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ヒメと明彦4、良子・芳芳編
第28話 H飯店本店2
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20世紀のいつか、良子大学1、芳子大学1、明彦大学2、雅子大学3
私はマーくんに耳打ちした。達夫に行き場所を知られたくない。「マーくん、何も言わずに、H飯店本店の正面玄関にやってくれ。私らが降りたら、近くの路地に駐車して待ってて。手は出すんじゃないよ。見ざる言わざる聞かざるだ。私らが戻ってこなかったら、パパに知らせて」
マーくんも小声で「お嬢、こいつ林(リン)とこのドラ息子でしょう?応援呼ばんでいいんですか?」と聞く。
「バカ。これはウチの家の問題じゃないんだ。ウチの家を巻き込んだら、抗争になるだろ?それもリンとだけじゃないんだ。話は後で説明してやるよ。私もパパに大目玉だよ。マーくんは知らぬ存ぜぬだからね。いいね」
「わかりました・・・本店ですね」
「そうよ。私らを降ろしたら、すぐに車を路地に隠すんだよ。用事が済んだら、私が呼ぶからね。みつかんじゃないよ」
「了解です」
中村川沿いの汚いアパートの立ち並んでいる路地を抜けて、中華街の表通りに出た。中華街大通りを善隣門の方に左折する。もう夜9時過ぎで、観光客はいない。歩行者がちらほらいるだけだ。本店の前でマーくんが車を停めた。私は助手席から飛び降りて、スライドドアを開けた。良子から達夫を引き継いだ。肘を掴んでひねり上げて、前に押した。みんな、さっさと降りてドアを閉めな、と後ろに声をかけた。
ガラス戸を通って、土産物がおいてあるところから、奥のレストランに入る。客がちらほらいて、私たちを見るが、視線をそらす。ほとんどが地元の客だ。関わり合いになりたくないのだ。
奥にズンズン進む。左のドアから男が出てきた。マネージャー兼用心棒だ。私を見て目を丸くする。私が腕をひねり上げて押しているのが達夫だときづいて、剣呑な顔をした。
「張さんとこのお嬢、何の真似です?」と聞く。
「王さん、林(リン)のおばあちゃん、いるだろ?黙っておばあちゃんのところに連れて行っておくれ。おばあちゃんに事情は直接話す。さもないと、この店と林(リン)の家、潰れるよ」
「わかりました。こちらに」と左のドアを開けて奥に誘導した。足早に先を行く。先にばあさんに報告するつもりだ。
明治の頃からある店だ。家系が4つ変わって今が達夫の父親の7代目。しかし、実権があるのは先代の嫁のばあさんだ。戦前の横浜大空襲で被害を受けた店を先代が立て直した。横浜の政界にも顔が利いた中華街の大ボスだ。中華街全体の復興にも寄与した。張の家も世話になっている。
王が廊下を右に曲がる。一番奥の部屋の両開きのドアを開けた。達夫、私、良子、明彦と雅子の順に部屋に入った。一番奥の丸テーブルにばばあが杖をついて座っていた。私は達夫をババアの前に跪かせた。達夫もどこにいるのか、わかったんだろう。震えている。
「張(チョウ)さんとこのファンファン嬢ちゃん、ウチのバカ孫を連れて、何の用だい?」としわくちゃの唇を突き出して、下手な日本語で聞かれた。
「林(リン)のおばあちゃん、お久しぶりです。今日、ここに来たのは、達夫がね、ちょっと悪さをしちゃって、ご相談に来たんですのよ」
「悪さ、かね?こいつはいつも小悪党の悪さをするが?」
「それがねえ、今回は違うのよ」
「ほぉ、聞かせておくれでないかい?」
私は美姫の細かい部分をすっ飛ばして説明した。私の友だちとねんごろに達夫がなってしまって、それは良いんですけど、こいつ、金を儲けようと、友だちを台湾の連中に売っ飛ばしたんですよ。それがね、台湾の連中、米軍の不良兵士とグルになって、若い女の誘拐と海外への日本女性の香港・広東への人身売買をしてるんです。何度も。
それで、今回、達夫が売っ飛ばした私の友だちは、他のカタギの女と一緒にどこかの倉庫に閉じ込められているはず。近々、船で出荷されます。達夫の噛んでいるのは私の友だちだけで、他の女性を彼は知りません。だけど、県警は今も調べているはず。友だちを県警が見つければ、達夫に、林(リン)の家にも結びつくでしょ?
