蒼のタチカゼ

しゃか

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第8章 ー嵐の前触れ、蒼い眼は何を想うー

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「・・・てな訳で、俺は蒼の風としての人生を歩み始めたわけよ!いい話だろ」


と得意げに橙の眼に過去話を話すタチカゼ。どうやらセツナとオンジは何度もこの話を聞いている

らしくうんざりした顔で、ただ遠くの一点を見つめていた。

姫様だけが目を輝か、、懸命に拍手をしてくれた。


「まぁ!素敵な出会いが合ったのですね。・・・あら?でも今の蒼の風のリーダー様はタチカゼさん

ですよね?キバカゼさんはリーダーを譲ったという事ですか?」

「あ・・・」セツナを含め3人の動きがピタッと止まり、俯いた。

「・・・キバ兄にいは・・・キバカゼは今消息不明なんだ。いや、消息不明とは違うな。

姫様はアダムス要塞の攻防戦の話を知ってるかい?」タチカゼは尋ねた。

「いえ。あまり戦況は教えてもらえませんでしたから。でも、アダムス要塞という所に対イド帝国のゲリラ本部があるという話は聞いた事があります。ですから私はそこを目指して彷徨さまよっていたんです」

「そうか、姫様は知らないのか。もうアダムスには本部はないんだよ。」

「え!?そうなんですか!?」姫様は目をパチクリさせた。

「半年前、イドの領地を占拠する大規模作戦が計画されていたんだ。それに合わせてアダムスにはゲリラ部隊に大半の戦力が招集されていた、もちろん俺達もそれに参加する予定だった。だが事件はその

作戦前夜に起きた。ニンゲンヘイキの大群がアダムスを襲撃したんだ。アダムス要塞は壊滅・・・

半数以上の死傷者が出る大惨事になった。その時、キバカゼも消息不明となった。」

「そんな痛ましい事件があったのですね・・・」ガーネットは俯いた。

「今はイグニカに本部の要塞都市があるんだよ。姫様、良かったな!俺達に会えて。そのまま

だったら崩れ去った本部跡に行く所だった。」

「本当にそうですね。神のご加護に心から感謝いたします。・・・ですけど、妙な話ですね。

アダムスにゲリラ部隊の大半の戦力が集結している時に、ニンゲンヘイキの襲撃を受けるなんて。

タイミングが良過ぎる気がします。」

「ほわほわしている様でガーネット王妃は鋭いなぁ。そう、余りにもタイミングが良すぎる。

あたし達は誰かが大規模作戦をイドにリークしたと考えている。」


セツナ神妙な面持ちで言った。その顔には悲しみと怒りがごちゃ混ぜになっているように感じられた。


「裏切り者がいたという事ですか!?」

「俺達は・・・その犯人がキバカゼだと思っている」

「え!?」


タチカゼはカタナを抜いてまじまじと眺めた。

セツナはそれを見ながら思い出していた・・・あの夜の事を。



そんな話をしている様子を少し離れた大木の枝の上から眺める人影があった。

一人は鳥の嘴くちばしのようなマスクを口につけ、首には大きな鳥の羽の飾りを付けている。

棘のついた肩当てなど、いかにも自己主張の強そうな男だった。

もうひとりは髪を両側にお団子の纏まとめ、チャイナドレス風のスリットのはいった赤いドレス

を纏っている。どこか妖艶さを感じる出で立ちの女性だ。

二人とも黒い外套を上から纏っている。

その両眼は緋色に鈍く光り輝いていた。

男は大鎌、女性は体にまったく合わない大剣を担いでいる。


「姫様みーっけ!」男の方が言った。

「ホントにお転婆な王妃様ね、お守もりする方の気持ちも考えて欲しいわ」

女性の方が愚痴をこぼす。

そこへもう一人の黒い外套の者がやってきた。フードを頭まで被り、顔を伺うかがい知る事は出来ない。


「おやぁ?なんであんたが来るんだい?あんたはシュバルツ王子の護衛のはずじゃねーか?」


男は後から来た黒外套に尋ねた。


「なに、ちょっと顔なじみがいてね。シュバルツ王子の許可を得て挨拶に・・・な」


黒外套はフードの中で少し微笑んでいる気がした。

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