無実の男爵令嬢と無能チートの牢番くん~最強SSRの侯爵令嬢が出るまで過去改変を繰り返し「囚人ガチャ」を引きまくるしかないようです~

鈴林きりん

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SSR賢者引けちゃいました~冷静と慧眼の彼女達~

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「商人の娘で、グレースと言います。父とご縁のある方にパーティに誘われて、顔見知りの芸術家の方に相談されました。アンナ様がどうとか、それで事情聴取を受けて欲しいとか。言われた通りにした後、後日呼び出されて、男爵令嬢を殺したと言われてしまい、どうしたらいいかわからず」
 
 どうも生徒以外も相当参加しているらしい。
 意図的に陥れたことにかなり罪悪感が湧く。

 明らかに僕のせいだ。

 彼らは等しく被害者であると言える。
 ただその場に居合わせただけで不運に見舞われた。
 
 繋がりも薄いため、結託することも難しいだろう。
 まさに烏合の衆。
 生贄になるべくしてなった者達。
 考えると焦りが募っていく。本当にこれで何とかなるのだろうか。

「時間があれば別の手段も試せそうだけど、アンナはその晩のうちに殺される。どうしたらいいだろう。あぁ、もうわからなくなってきた」

 罪悪感と、それ以外に手段の思いつかない焦り。
 混乱の極みに陥っていたが、幸いグレースは理性的な女性だった。

「落ち着いて、順を追って説明してください」

 気持ちを静めてどうにか状況を伝える。
 彼女と接していると不思議と心が落ち着いてきた。

「そんなわけで、何とか出来るかな。良い祝福とか持ってない?」

「祝福は鎮静と言いますか、相手を落ち着かせるものですね。交渉の際などにとても便利」

 なるほど、冷静になれたのはそのおかげか。
 これまでになくこの場にふさわしいものと言えた。
 商人と言う仕事にも合っているだろう。

「なるほど。それで場を収めたりは出来ないかな」

「尊い方々の間に割って入ることもできませんし、悪人の心を変えるようなものではないんです。その場でお止めするのはさすがに難しいかと。ただ時間さえあれば、父に相談して何がしかの手段はとれるかもしれません。幸いにも貴族の方と仕事上の付き合いがあるので」

「頼む。とにかく彼女を助けたいんだ」

「はい。無実の罪で誰かが殺されたり牢に送られたりするなんて許せないです」
 
 それを間接的にした僕はなんだと言う話でもある。

「君は良い人だね。無事助かることを祈ってる」

 偽善的ながらそう伝えた。
 ここに来る条件はパーティに残って事情聴取を受けること。
 それも伝えて、送り出す。
 なんと言うか、ここに来てようやく小さな希望が見えて来た。
 
 そして次に現れた女性が僕らの運命を大きく変えることになる。
 言わば、大当たりだ。

「学者の娘のレイラと言います。父と共に学園を訪れている最中に、校長のご厚意でパーティに参加していました」

 眼鏡をかけ、かなりの賢さを漂わせた女性だ。

「君はどうして牢に?」

「グレースと言う方に相談されたのです。不思議な牢番に出会い、奇妙なことを頼まれたと。その他にも数名、同じような話をしている者が居るらしいと聞き、これは何事かが起こっているなと。それで、面白そうなので物は試しと思い、事情聴取を受け、私がアンナ様を殺した犯人として捕まりました」
 
 祝福による審査結果は青、真実だ。
 しかもすごい深い色合いをしている。

「豪胆の極み。なに君、今までの人と明らかに人間の種類が違う。でも殺されるよ、明日には」

「不在証明はありますので、取れる手段もなくはないかと」

「あ、一応考えてはいるんだね。それが通るかは難しいところだが、他の誰かが来ていないところを見ると王太子はこれ幸いにと君を生贄にしたわけか」

「さほど裏取りもしていないようですし、そこは明らかに雑でしたね」

「適当な指示でここに来られるくらいだもんな」

 敵もそこまで優秀と言うわけではないのか。
 これは良い知らせなのだろうか。
 何より僕自身がそう優秀でないのが問題なのだ。
 言うなれば大雑把と大雑把の戦い。なんだそれは。
 明らかに何かが不足している。

「とにかく事情を。一応は聞いていますが、詳細を教えてください」

 先ほどのグレースが話の分かる相手だったこともあり、深く相談してみることにした。夜も更けていき、もはや時間がどれほど残っているかもわからない。必要な行動を起こすにはもはや猶予はないだろう。

「アンナ様を助けたい。黒幕は恐らく王太子。侯爵令嬢は味方になるかもしれないですか。そして試せる時間は残り少ない」

 彼女は顎に手を当てて考え込む。

「うん。困ってる。このやり方で正しいのかもはやわからない」

「そうですね。私が把握する限りグレースが戻った時点で、既に陛下がお出でになっています。事態は一時収束寸前。発言力のおありな方でなければ状況は変えにくい。最も頼れそうなのはやはり侯爵令嬢のオリヴィア様ですね。ともあれ、彼女に取り次いでアンナ様を保護してもらうしかない」

「しかしここに来るのは身分の低い相手がほとんど。直接的にやり取りできる相手が来る可能性はあるだろうか」

「状況を聞く限りは考えにくい。身分が低いからこその生贄ですからね」

「確かに。パーティもうすぐ終わるよね。どうしよう」

「王太子の目的が何かですよね。侯爵令嬢をどうしたかったのでしょうね」

「なにせそっちで夜も明けてないからわからないんだよね。多くの人間は短い間で捕らえられているとなれば、探る余地もない」

「思ったのですが、過去に戻す力って罪人限定なのでしょうか?」

「これまで使ったのがたまたま牢に入っている罪人と言うだけで、誰にでも使えると思う。祖先は色んな相手を過去に送っていたという話も残ってるし。ただここまで濫用したのは初めて」

「あなたの体感で最新の時間から一定の時間だけを巻き戻す力、ですよね。だからじりじり時間は経過している。ただ取りうる手段はなくもない。一度私を過去に送ってください」

「はい」

 何らかの希望を感じて素直に頷く。
 明らかにこれまでとは何か違う。
 これは期待できるかもしれない。
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