私が台湾の連中から取り戻したいのは、友だちだけ。他の女性は県警に任せましょう。林(リン)の家も彼女だけが達夫とつながっているだけでしょ?だから、達夫が倉庫の場所を私に教えるように、おばあちゃんから手助けしてくれません?張(チョウ)の家とは無関係ですよ。私の一存で動いてますから。
「ほほぉ」と杖をついてババアは立ち上がった。「嬢ちゃん、頭が働くねえ。ウチの家にほしいところだよ。といってもこのぼんくらじゃあねえ」と杖の握りで達夫の頭を叩いた。いつの間にか達夫の父親が来ていた。私の横を通った。私に一礼する。達夫に近づこうとするが、ババアが静止した。「お前が息子を甘やかすから、こんなことになるんだよ。さあ、達夫、ばあちゃんにファンファンの友だちの居場所を教えてくれないか?」と聞いた。達夫は震え上がった。杖の握りで顎をあげさせる。
「そら、早くお言い」
「お、お祖母様、ノースピアです。ノースピアの米軍の陸軍倉庫です。108棟です。お、お許しくださいませ」と達夫が這いつくばる。台湾連中はなんとかごまかせるが、ババアはごまかせない。ババアの方が達夫にとって恐ろしいのだ。しかし、ノースピアとは。本牧じゃなかったんだ。浩司が見落とすはずだ。
「ほぉほぉ、よく吐いたね。お前」と今度は達夫の父親に杖の握りを突き出す。「どうするんだい?達夫を?え?この落とし前。そうさね、林(リン)の家のものを東京湾に沈めるわけにもいかない。かといって、日本に置いておくのも厄介だ。達夫は、雲南省の山奥にでも追っ払って、農家の娘とめあわせるがいいさ。もう、二度と日本に戻れないようにパスポートも取り上げて。共産党に見張りさせようじゃないか?いいね!」と達夫の父親に指示した。
「ファンファン嬢ちゃん、あんたが友だちを取り返しにいくのかい?」
「おばあちゃん、この後ろにいる三人と一緒に行きます」
「へぇ、女三人、男が一人かい?みんなカタギじゃないか?」
「私とこの人」と良子を指す。「二人で十分です。他の二人はオブザーバー」
「失敗したら、こっちも迷惑だね。いいよ、ウチの者を連れておいき」
「よろしいんですか?」
「もともとは、こっちの家の不始末さね。王!腕っぷしがいいのを・・・」
「おばあちゃん、王さんと後一人で十分です」
「いい度胸だ。王、わかったね?」
「ハイ、承りました」
王が私に向かって「お嬢さん、大丈夫ですか?お嬢さんとこの娘さんでしょ?」と言う。
「王さん、私だって、武術の有段者だよ。でも、この子には勝てないよ。ここいら当たりで一番強いでしょう」と良子を指さした。王が目を細めて良子を見た。
「ああ、高橋さんのお嬢さんじゃないですか」と言う。良子がビックリした。「いえいえ、ここいら当たりの古い家はお客様ですから。商売柄覚えているんですよ。そうですか。腕には自信がおありのようで。でも、危ない橋をわたるのは私にお任せください」良子がコクコク頷く。
「あ!おばあちゃん、もう一つ。達夫のダチを三人、良子がのしちゃったのよ。達夫のアパートに居るわ。掃除しとかないといけないでしょ?」と言った。ババアが達夫の父親に顎を上げた。父親は手配のため、出ていった。ババア、よく父親の援助でアパートを借りているのを知ってるわね?
