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ヒメと明彦3、雅子編
第2話 依存心、嫌い!
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20世紀のいつか、美姫、良子、達夫高3
雅子大学2、明彦大学1
夏休み中はずっと京都に帰っていた。実家は和紙問屋をやっていて、あまり景気は良くない。和紙などそれほど需要があるとは思わなかった。
実家に帰ってゆっくりできるかな?なんて思っていたら、パパが(京都の和紙問屋の娘が父親を『パパ』と呼んで何が悪い!)遠縁の斎藤酒造にお手伝いに行って欲しいと頼んできた。え~、酒蔵の手伝い?
「斎藤さんのところ、女将さんが具合が悪いんだ。酒蔵だろう?男手も必要だが、女手も必要なんだよ。酒蔵の女将さんというのは、大変な仕事で、杜氏の手配、お世話から、材料の仕入先、納入先との付き合い、手配、いろいろと酒蔵の亭主を助けないといけない。近所の人も手伝ってくれるが、親戚の女性の方がいい。だから、お前行ってやってくれ。雅子だって、知らない仲じゃないだろ?あそこの長男タケルくんとは幼馴染の同い年だったろう?」ええ、ええ、同い年です。私の人生初キスの相手ですよ、パパ。内緒だけど。
タケルは、物心つく頃から、親戚の寄り合いなどで顔を合わせていた。彼は伏見だから、学校こそ違ったが、酒造りが始まる季節の冬休み、春休みの間は、邪魔な子供である彼と彼の妹は我が家で引き取っていたのだ。だから、小さい頃は、私の兄、私と、タケルと妹が一緒によく遊んだ。私が最初にお医者さんごっこをした相手もタケルだった。初キスの相手もタケルだった。小学校の頃だったけど。私、マセていたもの。
彼が中学生になって、酒造りの手伝いができるようになると、我が家に学校の休みに来るということはなくなったが、親戚の寄り合いではちょくちょく顔を合わせた。高校一年生になって、生まれてはじめてデートした相手もタケルだった。その時は、私が何かに苛立って、五回ぐらいのデートで打ち切りにはなったが、付き合いはそのままだった。
彼も自分の高校で彼女ができたらしい。わざわざ遠い親戚の従姉妹と付き合う必要もない。そして、彼は関西の大学に、私は東京の大学に。もう彼と何かが交差することもないだろうと思っていた。
伏見に手伝いに行くときは、京都から通うのも面倒なので、齊藤酒造に泊まった。タケルの部屋の隣りの和室だったが、もちろん、彼とは何もなし。大学の話題を話したくらいだった。雅子、早く彼氏を作れよ、とか言われてしまった。
その夏休み、ぜんっぜん、ゆっくりできなかった。酒蔵は十一月の米の手配、精米、十二月から翌年の三月までの寒造りと、日本酒の仕込みが続く。じゃあ、三月から十月まで暇か?というと、付き合いはある、酒瓶の手配とかラベルの製作、無限に仕事がある。確かに、伯父さんとタケルの男の仕事の他にタケルの妹だけで女の仕事は無理だ。かといって、休みが明ければ私は東京に戻らないといけない。申し訳なかったが、8月末に東京に帰ってきた。
夏休みが明けて、大学の授業再開。いやぁ、大学の授業のほうが酒造りより楽だ。
無機化学2の授業に出た。見回すと内藤くんがいる。彼の隣に腰掛けた。「オッス、内藤くん、お元気?夏休みどうだった?万里子ちゃんとはうまくいってる?」と声をかける。
内藤くんはうかない顔で「ああ、小森さん、久しぶり。京都に帰省してたんだ?」と言う。「うん、ずっと親戚の家の手伝いしてたよ。それより、なんかうかない顔だね?」と聞いた。
「まあ、あんまり気分は良くない。小森さんがコンサート断るもんだからいけないんだよ。春からさ、万里子と付き合うようになって、それで夏休みも会ってたんだけど、だんだん、会う頻度が少なくなって、俺のお誘いを断ることも多くなったんだ。怪しいと思って万里子の友達に聞いたら、あいつ浮気してやがったんだ」
「あら、じゃあ、別れちゃったんだ?」
「それがね、俺、あてつけに薬学部の女の子と付き合いだして・・・」
「それ、万里子ちゃんが先?薬学部の女の子が先?」
「・・・同時進行かな?」
「あっきれた!内藤くん、あなただって、浮気してたんじゃない!」
「そうなんだけどさ、その子とデートしているのを万里子に偶然見られて、痴話喧嘩して、でも、またセックスして、だらだらと続いてるんだ」
「え~?内藤くんも万里子ちゃんも別の相手ともセックスしていて、それでもまだお互いしてるの?信じられない!」
