫煙者は肩身が狭いらしい。
「二?妙に煙たい奴がいると思ったら、ヤタじゃないか二」
久しぶりの煙草を味わっていると、聞き覚えのあるあざとい声が聞こえてきた。
一波乱のあった後、予定通りレチアと合流し、町への帰路に就いていた時に彼女が感心したようにそう言った。
「やっぱ強いのか?」
「当たり前二!まさか、戦いを挑んでない二……?」
レチアは責めるようにジト目で俺を睨んでくる。
俺は引きつった口を引きつらせて「ははは、まさかー」と誤魔化す。実際俺は、他はももかくリーダーもはそんなに戦わず逃げたのだから間違ってない。
すると、レチアは大きく溜息を吐いて説明をし始める。
「そいつの周囲に特徴の少ない影っぽい奴もいなかった二?そいつらはシャドウっていうんだけど、リーダーはその名の通りそのまとめ役で、他の個体より数段強い二!ただ歩く速度は遅いから、僕たちのような駆け出しや見習い冒険者はそいつを見たら逃げるのが常識二」
「マジで?ララも知ってたのか?」
俺の横に並んで歩いているララにそう聞くと頷いた。
それなら先に言ってほしかった……いや、あの時は奴の咆哮で動けなくされてたから、それどころじゃなかったか。
どちらにしろ、俺の判断は正しかったってことだな。
「無理だと思ったら無理せず逃げる」。これ、向こうの世界の学生や社会人でも同じことが言える大事なことだからね。
げ、現実逃避か、そういうのじゃないんだからねっ!
「ま、命あっての物種だしな。少しは無理したけど、誰も大怪我せずに済んでよかったよ……」
軽く笑ってそう言うと、両サイドから妙な視線を感じる。ララとレチアだ。
「……何?」
俺が聞き返すと、レチアが「いやー」と少し恥ずかしそうに苦笑いして言葉を続ける。
「冒険者になったばっかりにしては珍しい考え方をしてるなーと思って二。『俺ならやれるっ!』とは思わない二?英雄になりたいとか……」
「ねえな。そういう華のある役は他に任せて、俺は裏で慎重にコソコソ動く派だ。それに俺はできないことはやらない主義だしな……今さっきそれを実践してきたところだ」
「なんだか凄い二ー……凄い二?」
おい。褒めてくれるかと思った瞬間に疑問を持つな。
そこで「やっぱ凄くない二ー」とか言われたら最終的に泣くぞ?
「何事にも逃げる勇気ってのも大切なんだよ」
「たしかに一理あるかもだけど……それって男の人的にはどう二?」
痛いところを突かれる八咫 来瀬(35)。いい歳したおっさんが説教されちゃったよ……ま、それでもこの生き方は変えるつもりはないがな。
別にララたちを置いて逃げたわけでもないし?
そんなこんなで雑談をしつつ、特に強敵などが出ることもなく無事に町へ、そして連合本部へと辿り着いた。
「シャドウとシャドウリーダー……それらは本来、駆け出しや見習いが倒せる相手ではありません!よく生き残りましたね」
一連の流れを掻い摘んでアイカさんに話すと、レチアから言われたことと同じことを言われてしまった。
というかリーダーの方はともかく、リーダーじゃない方もそんなに難しい相手だったの?
「はい、全く同じことを他の人からも言われましたよ、レチアって子に……」
「……ああ、彼女ですか」
それだけ呟くと、アイカさんは何か言いたげに眉をひそめる。
レチアとはここに着く前に「僕はやることがあるから、一旦ここで失礼する二!」と言ってどこかへ行ってしまった。
なんというか……結局何かあったわけじゃなかったが、最初から最後まで挙動のおかしい奴だったな……
というか、どうせならアイカさんに彼女のことを聞いてみるか?
「それでレチアってのはどういう子なんですか?」
その質問をすると、彼女もジト目で俺を睨んでくる。
最近、女の子に睨まれること多いなー……俺、そんな趣味ないのに。
「ヤタさんはああいう子が好みなんですか?」
「……は?」
何を言い出すかと思えば……好み?いきなり何を言ってるんだ、この人は?
「男の人って胸の大きな女性を好むってよく聞きますけど、胸が大きければ小さい子にだって手を出すロリコンだったんですか?」
言葉が進むにつれてジト目から見下すような冷たい視線へと変わっていく。
「待って?俺はロリコンじゃないですからね?あいつは年齢的に十八ですよね?見た目がそうだってだけでロリコンは軽率だし、レチアにも失礼ですよ。というか……そもそもそんな話じゃねえ!」
なぜか男女的な話と勘違いされていたので、間違いを正すために詳細を話した。
「――ってな感じです」
「レチア様の挙動な言動ですか……たしかに最近、彼女は色んなパーティに入っては出るを繰り返しています。特にヤタ様方が向かった例の鉱山近くへ行くパーティについて行くことが多いようです」
アイカさんもレチアの行動に疑問を感じていたらしく、少し眉をひそめた表情で書類を見つめながらそう言った。
「ちなみに、そのついて行ったメンバーはその後どうなっていますか……?」
「……あまりこういった情報を漏らすのはよくないのですが、彼女と関わったヤタ様には伝えた方がいいかもしれませんね……レチア様と関わったパーティメンバーは現在、八割が近日に行方不明となっています。さらにうち九割が女性という共通点を持ってることも……」
彼女の言葉を聞いた瞬間、無意識に固唾を飲んでいた。
どうやら黒のようだ。
――――
ララの昇級騒ぎの合間に鉱石の鑑定と買い取りをアイカさんに頼んだ結果、やっぱりベルド鉱石の数が足りていなかった。
代わりに他にあった鉱石を他にもあった依頼品として納品させ、予定より少し懐が潤った。ついでにアイカさんからも感謝され、一石二鳥となった。
まぁ、それはともかく。だから依頼を完遂させるならもう一度行かないといけないのだが……
「……憂鬱だなぁ」
連合内での喧騒が後ろから聞こえてくるのを他所に俺は憂鬱っぽく呟き、出入り口付近のベンチで座りながら手に持った小さな円柱状の棒を慣れた手つきで口に運ぶ。
咳き込まないように調整しつつ、ソレを口から離して白い煙を空に巻き上げる。
これが何かって?煙草だよ。
さっき俺が中にいた時に知らない冒険者のおっさんから貰ったもんだ。
正確には煙草に似た何か。この世界特有のものっぽいが、正式名称は知らん。
しかし元の世界で吸っていたものにも似てるし、中身は体に害の全くないナンチャラハーブで作られてるんだと。
元々こういうものを吸うことが少なかった俺だが、その理由が実害があるから遠慮していたのだが、それがなければ思う存分吸えるってわけだ。
しかもこの世界で十六を超えてれば、これを吸えるんだと。
普通、この見た目というか若さで吸ってたらそれこそ通報もんだしな。異世界様々ってやつだ。
とはいえ煙は出るし、煙いもんは煙いだろうからイクナの前で咥えるわけにもいかないので、外に出て吸ってるわけだけども……
「そういえば外ではたまに見かけるけど、本部の中で咥えてるやつは見てないな……」
禁止にしてるのか、もしくは誰かさんが言っていた「暗黙のルール」ってやつか……どっちにしても、この世界でも喫煙者は肩身が狭いらしい。
「二?妙に煙たい奴がいると思ったら、ヤタじゃないか二」
久しぶりの煙草を味わっていると、聞き覚えのあるあざとい声が聞こえてきた。
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