「じゃあ、おばあちゃん、後は王さんと相談します。でも、最後に」と明彦に「明彦、達夫の金玉、蹴り上げてみたくない?」と聞いた。
明彦が達夫を思いっきり蹴った。しかし、素人だ。ケツを蹴っただけだ。良子が前に出てくる。私のお友達の分も蹴っておかないとね。と、エイとか剽軽な声で言ったが、つま先が達夫の金玉にめり込んだ。あら?雲南省でお嫁さんを迎えるのに、子供ができなくなっちゃったかしら?と言う。金玉潰れたんじゃないかね?恐ろしい女だよ、お前は。
ババアがオフオフと笑った。「ファンファンといい、高橋さんのお嬢さんといい、面白い嬢ちゃんたちだ。二人とも、何かあったら私にお言い。借りを作るのはイヤだからね」と言う。「あら、オバア様、なら、今度、フカヒレ食べ放題で、紹興酒飲み放題でお願いしますわ。では、ごきげんよう」と良子はお辞儀してスタスタ帰ってしまう。明彦と雅子が後を追う。まったく、良子流だぜ。「じゃあ、おばあちゃん、私も行きます」とお辞儀した。
王の肘を掴んだ。「こっちは家のハイエースを待たせてあるけど足をどうする?」と聞く。
「ナンバープレートは?」と王。
「確か、ダミーが車に積んである」
「こっちも車を一台出そう。二台で行く。武器は?」
「ブラックジャックと警棒。後は」と王に手袋をした拳を突き出す。「これだけ」
「無鉄砲だね、嬢ちゃんたちは。まあ、発砲したらマズイからな。俺と手下一人も警棒にしとくか。ノースピアで米軍が実弾を使うとも思えないし、台湾の連中もそこまでやらんだろ」
「ねえ、王さん、バラクラバ帽ある?人数分。運転手も含めて5人分。面が割れちゃマズイじゃん?」
「事務所にあると思う。それで、嬢ちゃん、お友達を取り返した後はどうする?気づかれるかもしれんぞ?」
「そうね。県警にまかせようかしら?他の女性が可哀想でしょ?遅かれ早かれ、県警も勘づくでしょ?だから、刑事を一人、呼んでおくわ」
「県警?刑事?それはダメだろ?林(リン)とか張(チョウ)の関係がバレる」
「心配しないで。加賀町署の吉村刑事に連絡するから。彼は私たちのことは黙っていてくれる」
「吉村?彼は知ってるが、黙っていてくれるとなぜ確信がある?」
「だって、王さん、彼、私のボーイフレンドだもん。体の関係があるのよ」
「・・・ハニトラでもしたのか?嬢ちゃん、あんた、得体の知れない女だな?」
「あら?私はごく普通の女子大生よ。さ、車で店の後ろで待ってるわ。15分。その間に浩司、いや、吉村刑事に連絡しておく」
「わかったよ。じゃあ、後で」
私はマーくんに耳打ちした。達夫に行き場所を知られたくない。「マーくん、何も言わずに、H飯店本店の正面玄関にやってくれ。私らが降りたら、近くの路地に駐車して待ってて。手は出すんじゃないよ。見ざる言わざる聞かざるだ。私らが戻ってこなかったら、パパに知らせて」
マーくんも小声で「お嬢、こいつ林(リン)とこのドラ息子でしょう?応援呼ばんでいいんですか?」と聞く。
「バカ。これはウチの家の問題じゃないんだ。ウチの家を巻き込んだら、抗争になるだろ?それもリンとだけじゃないんだ。話は後で説明してやるよ。私もパパに大目玉だよ。マーくんは知らぬ存ぜぬだからね。いいね」
「わかりました・・・本店ですね」
「そうよ。私らを降ろしたら、すぐに車を路地に隠すんだよ。用事が済んだら、私が呼ぶからね。みつかんじゃないよ」
「了解です」
中村川沿いの汚いアパートの立ち並んでいる路地を抜けて、中華街の表通りに出た。中華街大通りを善隣門の方に左折する。もう夜9時過ぎで、観光客はいない。歩行者がちらほらいるだけだ。本店の前でマーくんが車を停めた。私は助手席から飛び降りて、スライドドアを開けた。良子から達夫を引き継いだ。肘を掴んでひねり上げて、前に押した。みんな、さっさと降りてドアを閉めな、と後ろに声をかけた。
ガラス戸を通って、土産物がおいてあるところから、奥のレストランに入る。客がちらほらいて、私たちを見るが、視線をそらす。ほとんどが地元の客だ。関わり合いになりたくないのだ。