「まあ、グチャグチャでさ、万里子とする時も、俺のあの子の方がいいとか、万里子も私の相手の方が長持ちして、あんただらしないね?とか言い合いして・・・」
「そんなことしてると、内藤くんの薬学部の女の子に振られて、万里子ちゃんも他の男の子に振られちゃって、後には情けない男女が残りましたってなるわよ!」
「そうなりそう・・・だからさ、小森さんが俺と付き合ってくれれば、スッパリとみんな精算できて、メデタシなんだけどなあ・・・」
「そういう共依存関係は私キライ!なんか、お互い傷を舐め合っているみたい。もっと、女とベッタリしないで距離をおきなよ。セックスがお互いの人質みたいじゃない?そういう関係、私にはできない。お互いの距離感を保って自立しながらのお付き合いじゃないとダメ・・・って、内藤くん、今、『小森さんが俺と付き合ってくれれば』って言ったね?それ、告白してるって話し?」
「え?そう受け取ってくれなかったの?」
「・・・やれやれ・・・ハッキリ言って、内藤くんとは付き合えません。でも、良いお友達でいたいというなら、絶交しないでいたげるわ。私のノートもみたいでしょうし」
「それ、俺、フラれたの?」
「率直に言って、そう受け取っていただきます」
「まったくなあ、小森さん、俺のタイプなのに・・・」
「内藤くんは、セックスできれば女の子は全部自分の好みになるんでしょ?私はイヤです」
「残念だなあ・・・」
「授業始まるわよ。ボケーとしてないで、授業を聞きなさいな。ちゃんとノート取って!」
まったく信じられない。ベタベタしたり、セックスしたり、浮気したり。そういう男女関係は、極度のお互いへの依存心がある。私にはできないなあ。
これじゃあ、しばらく彼氏ができないだろうけど、全然惜しくない。私には学問がある!男なんてしばらく願い下げだ・・・って、小森雅子、2月の手袋の男の子と女の子を思い出してどうする?・・・なんか、気になるけど、出会えないね。仕方ない。
※未成年の飲酒シーンが書かれてあります。
※この物語は性描写や飲酒、喫煙シーンを含みます。
※この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
参考:『補足資料 少年法等の一部の改正と……
1)合法JK, 2)覚醒剤, 3)売春, 4)殺人, 5)少年鑑別所と少年刑務所』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/913345710/461940836/episode/9344181
雅子大学2、明彦大学1
夏休み中はずっと京都に帰っていた。実家は和紙問屋をやっていて、あまり景気は良くない。和紙などそれほど需要があるとは思わなかった。
実家に帰ってゆっくりできるかな?なんて思っていたら、パパが(京都の和紙問屋の娘が父親を『パパ』と呼んで何が悪い!)遠縁の斎藤酒造にお手伝いに行って欲しいと頼んできた。え~、酒蔵の手伝い?
「斎藤さんのところ、女将さんが具合が悪いんだ。酒蔵だろう?男手も必要だが、女手も必要なんだよ。酒蔵の女将さんというのは、大変な仕事で、杜氏の手配、お世話から、材料の仕入先、納入先との付き合い、手配、いろいろと酒蔵の亭主を助けないといけない。近所の人も手伝ってくれるが、親戚の女性の方がいい。だから、お前行ってやってくれ。雅子だって、知らない仲じゃないだろ?あそこの長男タケルくんとは幼馴染の同い年だったろう?」ええ、ええ、同い年です。私の人生初キスの相手ですよ、パパ。内緒だけど。
タケルは、物心つく頃から、親戚の寄り合いなどで顔を合わせていた。彼は伏見だから、学校こそ違ったが、酒造りが始まる季節の冬休み、春休みの間は、邪魔な子供である彼と彼の妹は我が家で引き取っていたのだ。だから、小さい頃は、私の兄、私と、タケルと妹が一緒によく遊んだ。私が最初にお医者さんごっこをした相手もタケルだった。初キスの相手もタケルだった。小学校の頃だったけど。私、マセていたもの。
彼が中学生になって、酒造りの手伝いができるようになると、我が家に学校の休みに来るということはなくなったが、親戚の寄り合いではちょくちょく顔を合わせた。高校一年生になって、生まれてはじめてデートした相手もタケルだった。その時は、私が何かに苛立って、五回ぐらいのデートで打ち切りにはなったが、付き合いはそのままだった。
彼も自分の高校で彼女ができたらしい。わざわざ遠い親戚の従姉妹と付き合う必要もない。そして、彼は関西の大学に、私は東京の大学に。もう彼と何かが交差することもないだろうと思っていた。