奥にズンズン進む。左のドアから男が出てきた。マネージャー兼用心棒だ。私を見て目を丸くする。私が腕をひねり上げて押しているのが達夫だときづいて、剣呑な顔をした。
「張さんとこのお嬢、何の真似です?」と聞く。
「王さん、林(リン)のおばあちゃん、いるだろ?黙っておばあちゃんのところに連れて行っておくれ。おばあちゃんに事情は直接話す。さもないと、この店と林(リン)の家、潰れるよ」
「わかりました。こちらに」と左のドアを開けて奥に誘導した。足早に先を行く。先にばあさんに報告するつもりだ。
明治の頃からある店だ。家系が4つ変わって今が達夫の父親の7代目。しかし、実権があるのは先代の嫁のばあさんだ。戦前の横浜大空襲で被害を受けた店を先代が立て直した。横浜の政界にも顔が利いた中華街の大ボスだ。中華街全体の復興にも寄与した。張の家も世話になっている。
王が廊下を右に曲がる。一番奥の部屋の両開きのドアを開けた。達夫、私、良子、明彦と雅子の順に部屋に入った。一番奥の丸テーブルにばばあが杖をついて座っていた。私は達夫をババアの前に跪かせた。達夫もどこにいるのか、わかったんだろう。震えている。
「張(チョウ)さんとこのファンファン嬢ちゃん、ウチのバカ孫を連れて、何の用だい?」としわくちゃの唇を突き出して、下手な日本語で聞かれた。
「林(リン)のおばあちゃん、お久しぶりです。今日、ここに来たのは、達夫がね、ちょっと悪さをしちゃって、ご相談に来たんですのよ」
「悪さ、かね?こいつはいつも小悪党の悪さをするが?」
「それがねえ、今回は違うのよ」
「ほぉ、聞かせておくれでないかい?」
私は美姫の細かい部分をすっ飛ばして説明した。私の友だちとねんごろに達夫がなってしまって、それは良いんですけど、こいつ、金を儲けようと、友だちを台湾の連中に売っ飛ばしたんですよ。それがね、台湾の連中、米軍の不良兵士とグルになって、若い女の誘拐と海外への日本女性の香港・広東への人身売買をしてるんです。何度も。
それで、今回、達夫が売っ飛ばした私の友だちは、他のカタギの女と一緒にどこかの倉庫に閉じ込められているはず。近々、船で出荷されます。達夫の噛んでいるのは私の友だちだけで、他の女性を彼は知りません。だけど、県警は今も調べているはず。友だちを県警が見つければ、達夫に、林(リン)の家にも結びつくでしょ?
私が台湾の連中から取り戻したいのは、友だちだけ。他の女性は県警に任せましょう。林(リン)の家も彼女だけが達夫とつながっているだけでしょ?だから、達夫が倉庫の場所を私に教えるように、おばあちゃんから手助けしてくれません?張(チョウ)の家とは無関係ですよ。私の一存で動いてますから。
「ほほぉ」と杖をついてババアは立ち上がった。「嬢ちゃん、頭が働くねえ。ウチの家にほしいところだよ。といってもこのぼんくらじゃあねえ」と杖の握りで達夫の頭を叩いた。いつの間にか達夫の父親が来ていた。私の横を通った。私に一礼する。達夫に近づこうとするが、ババアが静止した。「お前が息子を甘やかすから、こんなことになるんだよ。さあ、達夫、ばあちゃんにファンファンの友だちの居場所を教えてくれないか?」と聞いた。達夫は震え上がった。杖の握りで顎をあげさせる。
「そら、早くお言い」
「お、お祖母様、ノースピアです。ノースピアの米軍の陸軍倉庫です。108棟です。お、お許しくださいませ」と達夫が這いつくばる。台湾連中はなんとかごまかせるが、ババアはごまかせない。ババアの方が達夫にとって恐ろしいのだ。しかし、ノースピアとは。本牧じゃなかったんだ。浩司が見落とすはずだ。
「ほぉほぉ、よく吐いたね。お前」と今度は達夫の父親に杖の握りを突き出す。「どうするんだい?達夫を?え?この落とし前。そうさね、林(リン)の家のものを東京湾に沈めるわけにもいかない。かといって、日本に置いておくのも厄介だ。達夫は、雲南省の山奥にでも追っ払って、農家の娘とめあわせるがいいさ。もう、二度と日本に戻れないようにパスポートも取り上げて。共産党に見張りさせようじゃないか?いいね!」と達夫の父親に指示した。
「ファンファン嬢ちゃん、あんたが友だちを取り返しにいくのかい?」
「おばあちゃん、この後ろにいる三人と一緒に行きます」
「へぇ、女三人、男が一人かい?みんなカタギじゃないか?」
「私とこの人」と良子を指す。「二人で十分です。他の二人はオブザーバー」
「失敗したら、こっちも迷惑だね。いいよ、ウチの者を連れておいき」
「よろしいんですか?」
「もともとは、こっちの家の不始末さね。王!腕っぷしがいいのを・・・」
「おばあちゃん、王さんと後一人で十分です」
「いい度胸だ。王、わかったね?」
「ハイ、承りました」
王が私に向かって「お嬢さん、大丈夫ですか?お嬢さんとこの娘さんでしょ?」と言う。
「王さん、私だって、武術の有段者だよ。でも、この子には勝てないよ。ここいら当たりで一番強いでしょう」と良子を指さした。王が目を細めて良子を見た。
「ああ、高橋さんのお嬢さんじゃないですか」と言う。良子がビックリした。「いえいえ、ここいら当たりの古い家はお客様ですから。商売柄覚えているんですよ。そうですか。腕には自信がおありのようで。でも、危ない橋をわたるのは私にお任せください」良子がコクコク頷く。
「あ!おばあちゃん、もう一つ。達夫のダチを三人、良子がのしちゃったのよ。達夫のアパートに居るわ。掃除しとかないといけないでしょ?」と言った。ババアが達夫の父親に顎を上げた。父親は手配のため、出ていった。ババア、よく父親の援助でアパートを借りているのを知ってるわね?
「じゃあ、おばあちゃん、後は王さんと相談します。でも、最後に」と明彦に「明彦、達夫の金玉、蹴り上げてみたくない?」と聞いた。
明彦が達夫を思いっきり蹴った。しかし、素人だ。ケツを蹴っただけだ。良子が前に出てくる。私のお友達の分も蹴っておかないとね。と、エイとか剽軽な声で言ったが、つま先が達夫の金玉にめり込んだ。あら?雲南省でお嫁さんを迎えるのに、子供ができなくなっちゃったかしら?と言う。金玉潰れたんじゃないかね?恐ろしい女だよ、お前は。
ババアがオフオフと笑った。「ファンファンといい、高橋さんのお嬢さんといい、面白い嬢ちゃんたちだ。二人とも、何かあったら私にお言い。借りを作るのはイヤだからね」と言う。「あら、オバア様、なら、今度、フカヒレ食べ放題で、紹興酒飲み放題でお願いしますわ。では、ごきげんよう」と良子はお辞儀してスタスタ帰ってしまう。明彦と雅子が後を追う。まったく、良子流だぜ。「じゃあ、おばあちゃん、私も行きます」とお辞儀した。
王の肘を掴んだ。「こっちは家のハイエースを待たせてあるけど足をどうする?」と聞く。
「ナンバープレートは?」と王。
「確か、ダミーが車に積んである」
「こっちも車を一台出そう。二台で行く。武器は?」
「ブラックジャックと警棒。後は」と王に手袋をした拳を突き出す。「これだけ」
「無鉄砲だね、嬢ちゃんたちは。まあ、発砲したらマズイからな。俺と手下一人も警棒にしとくか。ノースピアで米軍が実弾を使うとも思えないし、台湾の連中もそこまでやらんだろ」
「ねえ、王さん、バラクラバ帽ある?人数分。運転手も含めて5人分。面が割れちゃマズイじゃん?」
「事務所にあると思う。それで、嬢ちゃん、お友達を取り返した後はどうする?気づかれるかもしれんぞ?」
「そうね。県警にまかせようかしら?他の女性が可哀想でしょ?遅かれ早かれ、県警も勘づくでしょ?だから、刑事を一人、呼んでおくわ」
「県警?刑事?それはダメだろ?林(リン)とか張(チョウ)の関係がバレる」
「心配しないで。加賀町署の吉村刑事に連絡するから。彼は私たちのことは黙っていてくれる」
「吉村?彼は知ってるが、黙っていてくれるとなぜ確信がある?」
「だって、王さん、彼、私のボーイフレンドだもん。体の関係があるのよ」
「・・・ハニトラでもしたのか?嬢ちゃん、あんた、得体の知れない女だな?」
「あら?私はごく普通の女子大生よ。さ、車で店の後ろで待ってるわ。15分。その間に浩司、いや、吉村刑事に連絡しておく」
「わかったよ。じゃあ、後で」
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