伏見に手伝いに行くときは、京都から通うのも面倒なので、齊藤酒造に泊まった。タケルの部屋の隣りの和室だったが、もちろん、彼とは何もなし。大学の話題を話したくらいだった。雅子、早く彼氏を作れよ、とか言われてしまった。
その夏休み、ぜんっぜん、ゆっくりできなかった。酒蔵は十一月の米の手配、精米、十二月から翌年の三月までの寒造りと、日本酒の仕込みが続く。じゃあ、三月から十月まで暇か?というと、付き合いはある、酒瓶の手配とかラベルの製作、無限に仕事がある。確かに、伯父さんとタケルの男の仕事の他にタケルの妹だけで女の仕事は無理だ。かといって、休みが明ければ私は東京に戻らないといけない。申し訳なかったが、8月末に東京に帰ってきた。
夏休みが明けて、大学の授業再開。いやぁ、大学の授業のほうが酒造りより楽だ。
無機化学2の授業に出た。見回すと内藤くんがいる。彼の隣に腰掛けた。「オッス、内藤くん、お元気?夏休みどうだった?万里子ちゃんとはうまくいってる?」と声をかける。
内藤くんはうかない顔で「ああ、小森さん、久しぶり。京都に帰省してたんだ?」と言う。「うん、ずっと親戚の家の手伝いしてたよ。それより、なんかうかない顔だね?」と聞いた。
「まあ、あんまり気分は良くない。小森さんがコンサート断るもんだからいけないんだよ。春からさ、万里子と付き合うようになって、それで夏休みも会ってたんだけど、だんだん、会う頻度が少なくなって、俺のお誘いを断ることも多くなったんだ。怪しいと思って万里子の友達に聞いたら、あいつ浮気してやがったんだ」
「あら、じゃあ、別れちゃったんだ?」
「それがね、俺、あてつけに薬学部の女の子と付き合いだして・・・」
「それ、万里子ちゃんが先?薬学部の女の子が先?」
「・・・同時進行かな?」
「あっきれた!内藤くん、あなただって、浮気してたんじゃない!」
「そうなんだけどさ、その子とデートしているのを万里子に偶然見られて、痴話喧嘩して、でも、またセックスして、だらだらと続いてるんだ」
「え~?内藤くんも万里子ちゃんも別の相手ともセックスしていて、それでもまだお互いしてるの?信じられない!」
「まあ、グチャグチャでさ、万里子とする時も、俺のあの子の方がいいとか、万里子も私の相手の方が長持ちして、あんただらしないね?とか言い合いして・・・」
「そんなことしてると、内藤くんの薬学部の女の子に振られて、万里子ちゃんも他の男の子に振られちゃって、後には情けない男女が残りましたってなるわよ!」
「そうなりそう・・・だからさ、小森さんが俺と付き合ってくれれば、スッパリとみんな精算できて、メデタシなんだけどなあ・・・」
「そういう共依存関係は私キライ!なんか、お互い傷を舐め合っているみたい。もっと、女とベッタリしないで距離をおきなよ。セックスがお互いの人質みたいじゃない?そういう関係、私にはできない。お互いの距離感を保って自立しながらのお付き合いじゃないとダメ・・・って、内藤くん、今、『小森さんが俺と付き合ってくれれば』って言ったね?それ、告白してるって話し?」
「え?そう受け取ってくれなかったの?」
「・・・やれやれ・・・ハッキリ言って、内藤くんとは付き合えません。でも、良いお友達でいたいというなら、絶交しないでいたげるわ。私のノートもみたいでしょうし」
「それ、俺、フラれたの?」
「率直に言って、そう受け取っていただきます」
「まったくなあ、小森さん、俺のタイプなのに・・・」
「内藤くんは、セックスできれば女の子は全部自分の好みになるんでしょ?私はイヤです」
「残念だなあ・・・」
「授業始まるわよ。ボケーとしてないで、授業を聞きなさいな。ちゃんとノート取って!」
まったく信じられない。ベタベタしたり、セックスしたり、浮気したり。そういう男女関係は、極度のお互いへの依存心がある。私にはできないなあ。
これじゃあ、しばらく彼氏ができないだろうけど、全然惜しくない。私には学問がある!男なんてしばらく願い下げだ・・・って、小森雅子、2月の手袋の男の子と女の子を思い出してどうする?・・・なんか、気になるけど、出会えないね。仕方ない。
※未成年の飲酒シーンが書かれてあります。
※この物語は性描写や飲酒、喫煙シーンを含みます。
※この物語は法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。
参考:『補足資料 少年法等の一部の改正と……
1)合法JK, 2)覚醒剤, 3)売春, 4)殺人, 5)少年鑑別所と少年刑務所』
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